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二章 隻腕の精霊使い
ex 故に彼は微笑んだ。
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エルを見送った後、シオンは一人になった。
命を削って力を供給させる裏技も、これ以上やれば死に至る。故にシオンはその術を解いた。
「……あと、どれだけ動ける?」
自ら精霊術を行使する為の力を生み出していた期間、シオンの体には徐々に、契約した精霊から供給される力が溜まっていっていた。
だけどそれも微量な物で、肉体強化をいつまで意地できるかも分からない。当然そんな状態なのだから、応急処置でもそれなりの力を消費する回復術などは論外だ。
こんな状態で脱出しようというのだから、絶望的にも程がある。
だがしかし……彼は笑っていた。
ああして精霊を助けても、ちっとも精霊の信用を得られない。
そして思わず手を止めてしまった事は、エルを傷つけたくないという思いもあっての事なのに、それを苦しめているとまで言われてしまった。
……それは彼にとって精神的に辛い事の連続。例えそれらが自業自得の話であっても、命を削ってまで助けようとしているのにそれなのだから尚更だ。
だけど……それでも、彼は笑っていたのだ。
だって手を止められた。
精霊を傷付けてしまったが故に、その先に進む事に抵抗を覚えた。それがたまらなく嬉しかった。
……そういう些細な事が自分が変われた証となってくれるから。故に彼は笑みを浮かべた。
決して笑っていられる状況では無いのに。
「……とにかく、進むんだ」
彼はゆっくりと前へ進んで行く。
その先にどれだけ敵が残っているかも分からない。誰もいなかったとしても、そこまで辿りつけるかも分からない。
そもそも此処を出た所で、待っているのは治安の悪い裏の世界。此処を出れば助かるという訳でも無いのだ。
だけど、死ぬわけにはいかない。
絶対に死ねない。
彼は彼で、藁をも掴む思いで助けたい相手がいるのだから。
そして最終的に……彼の血に濡れた足跡は、地下アジトを出たすぐの所で止まっていた。
命を削って力を供給させる裏技も、これ以上やれば死に至る。故にシオンはその術を解いた。
「……あと、どれだけ動ける?」
自ら精霊術を行使する為の力を生み出していた期間、シオンの体には徐々に、契約した精霊から供給される力が溜まっていっていた。
だけどそれも微量な物で、肉体強化をいつまで意地できるかも分からない。当然そんな状態なのだから、応急処置でもそれなりの力を消費する回復術などは論外だ。
こんな状態で脱出しようというのだから、絶望的にも程がある。
だがしかし……彼は笑っていた。
ああして精霊を助けても、ちっとも精霊の信用を得られない。
そして思わず手を止めてしまった事は、エルを傷つけたくないという思いもあっての事なのに、それを苦しめているとまで言われてしまった。
……それは彼にとって精神的に辛い事の連続。例えそれらが自業自得の話であっても、命を削ってまで助けようとしているのにそれなのだから尚更だ。
だけど……それでも、彼は笑っていたのだ。
だって手を止められた。
精霊を傷付けてしまったが故に、その先に進む事に抵抗を覚えた。それがたまらなく嬉しかった。
……そういう些細な事が自分が変われた証となってくれるから。故に彼は笑みを浮かべた。
決して笑っていられる状況では無いのに。
「……とにかく、進むんだ」
彼はゆっくりと前へ進んで行く。
その先にどれだけ敵が残っているかも分からない。誰もいなかったとしても、そこまで辿りつけるかも分からない。
そもそも此処を出た所で、待っているのは治安の悪い裏の世界。此処を出れば助かるという訳でも無いのだ。
だけど、死ぬわけにはいかない。
絶対に死ねない。
彼は彼で、藁をも掴む思いで助けたい相手がいるのだから。
そして最終的に……彼の血に濡れた足跡は、地下アジトを出たすぐの所で止まっていた。
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