父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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南部辺境遠征編

098 カナタ、作戦会議に連れていかれる

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「なあ、凄すぎじゃね? 何なのあれ?」

「あはは……」

 ニクに話を訊こうとして、一睨みで無視されたディーンは、カナタに絡んでいた。
Sランク冒険者が舌を巻くほどの広域魔法、しかも一度も目にしたことのない魔法だった。
カナタはニクのことを肉ゴーレムが進化した愛砢人形ラブラドールだとは言えないので笑って誤魔化すしかなかった。
しかし、興奮したディーンは空気を読まずに突っ込んだ質問を続けていた。

「こらこら、他パーティーのスキルを探るんじゃないわよ!」

 セレーンの拳骨がディーンの頭に落ちた。
深夜だというのに子供に絡んでいたのだから当然だ。

「痛ってえなぁ」

「冒険者としての最低限のマナーでしょ?
あなたはSランク冒険者なんだから、あんたがそれじゃ示しがつかないでしょうが!」

 もう一発拳骨が落ちた。
これでディーンもカナタを解放するしかなかった。

「うちのリーダーが済まなかったな。
はい、これ。拾っておいたから」

 『紅龍の牙』メンバーのキースとガンツが拾って来たのは、ハンターウルフがドロップしたDGとガチャオーブだった。
50匹以上いた魔物が方々で瘴気へと戻りドロップしたものだ。
彼らは他に魔物が残っていないか調べる傍ら、ニクが無視していたドロップ品を拾い集めてくれたのだ。

「ありがとうごさいます」

 カナタはセレーンにもキースとガンツにもお礼を言い、セレーンに抱えられるようにテントへと戻った。

 だが実はディーンがあれだけ騒いで訊きだそうとしたことで、他の冒険者たちからカナタたちに追求が行くことがなくなっていた。
あれはカナタたちが嫌な思いをしないようにというディーンなりのパフォーマンスだったのだ。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 翌日、早朝に出発した先行隊は、夕闇の迫る中ついに国境の街である要塞都市ガーディアに辿り着いた。
ガーディアは国境としての手続きをする関所であると同時に隣国の侵略に備えた要塞都市でもあった。
尤も、隣国のウルティア国との関係は良好であり、この要塞都市は国境に近い迷宮からの氾濫に備える役割を主としていた。

「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

 ギルド職員と『紅龍の牙』のメンバーが対策本部となっている建物の中へと案内される。
そこに何故かカナタたちも一緒に連れていかれていた。
あのニクの魔法を見てカナタたちは、副ギルド長から討伐の主要メンバーと認識されてしまったのだ。

 部屋の中にはライジン辺境伯領の辺境守備軍である第3軍司令のガウェイン将軍と幕僚たちが陣取っていた。
そこへ場違いな子供と女性を伴う集団が入って来たのだが、彼らも『紅龍の牙』という有名パーティーは知っていたので、そこの関係者だろうとスルーすることにしていた。

「援軍かたじけない」

 第3軍司令のガウェイン将軍が副ギルド長に頭を下げる。
ここは国防の最前線、冒険者だからと侮ることはなかった。

「援軍の第1軍と第2軍、そして冒険者の混成軍は明後日には到着するはずだ。
それまで、状況の説明と作戦概要を知らせて欲しい」

 カナタたちの先行隊は、獣車の速度もあり4日ほどの旅程でこの地に到着していた。
しかし、残りの混成軍は馬車がメインの移動手段のため、急いでもあと2日は到着にかかるはずだった。

 この世界、地球と比べて情報伝達が著しく遅れていた。
通常はクックルという半魔の鳥による伝書の仕組みを使うが、これは途中でクックルが魔物に襲われるなどして確実性に乏しかった。
今回のように国境で異変があったなどの緊急時のみ、魔法便という転移の魔法を利用した魔導具を使うことが出来た。
これにより手紙の伝送を行うのだが、如何せん運べる手紙の量に制限があった。
そのため、詳しい作戦は現場で詰める必要があり、先行隊が組織されたということだった。

「了解した。では状況を説明させてもらおう」

 ディーンの要求にガウェイン将軍は頷いて幕僚に説明をするようにと指示をした。

「魔物の氾濫は、我が国に近い17号迷宮で起こったとのウルティア国からの報告です。
そこから魔物がウルティア国側か我が王国側かどちらに進むかは神のみぞ知るというところだったのですが……。
斥候を放ち調査した結果、どうやら我が王国側に侵攻して来ていることが確定したのです」

 幕僚が将軍に代わって説明を始めた。
ウルティア国側に斥候を放つというある意味敵対行動と取られかねない事をやっているが、これは迷宮の氾濫という緊急事態故にウルティア国側でも容認していることだった。
これで調査もさせないのなら、氾濫を食い止めなかった責任をウルティア国側が全て追わなければならない状況だろう。
むしろ魔物を使った侵略を疑われても不思議ではない状況になってしまう。
ウルティア国側でも魔物の対応は始まっており、王国と二国でこの危機を乗り越えようという協力体制となっていた。

「魔物の数は少なくとも5千、ほとんどがEランクだと思われますが、最高でAランクの魔物が数体確認されています。
この要塞都市の南側には国境線まで幅2kmほどの緩衝地帯が設けられています。
そこに陣を敷き、そこから国境線との間での迎撃戦となりますが、魔物を討伐するためでしたら、国境を越境してもかまわないとウルティア国側より許可を得ていますので、国境を気にせず討伐してください」

「魔物は人の集まるところにやって来る。
それは長年培った経験により確定している。
なのでここではこの要塞都市が魔物の攻撃目標になるだろう。
冒険者の方々の担当は南のウルティア国に向かって左翼側ということでどうか。
細かい作戦はギルドと冒険者側の指揮官――ディーン殿だったな――に一任する。
目的はただ一つ、魔物を殲滅することだ。
担当区域内ならどんな手を使っても構わない」

 将軍が示した作戦は作戦になっていなかった。
ようするに丸投げだった。
だがこの世界、案外そんな感じで回っているのだった。
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