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超常現象を物理的に何とかする奴ッ……!
しおりを挟む「ったく……マコの奴……」
ぶつくさ言いながら、俺は学校へ歩き出した。家から5、6分ほど歩いて到着した学校の前には、生徒たちの人だかりが出来ていた。
「……ん? 何だ?」
校門の前では、生徒会によって持ち物検査が行われていた。生徒会員たちは校門の前に置かれた横長の机の上で、持ち物をチェックしている。
机の前には、持ち物検査の順番待ちをする生徒たちの行列が作られている。
「面倒だな……。夏休み前だからって張り切りやがって。まあ、特に不要物は持ってきてないと思うけど……」
校門から少し離れた所で、俺は学生鞄の中を確認。中には筆箱や教科書などの必要最低限の物と、雛人形が一体だけ入っていた。
【雛・人形】【名詞】
雛祭りの日に女の子を祝うための人形。子どもの健やかで幸せな成長を祝うために飾る。一般的に学生鞄の中に紛れ込んでいることは少ない。
「ごきげんよ――」
う、まで雛人形(マコ)が言い切る寸前に、俺は学生鞄を閉じて、近くの公園まで走った。
「てめえ!」俺は学生鞄の中のマコに叫んだ。「俺が帰るまで家の中で大人しくしてろって言ったろ!」
「いやー、魔が差しちゃいまして」
マコはギギギ……と軋み音を鳴らしながら、テヘッといった感じで後頭部に右手を当てた。
「もう付き合ってらんねー……」
俺の中で、何かが弾けた。俺はマコを頭から鷲掴みにして、投球体勢を取った。
「ちょ、ちょっと待って下さい! 堂本さん、あなたまさか……」
「ああ……そのまさかだ……」
俺はマコを手に、大きく振りかぶる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
裂帛の気迫と共に、俺は公園から外に向かってマコをぶん投げた。マコは綺麗な放物線を描きながら、近所のゴミ置き場にゴールイン。そしてタイミング良くゴミ収集車がやって来て、作業員が速やかにマコをゴミ収集車へ放った。マコは他のゴミと共に、ゴミ収集車の中へ消えていった。
これでもうっ……マコはゴミ収集車から出られないっ……!
マコはそのままっ……焼却という物理的な成仏をっ……遂げるのだっ……!
「わーっはははははははははははは!」
除霊(物理)をした喜びによって、駆け巡る俺の脳内物資っ……!
ベータエンドルフィンッ……! チロシンッ……! エンケファリンッ……!
パリンッ……! リジンッ……! ロイシンッ……! イソロイシンッ……!
「コココッ! クココココッ! やったんだっ……! 俺は、掴んだっ……! 除霊(物理)という名の勝利をっ……!」
天を仰いで叫ぶ俺を、登校中の生徒や、近隣に住む婦人の集団が不審者を見るような目で見ている。
がっ……そんなのどうでもいいっちゅうんじゃっ……!
何せ除霊(物理)という名の圧倒的勝利を掴んだのだからっ……!
「物理的な除霊をすると祟られるだぁ~……? 片腹痛いっ……!」
クココココッ……と俺は天を仰いで笑う。
「俺には関係の無いことっ……! 祟りなど有ったとしてもっ……バリアーッ……! そんな祟りなどっ……バリアーで跳ね返せるっ……! 俺ほどの剛運ならなっ……! 神の方がすり寄ってきてっ……味方するんじゃっ……! さあっ……漕ぎだせっ……! 勝負の大海(学校)へっ……!」
たぎる血とアドレナリンと共に、俺は勝負の大海(学校)へ漕ぎだした。
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