128 / 228
三章 人間という生き物の本質
66 出陣前の晩餐
しおりを挟む
その後俺達は明日持っていくアイテムの点検などを工房内で済ませた後、リビングへと戻る事にした。
どうやら結構良い感じのタイミンングで戻ってこれたらしく、リビングではリーナが皿を並べていた。
「あ、丁度良かったっす。今から呼びに行こうと思ってた所なんすよ」
そう言ったリーナがテーブルに並べている皿の上には、なんかこう、うまそうという感想しか沸き上がってこないハンバーグが乗っている。分かる。直感で分かる。これ絶対おいしい奴だ。
「んー三人共良い表情してるっすね。これは頑張って作ったかいがあったってもんっすよ」
どうやらそのハンバーグに対する期待が俺達の表情に溢れ出ていたらしい。仕方ない、美味そうだし。
ついでに言えばリーナのドヤ顔も溢れ出している。なんか幸せそうでいいなと思った。
……さっきの話もあったから尚更に。
「ささ、冷めない内にどうぞっす」
「おう」
そして四人でテーブルを囲んで手を合わせる。
「「「「いただきます」」」」
さて、実食。
「ほんとリーナさんは料理上手ですよね」
「ほぼ間違いなく旨いとは思ってたけど、軽々と想像飛び越えていくわほんと」
「まさか自宅でこんな旨い飯にありつくとはな……肉汁すげえ」
「いやいや、私なんてまだまだっすよ」
大絶賛からのドヤ顔。多分こうなるであろうと思っていた理想の形に落ち着いた晩飯になったと思う。
だけど少しだけ、こんな考えがちらついた。
もしかしたらこれだけの料理の技能を身に付けるに至ったのも、もしかしたら逃避スキルの影響なのではないかと。
だけどそう考えて、その考えをすぐに掻き消す。
流石にそれは考え過ぎだと。何かからの逃避の為に料理の腕が上達するとか意味分からねえしな。
……まあそもそも、何かからの逃避の為に魔術の習得スピードが異常に速くなってるってのも色々と分からない事だらけなのだけれど。
……でもまあとにかく、それをこの場に持ち込んじゃ駄目だと、そう思った。
少なくとも今この瞬間のリーナは、そういうマイナス的な感情を感じさせない程に楽しそうなのだから。
だから今はこれでいい。
リーナが俺達に相談してくれるまでは、これでいい。
その後、晩御飯を食べながら明日の事について軽く打ち合わせを始めた。
まず有事の際の陣形だが、グレンを前衛にして俺とリーナで中遠距離からサポートを行う。アリサは現状下手にボジションを縛り付けるのは逆効果だという結論が出て、臨機応変にカバーに入ってもらいつつ敵と相対してもらう事になった。
改めてこういう風に作戦を立てると、頭一つ……いや、二つ三つ抜けたアリサに自由に動いてもらうという雑にも程がある指示しかできない事を情けなく思う。もう少し俺達がアリサと肩を並ばせられる程に強ければ、ちゃんとした役割分担が。本来パーティーを組んだ時にできるような陣形の組み方が出来るんだけれど……今はまだ、難しい。
多分、俺の予測ではリーナはすぐにその域に達すると思う。
だとすれば、問題は俺だ。
……とりあえず今日は寝る前に30分……いや、一時間。魔術の教本を読んでおこう。気絶していてあれだけ眠っていたのに酷く眠いから、早めに寝た方がいいと思ったが、そうも言っていられない。
後は出発時間だとかそういった事を決めて、明日の話はそれで終わり。それだけ終われば最後まで食事を楽しみご馳走さまでした。
とりあえずそれで終わり。焦りを覚えつつも楽しい時間だったと思うよ。
どうやら結構良い感じのタイミンングで戻ってこれたらしく、リビングではリーナが皿を並べていた。
「あ、丁度良かったっす。今から呼びに行こうと思ってた所なんすよ」
そう言ったリーナがテーブルに並べている皿の上には、なんかこう、うまそうという感想しか沸き上がってこないハンバーグが乗っている。分かる。直感で分かる。これ絶対おいしい奴だ。
「んー三人共良い表情してるっすね。これは頑張って作ったかいがあったってもんっすよ」
どうやらそのハンバーグに対する期待が俺達の表情に溢れ出ていたらしい。仕方ない、美味そうだし。
ついでに言えばリーナのドヤ顔も溢れ出している。なんか幸せそうでいいなと思った。
……さっきの話もあったから尚更に。
「ささ、冷めない内にどうぞっす」
「おう」
そして四人でテーブルを囲んで手を合わせる。
「「「「いただきます」」」」
さて、実食。
「ほんとリーナさんは料理上手ですよね」
「ほぼ間違いなく旨いとは思ってたけど、軽々と想像飛び越えていくわほんと」
「まさか自宅でこんな旨い飯にありつくとはな……肉汁すげえ」
「いやいや、私なんてまだまだっすよ」
大絶賛からのドヤ顔。多分こうなるであろうと思っていた理想の形に落ち着いた晩飯になったと思う。
だけど少しだけ、こんな考えがちらついた。
もしかしたらこれだけの料理の技能を身に付けるに至ったのも、もしかしたら逃避スキルの影響なのではないかと。
だけどそう考えて、その考えをすぐに掻き消す。
流石にそれは考え過ぎだと。何かからの逃避の為に料理の腕が上達するとか意味分からねえしな。
……まあそもそも、何かからの逃避の為に魔術の習得スピードが異常に速くなってるってのも色々と分からない事だらけなのだけれど。
……でもまあとにかく、それをこの場に持ち込んじゃ駄目だと、そう思った。
少なくとも今この瞬間のリーナは、そういうマイナス的な感情を感じさせない程に楽しそうなのだから。
だから今はこれでいい。
リーナが俺達に相談してくれるまでは、これでいい。
その後、晩御飯を食べながら明日の事について軽く打ち合わせを始めた。
まず有事の際の陣形だが、グレンを前衛にして俺とリーナで中遠距離からサポートを行う。アリサは現状下手にボジションを縛り付けるのは逆効果だという結論が出て、臨機応変にカバーに入ってもらいつつ敵と相対してもらう事になった。
改めてこういう風に作戦を立てると、頭一つ……いや、二つ三つ抜けたアリサに自由に動いてもらうという雑にも程がある指示しかできない事を情けなく思う。もう少し俺達がアリサと肩を並ばせられる程に強ければ、ちゃんとした役割分担が。本来パーティーを組んだ時にできるような陣形の組み方が出来るんだけれど……今はまだ、難しい。
多分、俺の予測ではリーナはすぐにその域に達すると思う。
だとすれば、問題は俺だ。
……とりあえず今日は寝る前に30分……いや、一時間。魔術の教本を読んでおこう。気絶していてあれだけ眠っていたのに酷く眠いから、早めに寝た方がいいと思ったが、そうも言っていられない。
後は出発時間だとかそういった事を決めて、明日の話はそれで終わり。それだけ終われば最後まで食事を楽しみご馳走さまでした。
とりあえずそれで終わり。焦りを覚えつつも楽しい時間だったと思うよ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる