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六章 君ガ為のカタストロフィ
ex 対策局最強の魔術師vs対策局最強の部隊
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(……さて、どこまでやれるか)
何度かシュミレートした。
もしも天野宗谷と戦う必要が出てきたとき、自分はいかにして戦うか。そして勝利を納めることができるのか。
結論だけを言えば勝てる可能性はある。その程度の勝率だ。
どれだけ奥の手や裏技や小技を組み合わせても天野の出力を越える事はできない。最低限戦いについていける出力に一時的にでも引き上げて、そこで一気に奇襲的に勝負を決めにかかる。
そうすれば運が良ければ勝てるかもしれない。
そこに神崎達、五番隊一般の隊員が加わる。そうなればようやく勝負になるだろう。神崎達は相当優秀で、阿吽の呼吸で連携も取れる。それで今まで生き残ってきた。
だがそれでも二割。もし本気で確実に倒そうと思えば五番隊総出で挑まなければならない。
「……ッ」
だが今は倒す必要もない。
どちらにしても瀬戸英治は長くは持たない。結果がどうであれ短期決戦で全部終わる。
その僅かな時間を稼ぐ事。
(とにかく作戦開始だ。いくぞ!)
次の瞬間天野が動きだし、その瞬間天野の足元正面から斜め上に付き上がる結界が展開される。
展開された結界は天野の足の裏に直撃し、彼を上空高くまで打ち上げる。
(……よし)
この瞬間にその結界を展開した者は此処にはいない。
これはこういう事態を想定したトラップ。
「次だ! 修二! 椎名! 真っちゃん!」
次の瞬間椎名と神崎が上空の天野に向けて砲弾と魔術弾を打ち込み、真が地面に呪符を張りつけた。
そして目を瞑り術式を構成した後、砲弾を交わし魔術弾を手の甲で弾いた天野に向けて追撃が放たれる。
地上に無数の魔法陣が展開。そこから魔術により作成された球体が高速で上空に打ち上げられる。
遠隔操作のホーミング弾。多少の機動力を持つ程度の魔術師や精霊ならば打ち落とせる。
だが当たらない。
その多くを足元に結界を作り躱す事を繰り返し、そして残りの高威力である筈のホーミング弾は結界と拳によって封殺される。
だが追撃はそれで終わりではない。
今の僅かな時間を与えられれば、次の行動に移れる。
「いっちょやりますか」
流れだした鼻血を無視しながら陽介は軽く跳びあがり、それに合わせる様に赤羽がハルバードを構える。
「やれ! 赤羽!」
「了解!」
そして赤羽が振り上げたハルバードの斧の側面を蹴り上げ、そして打ち上げられる。
そして天野と会敵した。
「落ちろ!」
別系統の肉体強化魔術による実質的な重ね掛けや肉体的なダメージを緩和する為のリミッターを無理矢理外すなど独自に編み出した裏技を駆使して瞬間的に天野の八割近い出力を叩き出して振るわれた刀。
だがそれを両手で握る様に掴まれる。
「お前が落ちろ!」
そして地上に向けて放り投げられた。
(流石に瀬戸の剣白刃取りしただけあるなコイツ……だが)
「だったら一緒に落ちようぜ!」
落下しながら懐から呪符を取りだすと、それが紫色に発光する。
その瞬間になって天野はようやく気付いたらしい。
自身の腕に同じ物が張られている事に。
「いくぞおおおおおおおおおおッ!」
そして落下しながら陽介はその呪符を全力で振るった。
すると天野が孤を描いて地面に向けて落ちていく。
まるで呪符と呪符の間に見えない鎖が繋がっている様に。
「赤羽!」
そして鎖を魔術で破壊した天野の落下地点に赤羽がいる。
「おう!」
そして赤羽のハルバードが振るわれた。
それに対して耐性を崩しながらも天野は拳で迎え打とうとするが、その拳が僅かに遅れる。
手の甲で弾いた神崎の魔術弾。ただの威力を底上げする術式が掛かっていると思わせるように精工な細工を施してあったその銃弾がここで本性を現した。
着弾ポイントの重力を術者の任意のタイミングで変動させる銃弾。それが真の姿。
「……ッ」
天野は拳で迎え撃つのを諦め、握った拳を開いて正面に結界を展開。
それを砕いた赤羽のハルバードが天野の体を薙ぎ払った。
手応えのある一撃。だが恐らく普通に立ちあがってくるだろう。
今のハルバードに切断能力は付与していない。
天野宗也は倒すべき相手であって殺すべき相手ではないから。
もっとも仮に切断能力を有していても、天野宗也に致命傷を与えられたとは思わないが。
……とにかく。天野宗也は立ち上がる。
普通の相手なら間違いなく一撃で決着を付けられた一撃は、天野に対してはまだ足りない。
だから攻撃の手を緩めてはいけない。
「天野おおおおおおおおおおおおおッ!」
上空から落ちるエネルギーを全て刀身に込めて、落下しながら陽介が天野に刀を振るう。
だが今度は掴まれもせず空を切った。
確かにその瞬間にまでいた筈の天野がそこにいない。
「……ッ!?」
瞬時に視界に捉えた足に合わせる様に刀を構えて逆方向に飛ぶ。
直後刀から強い衝撃を受け、弾き飛ばされた。
その一撃はあまりに重い。防いでいなければ今のドーピング的な出力を持ってしても一撃で意識を持っていかれたかもしれない。
あの攻撃をまともに受け続けそれでも立ち上がった瀬戸英治が異常なだけで、天野の攻撃は全てが一撃必殺といってもいい。
そして地面を受け身を取るように転がりながら着地した陽介の前には既に天野がいる。
(赤羽の直撃喰らっといて全く動き鈍ってねえなクソ……だが、それも想定済みだ!)
次の瞬間放たれた天野の拳を辛うじて刀で捌く。
放たれた拳に掛けられていた筈の神崎の魔術は既に解呪されており、その威力も防いでいるにも関わらず全身の筋肉を震わせる程の一撃で、そしてその動き全てに無駄がない。
だが追撃はさせない。
土御門陽介は瞬時に懐から呪符を取りだす。
防御の為では無い。防戦に徹せず攻めへと転じる為に。
だが間に合うタイミングではない。だが間に合わせてもらう。
次の瞬間、天野が何かを感じ取った様に追撃への動きを、体を反らした回避へと変化させた。
直後天野の居た位置を側面から魔術戦使用の対戦車ライフルの弾丸が突き抜ける。
そしてその回避で生まれた隙を狙う様に、バランスを崩した天野に呪符を張りつけた。
椎名の掩護無しでは放てない一件無謀な策。だがそれを潜り抜けられないようなら天野宗也は攻略できない。
確実に攻撃を防ぎ援護を待ってからでは攻守の逆転は成しえない。
「じゃあな天野。十数秒後に会おうぜ」
そして呪符が発光した瞬間、天野の体が超高速で弾き飛ばされる。
「普通ならこれ喰らわしゃ終いなんだけどな」
「どうせケロっと涼しい顔して出てくるでしょ」
「だろうな」
苦笑いしながら耳元に手を当てて陽介は言う。
「椎名ナイスフォローだ。助かった。あと真っちゃん。まだやれるな?」
『まだやれますよ。なんなら追撃だってします』
「無理すんな。お前が要だ」
感覚共有。
日向真の得意とする魔術は隠形と探知。隠し捜す事のスペシャリスト。
そして得た情報の共有。
味方の位置も天野宗也の位置も全て把握して必要な情報を流し、土御門洋介が戦場をコントロールする為のサポートを行う。
先の椎名との連携もそのおかげで成り立っている。
「……で、聞かねえでも大体分かってんだが天野は?」
『もうそっちに向けて動き出してますよ』
「……まったく休む暇ねえな。こっちはもう体力限界だっつーの」
「ニコチン取りすぎなんだよ。禁煙すれば?」
「いや、普通に無理してる副作用だぞ。何でもかんでも煙草を悪者にしやがって」
「いや、実際悪いだろ体に……で、あとどれぐらい持つ?」
「上でやってる戦いが終わるまで持たせる」
「言ったな? 有言実行だ、頼むよ? キミが立ってる間位は僕らは後ろでサポートしてやるから」
「よろしく頼むわ……んじゃあ――」
そして視界の奥に映った天野宗也に刀を向けて身構え、叫ぶ。
「此処からが正念場だ、いくぞ!」
「『『『了解!』』』」
陽介の言葉にそれぞれがそう叫び、再び最強の魔術師に矛を向けて再開される。
何度かシュミレートした。
もしも天野宗谷と戦う必要が出てきたとき、自分はいかにして戦うか。そして勝利を納めることができるのか。
結論だけを言えば勝てる可能性はある。その程度の勝率だ。
どれだけ奥の手や裏技や小技を組み合わせても天野の出力を越える事はできない。最低限戦いについていける出力に一時的にでも引き上げて、そこで一気に奇襲的に勝負を決めにかかる。
そうすれば運が良ければ勝てるかもしれない。
そこに神崎達、五番隊一般の隊員が加わる。そうなればようやく勝負になるだろう。神崎達は相当優秀で、阿吽の呼吸で連携も取れる。それで今まで生き残ってきた。
だがそれでも二割。もし本気で確実に倒そうと思えば五番隊総出で挑まなければならない。
「……ッ」
だが今は倒す必要もない。
どちらにしても瀬戸英治は長くは持たない。結果がどうであれ短期決戦で全部終わる。
その僅かな時間を稼ぐ事。
(とにかく作戦開始だ。いくぞ!)
次の瞬間天野が動きだし、その瞬間天野の足元正面から斜め上に付き上がる結界が展開される。
展開された結界は天野の足の裏に直撃し、彼を上空高くまで打ち上げる。
(……よし)
この瞬間にその結界を展開した者は此処にはいない。
これはこういう事態を想定したトラップ。
「次だ! 修二! 椎名! 真っちゃん!」
次の瞬間椎名と神崎が上空の天野に向けて砲弾と魔術弾を打ち込み、真が地面に呪符を張りつけた。
そして目を瞑り術式を構成した後、砲弾を交わし魔術弾を手の甲で弾いた天野に向けて追撃が放たれる。
地上に無数の魔法陣が展開。そこから魔術により作成された球体が高速で上空に打ち上げられる。
遠隔操作のホーミング弾。多少の機動力を持つ程度の魔術師や精霊ならば打ち落とせる。
だが当たらない。
その多くを足元に結界を作り躱す事を繰り返し、そして残りの高威力である筈のホーミング弾は結界と拳によって封殺される。
だが追撃はそれで終わりではない。
今の僅かな時間を与えられれば、次の行動に移れる。
「いっちょやりますか」
流れだした鼻血を無視しながら陽介は軽く跳びあがり、それに合わせる様に赤羽がハルバードを構える。
「やれ! 赤羽!」
「了解!」
そして赤羽が振り上げたハルバードの斧の側面を蹴り上げ、そして打ち上げられる。
そして天野と会敵した。
「落ちろ!」
別系統の肉体強化魔術による実質的な重ね掛けや肉体的なダメージを緩和する為のリミッターを無理矢理外すなど独自に編み出した裏技を駆使して瞬間的に天野の八割近い出力を叩き出して振るわれた刀。
だがそれを両手で握る様に掴まれる。
「お前が落ちろ!」
そして地上に向けて放り投げられた。
(流石に瀬戸の剣白刃取りしただけあるなコイツ……だが)
「だったら一緒に落ちようぜ!」
落下しながら懐から呪符を取りだすと、それが紫色に発光する。
その瞬間になって天野はようやく気付いたらしい。
自身の腕に同じ物が張られている事に。
「いくぞおおおおおおおおおおッ!」
そして落下しながら陽介はその呪符を全力で振るった。
すると天野が孤を描いて地面に向けて落ちていく。
まるで呪符と呪符の間に見えない鎖が繋がっている様に。
「赤羽!」
そして鎖を魔術で破壊した天野の落下地点に赤羽がいる。
「おう!」
そして赤羽のハルバードが振るわれた。
それに対して耐性を崩しながらも天野は拳で迎え打とうとするが、その拳が僅かに遅れる。
手の甲で弾いた神崎の魔術弾。ただの威力を底上げする術式が掛かっていると思わせるように精工な細工を施してあったその銃弾がここで本性を現した。
着弾ポイントの重力を術者の任意のタイミングで変動させる銃弾。それが真の姿。
「……ッ」
天野は拳で迎え撃つのを諦め、握った拳を開いて正面に結界を展開。
それを砕いた赤羽のハルバードが天野の体を薙ぎ払った。
手応えのある一撃。だが恐らく普通に立ちあがってくるだろう。
今のハルバードに切断能力は付与していない。
天野宗也は倒すべき相手であって殺すべき相手ではないから。
もっとも仮に切断能力を有していても、天野宗也に致命傷を与えられたとは思わないが。
……とにかく。天野宗也は立ち上がる。
普通の相手なら間違いなく一撃で決着を付けられた一撃は、天野に対してはまだ足りない。
だから攻撃の手を緩めてはいけない。
「天野おおおおおおおおおおおおおッ!」
上空から落ちるエネルギーを全て刀身に込めて、落下しながら陽介が天野に刀を振るう。
だが今度は掴まれもせず空を切った。
確かにその瞬間にまでいた筈の天野がそこにいない。
「……ッ!?」
瞬時に視界に捉えた足に合わせる様に刀を構えて逆方向に飛ぶ。
直後刀から強い衝撃を受け、弾き飛ばされた。
その一撃はあまりに重い。防いでいなければ今のドーピング的な出力を持ってしても一撃で意識を持っていかれたかもしれない。
あの攻撃をまともに受け続けそれでも立ち上がった瀬戸英治が異常なだけで、天野の攻撃は全てが一撃必殺といってもいい。
そして地面を受け身を取るように転がりながら着地した陽介の前には既に天野がいる。
(赤羽の直撃喰らっといて全く動き鈍ってねえなクソ……だが、それも想定済みだ!)
次の瞬間放たれた天野の拳を辛うじて刀で捌く。
放たれた拳に掛けられていた筈の神崎の魔術は既に解呪されており、その威力も防いでいるにも関わらず全身の筋肉を震わせる程の一撃で、そしてその動き全てに無駄がない。
だが追撃はさせない。
土御門陽介は瞬時に懐から呪符を取りだす。
防御の為では無い。防戦に徹せず攻めへと転じる為に。
だが間に合うタイミングではない。だが間に合わせてもらう。
次の瞬間、天野が何かを感じ取った様に追撃への動きを、体を反らした回避へと変化させた。
直後天野の居た位置を側面から魔術戦使用の対戦車ライフルの弾丸が突き抜ける。
そしてその回避で生まれた隙を狙う様に、バランスを崩した天野に呪符を張りつけた。
椎名の掩護無しでは放てない一件無謀な策。だがそれを潜り抜けられないようなら天野宗也は攻略できない。
確実に攻撃を防ぎ援護を待ってからでは攻守の逆転は成しえない。
「じゃあな天野。十数秒後に会おうぜ」
そして呪符が発光した瞬間、天野の体が超高速で弾き飛ばされる。
「普通ならこれ喰らわしゃ終いなんだけどな」
「どうせケロっと涼しい顔して出てくるでしょ」
「だろうな」
苦笑いしながら耳元に手を当てて陽介は言う。
「椎名ナイスフォローだ。助かった。あと真っちゃん。まだやれるな?」
『まだやれますよ。なんなら追撃だってします』
「無理すんな。お前が要だ」
感覚共有。
日向真の得意とする魔術は隠形と探知。隠し捜す事のスペシャリスト。
そして得た情報の共有。
味方の位置も天野宗也の位置も全て把握して必要な情報を流し、土御門洋介が戦場をコントロールする為のサポートを行う。
先の椎名との連携もそのおかげで成り立っている。
「……で、聞かねえでも大体分かってんだが天野は?」
『もうそっちに向けて動き出してますよ』
「……まったく休む暇ねえな。こっちはもう体力限界だっつーの」
「ニコチン取りすぎなんだよ。禁煙すれば?」
「いや、普通に無理してる副作用だぞ。何でもかんでも煙草を悪者にしやがって」
「いや、実際悪いだろ体に……で、あとどれぐらい持つ?」
「上でやってる戦いが終わるまで持たせる」
「言ったな? 有言実行だ、頼むよ? キミが立ってる間位は僕らは後ろでサポートしてやるから」
「よろしく頼むわ……んじゃあ――」
そして視界の奥に映った天野宗也に刀を向けて身構え、叫ぶ。
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