ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

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三章 人間という生き物の本質

94 この先自分達がしてやれることについて

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「……なんすかそれ。酷すぎるっすよそんなの」

 リーナが視線を落として、静かにそう呟く。
 具体的にアリサの母親がアリサにどういう事をしたのかまでは分からない。分からないけど……それでも、どうやっても親が子にしちゃいけないような事ばかりしか浮かんでこなくて。
 どう考えても、双方にとって悲惨でしかない光景しか浮かんでこない。

「……アリサ」

 悲惨な光景を脳裏に浮かべながら、アリサの方を見て思う。
 アリサの母親は仮面を取っていた。俺達の前に現れた男が最後まで素顔を明かさなかった事を考えれば、それは多分アリサが破壊するに至ったのではないかと思う。
 つまりは対面したわけだ。
 一体どれだけ時間が空いていたかは分からないけど、とにかくアリサにとっては最悪な再会になった筈だ。

 だとすれば……その時アリサは、どれだけ辛い思いをしたのだろうか?

 そしてグレンは言う。

「分かってると思うけど、あまりアリサにこの話、触れてやるなよ」

 グレンは一拍空けてから言う。

「……ぱっと見た感じだとアリサに目立った外傷はねえ。まあリーナの逃避スキルによる治癒能力が、直接的に死にかけてるような様子を見た訳じゃねえアリサにも付与されたって可能性もあるだろうけど、とにかくアリサはほぼ無傷だ。無傷で眠らされている……余程の事がなきゃアリサ相手にダメージを与えずに眠らせる魔術なんて当てられるかよ……相当アリサにとって辛い事があった筈だ」

「……ッ」

 つまりそうなるだけの精神的なダメージを負ったのか?
 激しい動揺……それこそ動けなくなる程に。

「なあ、グレン、リーナ。俺さ、アリサが目を覚ました時、何言えばいいのかな」

 一体どんな声を掛けるのが一番アリサの為になるのだろう。

「まあ、正解なんて分かんないっすよ……でも、まあとにかく……優しくしてあげるっすよ。言わなくても先輩やグレンさんならそうしてくれると思うっすけど」

「それで、さっきも言ったがあまり深く踏み込むな……ほんと、それしかねえよ」

「……そうだな」

 まあ、それしかねえよな。
 ……今はまだ、そんな事しかできねえんだよな。
 俺達がしてやれることは、ただそれだけ。

 と、そんな時だった。

「……ぅ」

 アリサから小さな声が発せられて、ゆっくりと瞼を開いたのは。

 ……アリサが、目を覚ましたのは。
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