最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

文字の大きさ
69 / 280
一章 聖女さん、追放されたので冒険者を始めます。

59 聖女くん、事の顛末

しおりを挟む
 そんな風に妙なダメージを受けつつステラを待つ事数分。

「わりい待たせた」

 とてもスタイルの良いステラが荷物を持って店から出てきた。
 一応待っている間に深手を負ったシルヴィもある程度回復したみたいで、声音も表情も元に戻り、そしてステラに言う。

「いえ。ところでステラさん……普段何食べてたらそうなるんですか?」

「ん? なんの話だ?」

 ぜ、全然回復してなくない!?

「なんの話って――」

「あーいや、なんでもない。ほんと大した事ない話だから」

 すかさずシルヴィの口を手で塞ぎ、会話の強制終了を試みる。
 知っている……大体こういうスタイルの良い人にそういう事聞いても大した答えが返ってこなくて、ほぼ何もしてないのにその体型って逆にダメージ受ける感じになるから!

「ああ、今ステラさんスタイル良いよねって話してたんすよ」

 しまったこっちにもう一人いた!

「え、あ……そうか? そんな事ねえよ俺なんて」

「……」

 その謙遜が! シルヴィと若干私にもダメージを与える!
 いやほんと謙遜する必要ないんだよ!
 ステラの所の王様、裏で陰謀とか絡んでなかったら、こんな容姿端麗な女の子追放するとか頭おかしいでしょって思うからね。
 いや、その場合だと一体どんな人用意されたんだって少し興味は湧くけども。

 そしてステラは恥ずかしそうに謙遜しながら言う。

「それで、えーっと何食べてたら、だっけ? まあ普通に最低限健康バランス考えた食生活してるだけかな」

「あ、そ、そうですか」

 ほら普通の当たり障りない回答返って来たよ。

「まあその……なんだ。シルヴィまだまだ成長期だろうからさ。あまり難しく考えなくてもいいんじゃねえか? 多分だけどまだ14……いや、13位だろ? 気にすんなって」

 ついでに追撃も飛んできたよ。

「15歳です……あと来月16になります。あと最近はもう体型変わって無いですね……」

「……そっかぁ……」

「そうです……」

「…………」

「…………」

「…………」

 誰か、フォロー、して!
 私には無理だよ!

「そ、そういえばこれ聞いて良いのか分かんないっすけど、ステラさん、なんかお金が必要で冒険者始めたんすよね。その話ちょっと聞きたいなーって」

 よし、話題が変わる!
 フォローが無理ならこれが一番!
 ナイスシズク!

「あ、ああ……そう言えばシズクには話してなかったな」

 突然の話題転換に一瞬ステラは動揺したみたいだけど、それでもシズクの意図を読んでくれたのか、自然にその話に乗っかってくれる。

「まあ別に隠すような話じゃねえし教えるよ。つっても店の前でするような話じゃねえからな。移動しながら話すよ。とりあえずどこ向かうんだ?」

「とりあえず食材調達に行こうって事になってる」

「了解。じゃあとりあえず行くか」

 そうして私達はその場から移動を始める事にした。

「……シルヴィなんか食べたい物とかある?」

「と、とりあえず元気が出そうな物で」

「善処するよ」

 そんなやり取りと、そして。

「えーっと実はな」

 ステラの事情を話ながら。





「なるほど、それは大変な事になってるっすね。いきなり報酬が高いSランクの依頼を受けたのも納得っすよ」

 やがて事情を話終え、それを聞いたシズクがそんな感想を口にする。
 そしてシズクの質問で、ある程度そういう事を話せるような空気になっていた事もあって、私も聞きたかった事を聞くことにした。

「えーっと、これ聞いて良いのか分かんないけど、今日の報酬で目標額というか返済額のどの位になったの?」

「私もそれは気になりますね」

 一応再び表面上の平静を取り戻してくれたシルヴィも私の質問に乗っかってくる。

「そういう事ならボクも聞きたいっすね」

 シズクも。

「ああ、それなんだけどさ」

 そしてステラは躊躇う事無く答えてくれる。
 どこか、気分が晴れたような表情で。

「実はさ……必要無くなったんだ」

「「「……え?」」」

 必要……無くなった?

「ちょ、それどういう事?」

 そんな清々しい表情で言ってるんだから、悪い事は起きてないんだろうけど……ちょっと意味が分からない。
 そしてステラはその答えを。
 事の顛末を教えてくれる。

「すげえ簡潔に言うとな、元の金を借りてた知人ってのが借りてた金を全部返したそうなんだ。失踪した感じになってたみたいなんだけど、それも金策に走り回っていたというか……とにかく、少し遅れた感じになったらしい。そんで貸してた奴らも貸した金が返ってきたら、それ以上何かを要求するような事はなかったみてえで……まあ、とにかく、丸く収まったんだ」

「……そっか。良かったじゃん」

 ステラの話を聞いて、素直にそう言葉を返した。
 ……本当は当事者間の間ではもっと複雑な事とかがあったんだろうし、そこまで簡単な話じゃないのかもしれない。
 だけどそれは多分ステラも知らないだろうし私達も知る必要がなくて。
 ただ友達が抱えていた問題が無事解決した。
 それだけ知れれば本当に安堵できる。
 それは本当に良かったと思うよ。

「それなら一安心ですね」

「お金のトラブルとか本当に大変だと思うっすから、本当にうまく収まって良かったっすよ」

 二人も同じくそんな反応を見せ、そしてステラは言う。

「ほんと……良かったよ。トラブルが解決したのも勿論だけどさ……あの人達が信じた人に裏切られていなかったって事が、本当に嬉しく思う。そんなのはあっちゃいけない事だからさ」

 そういうステラの表情は心底安心したような、そんな物で。
 きっとお金の方は稼ぐ気満々だっただろうし、ステラの中ではそこがとても大きな問題だったのかもしれない。

 と、まあ思いもしない形でステラの抱えた問題が解決した所で、シズクが何かに気付いたように言う。

「あ……ということは」

「どうした?」

「えーっと、ステラさんの問題が解決したんだったら……冒険者をやる理由もなくなっちゃうんじゃないっすか……?」

「「……あ」」

 私とシルヴィは同時にそんな間の抜けた声を出す。
 確かにその通りだ。
 ど、どうするんだろステラ。

 これ場合によっては四人パーティー結成直後に分裂する感じになるよ?

 いや、元々本業があるから誘わなかった所を色々あってパーティーを組んだ感じで、仮に冒険者を辞めても元の状態に戻るだけなんだけど……いや、でもいざこうやってパーティーしっかり組んだら四人で仕事したいんだけど……ど、どう出るステラ……!?

 そして私達の中に緊張が走る中、ステラが口を開いた。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...