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七章 白と黒の追跡者
44 全ての立役者
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「確かアルダリアスで俺の世界の事を話したよな? あの時俺は池袋を襲っていた女の子は精霊じゃないって話をしてたと思う。だけどな、アイツらは精霊だった。俺いた世界に降り立った瞬間、精霊は自我を失って暴走するんだ」
「……ッ!?」
俺にその問いかけをした時点で、俺の話した事は全て予想していたのだろうと思う。
それだけ精霊の自我の消失と暴走は、俺が以前話していた地球の話と一致している。
そしてそれが確定した。確定させてしまった。
それはシオンの様な人間にとっては。精霊をまともに見る事ができる人間にとっては酷く苦しい事なのだろう。
だけどきっと受け入れた。色々と、もう受け入れていかないと前へ進めないから。
きっと今更そんな事で止まってはいれないから。
多分その事実を受け入れて、シオンは俺に聞いてくる。
「……だったらどうしてレベッカは戻ってこれた」
それは至極当然の問いだ。
「絶界の楽園に精霊はいられない。自我を失い暴走する。それを聞いてそこがキミの世界だという憶測はできた。だけどだとすれば、どうしてレベッカは戻ってこれた。彼女もまた暴走する筈じゃないのか」
「……普通ならな。だけどアイツは他の精霊と違う事があったんだ」
「……違う事?」
「お前の作った枷を身に付けていた」
「……待ってくれ、あの枷にそんな機能は――」
「……まあ偶然だろうな。だけどその偶然でアイツはギリギリの所で踏みとどまった。半分暴走しているような状態でな」
「偶然……か。なんだよこの奇跡」
シオンはどこか嬉しそうにそう呟く。
そして俺はそんなシオンに、言っておかなければならない事がある。
「シオン。俺はお前に礼を言っとかないといけない事があるんだ」
更に起きた奇跡の礼を。
「……どうしたんだい急に。あの時渡した枷の事なら気にしなくていいし、それにしたっていきなりその話をするのはいくらなんでも飛躍しすぎ――」
「いや、今のレベッカの話の続きだ。その件でマジで礼言っとかなきゃいけねえ事があるんだ」
シオンは俺が何を言いたいのか分かっていないようだった。
当然だ。分かるわけがない。結び付く方が難しい。
それだけこの話は奇跡の向こう側の話。
「お前のおかげでレベッカに殺されずにすんだ。お前のおかげでエルに出会えた」
「……え? ちょっと待て……まさかキミをこの世界に飛ばしたのは……」
「レベッカだよ」
「……ッ!?」
「お前のおかげでアイツは辛うじて意識を保ってた。お前のおかげでレベッカは人間の俺を殺さないという選択肢を取ってくれた。そういう事があったから、再会した今こうして協力してもらっている。アルダリアスでお前と会う以前から、俺はお前に助けて貰っていたんだよ」
だから。
「だからシオン……ありがとう」
ようやく、言えた。
この事実を知ったときから、これだけは伝えておかなければならないと思っていた。
それだけ俺は……シオン・クロウリーに救われ続けていたんだ。
「本当に……奇跡ってあるんだね」
だけどシオンは言う。
「だけど……それは感謝される様な事なのかい?」
「どう考えたって感謝する事だろ」
「……以前、僕はキミがこの世界に辿り着いた経緯を聞いた。その時にキミは言ったよね。倒れていて、意識を取り戻した女の子に……レベッカに異世界に飛ばされたって」
「……ああ。だからお前が枷を渡してなかったら俺は殺されて――」
「僕が彼女に枷を渡していなければキミはそもそもこんな世界に来ることは無かったんじゃないか?」
「……」
確かにその通りではある。
だってそうだ。
「僕がレベッカに枷を渡していなければ、そもそもレベッカはキミの居た世界に辿り着けたかどうかも分からない。それに辿り着けたとして……レベッカが自我を失って暴走していれば、キミが倒れている女の子に駆け寄るという状況すら生まれなかった筈だ」
そう。多分レベッカが暴走していれば、俺がレベッカに駆け寄るという状況すらきっと生まれない。
多分他の誰かに殺されていたか、普通に生き残って、対策局に記憶を消されて今も普通に一般人として生きているか。
……少なくとも異世界に辿り着く様な事態には確実にならなかったのだと思う。
「……正直な話、キミはこの世界に来たことで随分と苦しい思いをしている筈だ。した筈だ。でなきゃ……キミが折れるか?」
「……」
「キミがエルを何よりも最優先するような発言をしてくれて僕は嬉しかったよ。だけどきっとそうなるには余程の何かが起きている筈だ。それはきっと……ろくでもない事だったのだと思う。だとすればその原因を作ったのもまた僕だ。だから僕は多分、感謝される様な事はしていないんじゃないか?」
「……んなことねえよ」
それは否定しなければならない。
「確かに辛い事はあった。殆ど自業自得だけど……まあ、あんな頭おかしい思考回路してた俺が折れる位には色々あったよ」
だけど。だとしてもだ。
「でもこの世界に来たおかげでエルと出会えた。エルを助けられた。エルが隣に居てくれる。それで色々な事差し引いてもお釣りが来るみたいな単純な話じゃねえけどさ……とにかく、お前には感謝しかねえんだ」
「……そうかい。キミがそう思っているならそれでいい」
シオンはそんな俺の言葉を聞いて頷いて、それから少し笑みを浮かべて言う。
「でも良かった。そう思えるだけの何かを得られて」
「そうだな。まさか彼女ができるとは思わなかった」
「なる程、今キミ達はそういう関係性なんだ……ね? あ、え? いや、ちょっと待てエイジ君!? えぇ!?」
何気なく言った言葉にシオンが驚いた様に無茶苦茶食いついてきた。
「じゃあキミは精霊と付き合ってるってことなのかい!?」
「いや、それそんなに驚くことじゃなくね? 精霊は基本人間の女の子と変わらねえんだからさ」
「ま、まあそうなんだけど……いや、分かっちゃいるんだけど……」
なんかどうもカルチャーショック的な物を受けている様だった。
まあ分からなくもない。シオンは以前までは精霊を資源だと思っていて。そこから人間と同じように見るという価値観を得たとしても、それまでの経緯や……多分、後ろめたさとかもあって、中々そういう風な事には違和感があるのかもしれない。
それにまあ、なんというか……シオンの連れていたあの子は小柄というか……なんというか子供の様な訳で。普段共に行動していた精霊がそういう子なのも、そういう思う理由の一つなのかもしれない。
まあその辺はよく分からないけど。
「そうか……キミとエルがそういう仲か。ハハハ……」
シオンはそう言って笑った後、俺に言う。
「幸せにしてやりなよ」
「……当たり前だ」
そう言って俺も頷き、そして言う。
「その為にも勝ち取らないといけない」
「そうだね。まずはそれからだ」
まずはエルを無事奪還しなければならない。
全てはそれからだ。
……その為にも、やるべき事はきちんとしておかなければならないだろう。
「後でレベッカが戻って来たら少し作戦会議をしよう。俺はシオンの戦い方を詳しくはしらないし、お前も俺達の戦い方は知らねえだろ」
「まあそうだね。この二ヵ月、僕の力も随分と変わった。結局単独では手も足も出なかったけれど、キミ達を驚かせる様な力は見せられる筈だ……今後の戦いの為にも、キミ達にこの力の事を説明しておく必要がある」
「この力……なんかその言い方聞いてると、精霊術じゃねえみたいだな」
俺の言葉にシオンは頷く。
「確信はない。原理も近しい。だけど僕はこの力を精霊術とは違う力だと考えている」
「……」
シオンのそんな言葉を聞いた時、俺は一瞬そのまったく違う力という単語で魔術を連想した。
だけど俺はそれを口にする事無く否定する。
対策局の研究結果によって導き出された結論として、精霊と契約を結んだ人間は、魔術を使うための魔力を生成する器官が閉じていて魔力を作りだせず、魔術を使う事ができない。
サンプルデータが俺一人からしかとっていない為、目の前のシオンで同じ結果が出るかは分からない。
だけどとにかく対策局の研究結果が正しければ、シオンは魔術を使う事ができない。
……だとすれば一体、シオンはどんな力を使っているのだろうか?
「まあは長くなるから、後で話すよ」
まあとにかく、とても濃密な作戦会議になりそうだった。
シオンは得体の知れない新しい力を使えて。
レベッカは暴走する精霊の力を使える。
……割と普通に喧嘩殺法から卒業して付け焼刃ながらも戦い方覚えましたっていう俺が、逆に異端の様にも思える程、二人が持つ力のイレギュラーさが濃すぎるから。
……そうだ。レベッカが帰って来たらそういう話をする。
こちらの切れるカードの話も。
向こうの戦力の話も。
それは避けて通れない、絶対にやるべき話だ。
「じゃあそれは後でだな。こっちからも色々言う事あるけど、それもその時まとめてだ」
だから逆に言えば、シオンと二人な今やるべき話題の優先順位を考えれば、この話よりも先にするべき話がある。
「だから今は……もっと違う話をしよう。レベッカがいたらできない様な話をな」
「レベッカがいたら……できない話?」
レベッカがいない今。いないからこそできる話を。
エルやレベッカには口が裂けても言えない。
だけどシオンには絶対に話しておかなければならない話。
「……隠し事か。そしてそれは僕には言える話。キミは一体何を抱えている?」
「エルにもレベッカにも。とにかく精霊には絶対に言えないような馬鹿みたいに胸糞悪い話だよ」
「胸糞悪い……態々そんな話をするのかい?」
「ああ」
無茶苦茶でも胸糞悪い話でも。とにかく伝えなければならない。
「人間とほぼ同じだとかそういう曖昧な話じゃねえ。精霊って存在は一体何なのか。そういう話だ……多分シオンも知らないんじゃないかって思う。どうだ? 態々しないといけない話だろ?」
精霊という存在についての話を。
「……ッ!?」
俺にその問いかけをした時点で、俺の話した事は全て予想していたのだろうと思う。
それだけ精霊の自我の消失と暴走は、俺が以前話していた地球の話と一致している。
そしてそれが確定した。確定させてしまった。
それはシオンの様な人間にとっては。精霊をまともに見る事ができる人間にとっては酷く苦しい事なのだろう。
だけどきっと受け入れた。色々と、もう受け入れていかないと前へ進めないから。
きっと今更そんな事で止まってはいれないから。
多分その事実を受け入れて、シオンは俺に聞いてくる。
「……だったらどうしてレベッカは戻ってこれた」
それは至極当然の問いだ。
「絶界の楽園に精霊はいられない。自我を失い暴走する。それを聞いてそこがキミの世界だという憶測はできた。だけどだとすれば、どうしてレベッカは戻ってこれた。彼女もまた暴走する筈じゃないのか」
「……普通ならな。だけどアイツは他の精霊と違う事があったんだ」
「……違う事?」
「お前の作った枷を身に付けていた」
「……待ってくれ、あの枷にそんな機能は――」
「……まあ偶然だろうな。だけどその偶然でアイツはギリギリの所で踏みとどまった。半分暴走しているような状態でな」
「偶然……か。なんだよこの奇跡」
シオンはどこか嬉しそうにそう呟く。
そして俺はそんなシオンに、言っておかなければならない事がある。
「シオン。俺はお前に礼を言っとかないといけない事があるんだ」
更に起きた奇跡の礼を。
「……どうしたんだい急に。あの時渡した枷の事なら気にしなくていいし、それにしたっていきなりその話をするのはいくらなんでも飛躍しすぎ――」
「いや、今のレベッカの話の続きだ。その件でマジで礼言っとかなきゃいけねえ事があるんだ」
シオンは俺が何を言いたいのか分かっていないようだった。
当然だ。分かるわけがない。結び付く方が難しい。
それだけこの話は奇跡の向こう側の話。
「お前のおかげでレベッカに殺されずにすんだ。お前のおかげでエルに出会えた」
「……え? ちょっと待て……まさかキミをこの世界に飛ばしたのは……」
「レベッカだよ」
「……ッ!?」
「お前のおかげでアイツは辛うじて意識を保ってた。お前のおかげでレベッカは人間の俺を殺さないという選択肢を取ってくれた。そういう事があったから、再会した今こうして協力してもらっている。アルダリアスでお前と会う以前から、俺はお前に助けて貰っていたんだよ」
だから。
「だからシオン……ありがとう」
ようやく、言えた。
この事実を知ったときから、これだけは伝えておかなければならないと思っていた。
それだけ俺は……シオン・クロウリーに救われ続けていたんだ。
「本当に……奇跡ってあるんだね」
だけどシオンは言う。
「だけど……それは感謝される様な事なのかい?」
「どう考えたって感謝する事だろ」
「……以前、僕はキミがこの世界に辿り着いた経緯を聞いた。その時にキミは言ったよね。倒れていて、意識を取り戻した女の子に……レベッカに異世界に飛ばされたって」
「……ああ。だからお前が枷を渡してなかったら俺は殺されて――」
「僕が彼女に枷を渡していなければキミはそもそもこんな世界に来ることは無かったんじゃないか?」
「……」
確かにその通りではある。
だってそうだ。
「僕がレベッカに枷を渡していなければ、そもそもレベッカはキミの居た世界に辿り着けたかどうかも分からない。それに辿り着けたとして……レベッカが自我を失って暴走していれば、キミが倒れている女の子に駆け寄るという状況すら生まれなかった筈だ」
そう。多分レベッカが暴走していれば、俺がレベッカに駆け寄るという状況すらきっと生まれない。
多分他の誰かに殺されていたか、普通に生き残って、対策局に記憶を消されて今も普通に一般人として生きているか。
……少なくとも異世界に辿り着く様な事態には確実にならなかったのだと思う。
「……正直な話、キミはこの世界に来たことで随分と苦しい思いをしている筈だ。した筈だ。でなきゃ……キミが折れるか?」
「……」
「キミがエルを何よりも最優先するような発言をしてくれて僕は嬉しかったよ。だけどきっとそうなるには余程の何かが起きている筈だ。それはきっと……ろくでもない事だったのだと思う。だとすればその原因を作ったのもまた僕だ。だから僕は多分、感謝される様な事はしていないんじゃないか?」
「……んなことねえよ」
それは否定しなければならない。
「確かに辛い事はあった。殆ど自業自得だけど……まあ、あんな頭おかしい思考回路してた俺が折れる位には色々あったよ」
だけど。だとしてもだ。
「でもこの世界に来たおかげでエルと出会えた。エルを助けられた。エルが隣に居てくれる。それで色々な事差し引いてもお釣りが来るみたいな単純な話じゃねえけどさ……とにかく、お前には感謝しかねえんだ」
「……そうかい。キミがそう思っているならそれでいい」
シオンはそんな俺の言葉を聞いて頷いて、それから少し笑みを浮かべて言う。
「でも良かった。そう思えるだけの何かを得られて」
「そうだな。まさか彼女ができるとは思わなかった」
「なる程、今キミ達はそういう関係性なんだ……ね? あ、え? いや、ちょっと待てエイジ君!? えぇ!?」
何気なく言った言葉にシオンが驚いた様に無茶苦茶食いついてきた。
「じゃあキミは精霊と付き合ってるってことなのかい!?」
「いや、それそんなに驚くことじゃなくね? 精霊は基本人間の女の子と変わらねえんだからさ」
「ま、まあそうなんだけど……いや、分かっちゃいるんだけど……」
なんかどうもカルチャーショック的な物を受けている様だった。
まあ分からなくもない。シオンは以前までは精霊を資源だと思っていて。そこから人間と同じように見るという価値観を得たとしても、それまでの経緯や……多分、後ろめたさとかもあって、中々そういう風な事には違和感があるのかもしれない。
それにまあ、なんというか……シオンの連れていたあの子は小柄というか……なんというか子供の様な訳で。普段共に行動していた精霊がそういう子なのも、そういう思う理由の一つなのかもしれない。
まあその辺はよく分からないけど。
「そうか……キミとエルがそういう仲か。ハハハ……」
シオンはそう言って笑った後、俺に言う。
「幸せにしてやりなよ」
「……当たり前だ」
そう言って俺も頷き、そして言う。
「その為にも勝ち取らないといけない」
「そうだね。まずはそれからだ」
まずはエルを無事奪還しなければならない。
全てはそれからだ。
……その為にも、やるべき事はきちんとしておかなければならないだろう。
「後でレベッカが戻って来たら少し作戦会議をしよう。俺はシオンの戦い方を詳しくはしらないし、お前も俺達の戦い方は知らねえだろ」
「まあそうだね。この二ヵ月、僕の力も随分と変わった。結局単独では手も足も出なかったけれど、キミ達を驚かせる様な力は見せられる筈だ……今後の戦いの為にも、キミ達にこの力の事を説明しておく必要がある」
「この力……なんかその言い方聞いてると、精霊術じゃねえみたいだな」
俺の言葉にシオンは頷く。
「確信はない。原理も近しい。だけど僕はこの力を精霊術とは違う力だと考えている」
「……」
シオンのそんな言葉を聞いた時、俺は一瞬そのまったく違う力という単語で魔術を連想した。
だけど俺はそれを口にする事無く否定する。
対策局の研究結果によって導き出された結論として、精霊と契約を結んだ人間は、魔術を使うための魔力を生成する器官が閉じていて魔力を作りだせず、魔術を使う事ができない。
サンプルデータが俺一人からしかとっていない為、目の前のシオンで同じ結果が出るかは分からない。
だけどとにかく対策局の研究結果が正しければ、シオンは魔術を使う事ができない。
……だとすれば一体、シオンはどんな力を使っているのだろうか?
「まあは長くなるから、後で話すよ」
まあとにかく、とても濃密な作戦会議になりそうだった。
シオンは得体の知れない新しい力を使えて。
レベッカは暴走する精霊の力を使える。
……割と普通に喧嘩殺法から卒業して付け焼刃ながらも戦い方覚えましたっていう俺が、逆に異端の様にも思える程、二人が持つ力のイレギュラーさが濃すぎるから。
……そうだ。レベッカが帰って来たらそういう話をする。
こちらの切れるカードの話も。
向こうの戦力の話も。
それは避けて通れない、絶対にやるべき話だ。
「じゃあそれは後でだな。こっちからも色々言う事あるけど、それもその時まとめてだ」
だから逆に言えば、シオンと二人な今やるべき話題の優先順位を考えれば、この話よりも先にするべき話がある。
「だから今は……もっと違う話をしよう。レベッカがいたらできない様な話をな」
「レベッカがいたら……できない話?」
レベッカがいない今。いないからこそできる話を。
エルやレベッカには口が裂けても言えない。
だけどシオンには絶対に話しておかなければならない話。
「……隠し事か。そしてそれは僕には言える話。キミは一体何を抱えている?」
「エルにもレベッカにも。とにかく精霊には絶対に言えないような馬鹿みたいに胸糞悪い話だよ」
「胸糞悪い……態々そんな話をするのかい?」
「ああ」
無茶苦茶でも胸糞悪い話でも。とにかく伝えなければならない。
「人間とほぼ同じだとかそういう曖昧な話じゃねえ。精霊って存在は一体何なのか。そういう話だ……多分シオンも知らないんじゃないかって思う。どうだ? 態々しないといけない話だろ?」
精霊という存在についての話を。
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