104 / 280
二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
ex 聖女の親友、持論を語る。
しおりを挟む
「あ、あの……シエルさん? なんか前に聞いた話と全然違うんすけど? 確か最近麻薬の取引現場に偶然居合わせたりした位だって……いや、それ位で流せる話じゃないんすけど、それはそれとして……じ、実は他にも巻き込まれまくってる感じなんすか!?」
「そだよ。でもまあ嘘は言ってないよね。実際それだけが最近あった事だよ。今月はそれだけ」
「いや……いやいや、あの場合の最近ってどう考えてもここ数か月とか半年とか、そんな感じな話だったじゃないっすか。アンナさんとは数年会って無かった訳だし……もうそれ半分嘘みたいなもんっすよ」
アンナがこの国に来てから大丈夫だったかの質問に対する解がソレだった訳で。
嘘では無いのだろうが……それでも聞かれた事をうまく躱したような物だから、それは嘘に限りなく近い何かだ。
そしてシエルは言う。
「まあそうかもね。でも馬鹿正直に流石に本当の事は言えないでしょ……少なくともこうやって速攻で切り替えができるようになる位には色々とあった訳だからさ。ただでさえ色々大変なあっちゃんにこれ以上心配はさせられないよ」
「……そうっすか」
それを言われたらそれまでだ。
そもそも咎めるような事でもないのでこれ以上追求はしない事にする。
麻薬取引の現場に居合わせる事は話せるというアンナとシエルの感覚というか昔あっただあろう色々な事件の話は聞いてみたくはあるけど。
「あ、分かってると思うけど、これあっちゃんには内緒ね」
「分かってるっすよ」
「なら良し……じゃあ一応踏み込んだ根拠とかを話しておこうか」
そう言ってシエルはアンナとルカの居るテーブルに視線を向ける。
「本当にヤバい奴はなりふり構わない。ああやってミカちゃんの相方が話し合いに応じている時点で、幾分かリスクは低くなる。それに多分目立つ事はやりたくないでしょ。それこそなにやってたのかは知らないけど、暗躍って言葉がしっくり来るような行動をしてるんだからさ」
「でも話すだけ話して、後は目立たない所で……って事もありますよね。私が言える事じゃないですけど」
「そうなった場合あっちゃんは勿論、聖女やってたシズクちゃん相手ならならどうやっても目立つ感じな事になるだろうし、そもそもそういうリスクがあるから向こうも穏便に進めてるんでしょ。まあウチが教われたらどうにもならないだろうけど……まあ、そうなったらその時」
「その時って……そんなに軽く」
「ち、ちなみに他に理由は……」
「ああ、後は直感」
「「直感!?」」
突然IQが下がったような発言をされて二人してそんな声を上げるが、なおも真剣な表情でシエルは言う。
「そ。アホらしい話に聞こえるけど、物事判断する上で理屈並べるのと同じ位大事な事だと思うよ。それに従って良い思いも痛い目も見てきたウチの持論」
そう言ってシエルはミカに視線を向けて言う。
「ウチの直感が、此処で踏み込むリスクと得られるメリットを天秤に掛けて、メリットに傾いた。ゆっくり慎重に機会を伺って逃すより、此処で踏み込むべきだと判断したんだ」
「……あの、一つ良いですか?」
ミカがシエルに問いかける。
「そうやって色々と理由を並べても、やっぱり危ない事ですよね? それなのにどうして……」
「今日ウチらとミカちゃんは色々と勘違いして此処に一緒に居る。そんな偶然はそう無いし、今踏み込まなきゃ機会を失う。それに二人から別々に話を聞いておいた方が後で情報の真偽を測りやす――」
「あ、いや……そういう事じゃなくて」
ミカは一拍空けてから言う。
「シエルさんは……まあ話聞いてる感じ大変な私生活を送ってそうですけど……その、今起きている色々な事と関係の無い一般の方ですよね? それなのになんでそんなリスクをって話で……」
「立場なんて関係ないよ。親友が色々と巻き込まれていて、自分がそれを手助けできるかもしれない状況に立っている。リスク覚悟で踏み込むのにそれ以上の理由なんている?」
即答。
ただ当たり前の事を言うようにシエルはそう言った。
「そだよ。でもまあ嘘は言ってないよね。実際それだけが最近あった事だよ。今月はそれだけ」
「いや……いやいや、あの場合の最近ってどう考えてもここ数か月とか半年とか、そんな感じな話だったじゃないっすか。アンナさんとは数年会って無かった訳だし……もうそれ半分嘘みたいなもんっすよ」
アンナがこの国に来てから大丈夫だったかの質問に対する解がソレだった訳で。
嘘では無いのだろうが……それでも聞かれた事をうまく躱したような物だから、それは嘘に限りなく近い何かだ。
そしてシエルは言う。
「まあそうかもね。でも馬鹿正直に流石に本当の事は言えないでしょ……少なくともこうやって速攻で切り替えができるようになる位には色々とあった訳だからさ。ただでさえ色々大変なあっちゃんにこれ以上心配はさせられないよ」
「……そうっすか」
それを言われたらそれまでだ。
そもそも咎めるような事でもないのでこれ以上追求はしない事にする。
麻薬取引の現場に居合わせる事は話せるというアンナとシエルの感覚というか昔あっただあろう色々な事件の話は聞いてみたくはあるけど。
「あ、分かってると思うけど、これあっちゃんには内緒ね」
「分かってるっすよ」
「なら良し……じゃあ一応踏み込んだ根拠とかを話しておこうか」
そう言ってシエルはアンナとルカの居るテーブルに視線を向ける。
「本当にヤバい奴はなりふり構わない。ああやってミカちゃんの相方が話し合いに応じている時点で、幾分かリスクは低くなる。それに多分目立つ事はやりたくないでしょ。それこそなにやってたのかは知らないけど、暗躍って言葉がしっくり来るような行動をしてるんだからさ」
「でも話すだけ話して、後は目立たない所で……って事もありますよね。私が言える事じゃないですけど」
「そうなった場合あっちゃんは勿論、聖女やってたシズクちゃん相手ならならどうやっても目立つ感じな事になるだろうし、そもそもそういうリスクがあるから向こうも穏便に進めてるんでしょ。まあウチが教われたらどうにもならないだろうけど……まあ、そうなったらその時」
「その時って……そんなに軽く」
「ち、ちなみに他に理由は……」
「ああ、後は直感」
「「直感!?」」
突然IQが下がったような発言をされて二人してそんな声を上げるが、なおも真剣な表情でシエルは言う。
「そ。アホらしい話に聞こえるけど、物事判断する上で理屈並べるのと同じ位大事な事だと思うよ。それに従って良い思いも痛い目も見てきたウチの持論」
そう言ってシエルはミカに視線を向けて言う。
「ウチの直感が、此処で踏み込むリスクと得られるメリットを天秤に掛けて、メリットに傾いた。ゆっくり慎重に機会を伺って逃すより、此処で踏み込むべきだと判断したんだ」
「……あの、一つ良いですか?」
ミカがシエルに問いかける。
「そうやって色々と理由を並べても、やっぱり危ない事ですよね? それなのにどうして……」
「今日ウチらとミカちゃんは色々と勘違いして此処に一緒に居る。そんな偶然はそう無いし、今踏み込まなきゃ機会を失う。それに二人から別々に話を聞いておいた方が後で情報の真偽を測りやす――」
「あ、いや……そういう事じゃなくて」
ミカは一拍空けてから言う。
「シエルさんは……まあ話聞いてる感じ大変な私生活を送ってそうですけど……その、今起きている色々な事と関係の無い一般の方ですよね? それなのになんでそんなリスクをって話で……」
「立場なんて関係ないよ。親友が色々と巻き込まれていて、自分がそれを手助けできるかもしれない状況に立っている。リスク覚悟で踏み込むのにそれ以上の理由なんている?」
即答。
ただ当たり前の事を言うようにシエルはそう言った。
10
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる