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七章 白と黒の追跡者
35 勝つための戦略を 上
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あれから途中に僅かな小休憩を設けつつバイクを走らせた俺達は、昼過ぎ位にはエルが囚われていると思われる街の付近。その街を一望できる丘の上へと到達した。
ここまで朝から猛スピードで飛ばして昼過ぎに到着だ。つまり走ってたらとんでもない時間が掛かっていた事になる。
……本当にレベッカのバイクがあってよかった。あれから2度程死にかけたけどそれでも良かった。いや、ほんとに。
「で、どう思う? 何処にエルはいそう?」
バイクを止めて街を見下ろしながらレベッカがそう聞いてくる。
「……可能性が一番高いのは状況考えても研究施設の様な所だろうな。こっからじゃそれがどこにあんのか方角しかわかんねえけど」
正直に言ってそれだけでは、こういう事を行う為の情報として圧倒的に不足しているだろう。
可能ならばこの街の地図を手に入れて地形情報を把握し、他にも得られる情報を収集できるだけ収集して突入するのがベストで。
それがベストだと分かっていながら持っている情報が目的地の方角とどういう施設かの憶測だけというのは不足も不足だ。
だけどそれ以上の情報は得られない。まともに街の中で行動できないのだから得られる訳がない。
それでもポジティブに事を考えれば、そうやって情報が得られない状況に立っていながらも、方角と目的地の施設の目星だけはついている。本当に最低限ながら情報は手にしているのだ。
だから……もう、情報の不足の件はこの際目を瞑る。
「だけどそれだけ分かってりゃ辿りつけるさ」
不十分だがこれでいい。
だから俺達が今から考えるべきなのは、どうやってその施設まで辿り付くかではない。
「だからとりあえず、辿り着いてからどうするかを考えよう」
辿り着いて、どう戦うかだ。
「どうもこうもゴリ押すしかないんじゃない?」
レベッカが作戦もなにもない事を言う。
一件無茶苦茶で投げやりな言葉にも聞こえるが……でも、実際なんの反論もできない。
「……まあそうなるだろうな」
現実的に隠密的な戦法は通用しない。
隠れて忍び込んだとして。見つからない様に動いたとして。
精霊加工工場のカイルの様に、向こうが精霊術により侵入者の存在を認知する可能性は高い。そうなれば慎重に進んでも馬鹿を見るだけだ。
……もっともだからと言って、ゴリ押し戦法が有効かどうかと言えば、それも頷きがたい。
「だけど一々敵とぶつかるわけにもいかねえんだよな」
「絶対的に戦力が不足しているしね。一度戦いが始まればそれで終わる可能性も考えといた方がいいと思う」
この戦い。向こうがあの武器を使ってくると仮定すれば、一戦一戦が死戦となる。
一人相手ならレベッカを主軸としてどうにかできるかもしれないが、二人以上が相手なら相当苦しい。
そして一人相手でも相当時間を有するであろう事を考えれば、一度戦闘になれば複数人を相手にしなければならない可能性が高くなる。
……せめて誰かと戦うのがエルと合流できた後なら、とも思うがそうであっても苦しい事には違いないだろう。
……言いたくはないが、戦力外みたいな強さの奴が一対一である程度優位に立てる程度に変わるだけだ。依然複数人相手にまともに戦える様な状態ではないだろう。
……つまり戦いを避ける事も勝ち抜く事も難しい。そんな状態。
……もしも格段に作戦の成功率を上げる要因があるとすれば、思いつく限り一つだけだ。
そしてその一つをレベッカが言う。
「だから何度も戦って無理矢理進もうと思えば、戦力の増強を図るしかないかな」
「まあそうなんだけどさ……それもまあ無理難題だよ。どうしようもない」
どこかに頼る相手が居るわけでもない。そして当然の事ながらいきなり強くなれる訳でもない。
今レベッカがそこに居るだけで十二分に増強されているんだ。それ以上なんて都合のいい事はそう起こらないだろう。
だけどレベッカは首を振る。
「いや、案外無理難題じゃないとウチは思ってる。実はあるんだ一つだけ。可能性レベルだけど一気に戦況を変えられるかもしれない奥の手が」
「奥の手?」
「そ、奥の手」
一体なんの事だろうと考えた。
今この状況で苦しい事が目に見えている戦況を変える事ができる策とは一体なんなのかを。
だけどそう簡単にその答えは浮かんでこない。
そして俺がその答えを出せないでいる事を察したのか、レベッカはその解を口にする。
「ウチと契約を結ぶ。多分ウチ達の戦力を最大に高める術がそれだよ」
単刀直入で無茶苦茶な、そんな爆弾発言を。
ここまで朝から猛スピードで飛ばして昼過ぎに到着だ。つまり走ってたらとんでもない時間が掛かっていた事になる。
……本当にレベッカのバイクがあってよかった。あれから2度程死にかけたけどそれでも良かった。いや、ほんとに。
「で、どう思う? 何処にエルはいそう?」
バイクを止めて街を見下ろしながらレベッカがそう聞いてくる。
「……可能性が一番高いのは状況考えても研究施設の様な所だろうな。こっからじゃそれがどこにあんのか方角しかわかんねえけど」
正直に言ってそれだけでは、こういう事を行う為の情報として圧倒的に不足しているだろう。
可能ならばこの街の地図を手に入れて地形情報を把握し、他にも得られる情報を収集できるだけ収集して突入するのがベストで。
それがベストだと分かっていながら持っている情報が目的地の方角とどういう施設かの憶測だけというのは不足も不足だ。
だけどそれ以上の情報は得られない。まともに街の中で行動できないのだから得られる訳がない。
それでもポジティブに事を考えれば、そうやって情報が得られない状況に立っていながらも、方角と目的地の施設の目星だけはついている。本当に最低限ながら情報は手にしているのだ。
だから……もう、情報の不足の件はこの際目を瞑る。
「だけどそれだけ分かってりゃ辿りつけるさ」
不十分だがこれでいい。
だから俺達が今から考えるべきなのは、どうやってその施設まで辿り付くかではない。
「だからとりあえず、辿り着いてからどうするかを考えよう」
辿り着いて、どう戦うかだ。
「どうもこうもゴリ押すしかないんじゃない?」
レベッカが作戦もなにもない事を言う。
一件無茶苦茶で投げやりな言葉にも聞こえるが……でも、実際なんの反論もできない。
「……まあそうなるだろうな」
現実的に隠密的な戦法は通用しない。
隠れて忍び込んだとして。見つからない様に動いたとして。
精霊加工工場のカイルの様に、向こうが精霊術により侵入者の存在を認知する可能性は高い。そうなれば慎重に進んでも馬鹿を見るだけだ。
……もっともだからと言って、ゴリ押し戦法が有効かどうかと言えば、それも頷きがたい。
「だけど一々敵とぶつかるわけにもいかねえんだよな」
「絶対的に戦力が不足しているしね。一度戦いが始まればそれで終わる可能性も考えといた方がいいと思う」
この戦い。向こうがあの武器を使ってくると仮定すれば、一戦一戦が死戦となる。
一人相手ならレベッカを主軸としてどうにかできるかもしれないが、二人以上が相手なら相当苦しい。
そして一人相手でも相当時間を有するであろう事を考えれば、一度戦闘になれば複数人を相手にしなければならない可能性が高くなる。
……せめて誰かと戦うのがエルと合流できた後なら、とも思うがそうであっても苦しい事には違いないだろう。
……言いたくはないが、戦力外みたいな強さの奴が一対一である程度優位に立てる程度に変わるだけだ。依然複数人相手にまともに戦える様な状態ではないだろう。
……つまり戦いを避ける事も勝ち抜く事も難しい。そんな状態。
……もしも格段に作戦の成功率を上げる要因があるとすれば、思いつく限り一つだけだ。
そしてその一つをレベッカが言う。
「だから何度も戦って無理矢理進もうと思えば、戦力の増強を図るしかないかな」
「まあそうなんだけどさ……それもまあ無理難題だよ。どうしようもない」
どこかに頼る相手が居るわけでもない。そして当然の事ながらいきなり強くなれる訳でもない。
今レベッカがそこに居るだけで十二分に増強されているんだ。それ以上なんて都合のいい事はそう起こらないだろう。
だけどレベッカは首を振る。
「いや、案外無理難題じゃないとウチは思ってる。実はあるんだ一つだけ。可能性レベルだけど一気に戦況を変えられるかもしれない奥の手が」
「奥の手?」
「そ、奥の手」
一体なんの事だろうと考えた。
今この状況で苦しい事が目に見えている戦況を変える事ができる策とは一体なんなのかを。
だけどそう簡単にその答えは浮かんでこない。
そして俺がその答えを出せないでいる事を察したのか、レベッカはその解を口にする。
「ウチと契約を結ぶ。多分ウチ達の戦力を最大に高める術がそれだよ」
単刀直入で無茶苦茶な、そんな爆弾発言を。
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