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深夜のアツい攻防
しおりを挟む結局のところ、俺はマコの宿泊を許可していた。
ちょこまかされると家族に見つかるので、朝まではクローゼットの中で大人しくしているようにと釘刺しておいた。
(はぁ……今日は疲れた……)
俺はベッドで眠りに入った。
そして深夜……。
(あ、あれ……?)
起きた、という感覚はあったが、目を開けることが出来なかった。
それだけでなく、
(か、体が……)
動けなくなっていた。金縛りというやつだろうか。目を開くことも出来ない。
そういえば聞いたことがある……。
極度の疲れを体感すると、人間は金縛りに遭う、と……。
そら動く雛人形と出会ったり寺で電撃を放つ住職を見たりしたら疲れも出るか。
(くそ……動かない……)
強引に体を動かそうとしていたら、顔の前にもの凄い存在感を感じた。
(……居る……。絶対に居る……)
横になって目を閉じる俺の顔の前に、確実に奴が居る。
雛人形のマコが居る……。
顔面がウズウズするほどの存在感を感じる。
「くくくく……」
マコの笑い声は、俺の顔の真正面から聞こえてきた。声が聞こえてきた距離からすると、俺の顔面からかなり近い所に居ることが分かる。
(あんにゃろう……。クローゼットの中に居ろって言ったのに……)
とっちめたいところだが、今は金縛りで動けない。
「ふふふ。あの住職も修行不足よのう……。私の超SSランクエキサイティングバリアーを突破できんとはな……」
くくくくく、とマコは笑う。
(え、ええええええええええええ?)
超SSランクエキサイティングバリアーって何?
成仏したいとか言ってたのにバリアー張ったの?
つーかテメーも超とかSとか付けんと凄さ表現できないんかい。
「くくくくく……。深夜の私は霊力(?)に溢れておる……。この状態ならばヤれる……」
ヤれるって何? 何するつもり?
「くっくっく……。さあ楽しもうか……」
マコがそう言った時から、カチッカチッと何かの音が聞こえ始めた。やがてカチッという音は止み、ボッという音が鳴った。
(……な、何だ? 何をしたんだ?)
色々と考えていると、何だか鼻先が温かくなってきた。
気のせいかな、と思ったその時、鼻先に温かいというより熱いという確かな温度を感じ始めた。
(ま、まさか……あいつ……)
カチッという音が鳴り止んだ後に、ボッと音が鳴って、温度……。アレしかない。
(ライターで鼻を炙ってやがる! 絶対そうだ! あんにゃろう!)
今すぐ首をもぎ取りたいところだが、金縛りで体が動かないし目も開けられない。
「くっくっく……」
マコの悪魔のような笑い声と共に、俺の鼻先がジリジリと焼き鳥のように炙られる。
(あっつ! 熱い熱い! あつぁっ! あのボケ! 覚えてろよ!)
およそ20秒ほどで、鼻先に熱は感じなくなった。
「ふ~。今日のところはこれで終わりましょう。ふ~」
何が『ふ~』だ。人の鼻炙っといてふざけてんのか?
(明日……絶対に決着を着けてやる……)
例え物理的な除霊であろうと、決着を着ける。そう決めて、俺は金縛り状態のまま眠りに入った。
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