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七章 白と黒の追跡者
62 戦力差
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さて、俺達の治療が終わったのだから、次のステップに進まなければならない。
なにもグランを脅してやってもらう事というのは回復術による治療だけではないから。
「……さて、グラン。いくつか質問があるんだ」
グランは俺達が戦うべき相手の情報を持っている訳で、故に俺達がこれから行うべきは尋問だ。
そしてシオンは問いかける。
「今ルミアの研究所にキミが使っていた様な霊装はいくつある」
「……」
「答えろグラン。言っておくけど嘘を付いても無駄だからな。あらゆる精霊術をキミに対して行使できるこの状況で嘘を見抜く程度の事は容易いという事はわかる筈だ」
その言葉を聞いてグランは苦い表情を浮かべながら答える。
「……俺が確認している分で八つだ。だから俺達が三つ持ちだしている今は五つって所か」
「確認している分っていうのは?」
「ルミア以外に霊装を持っていた研究者が7人居たって事だ。それにルミアを足して八つ。だけどそれを作っている張本人がいくつ持っているかなんてのは分からねえだろ? だから確認している分はだ。実際はそれより多いんじゃねえかと思う。実地テスト用に憲兵に貸し出したりもしているし、廃棄の失敗作も結構あった訳だしな」
「……ッ」
廃棄の失敗作という言葉に思わず声にならない声が出る。
それは即ち精霊を霊装へと加工して廃棄した。つまりは殺した。殺された精霊が何人も居たという事だから。
分かってはいたけれど。そもそも加工されてしまっている時点で実質的に死んでいるのと同義なのだろうけど。
それでも……そこで起きていた事はあまりにも目を反らしたくなるような出来事だ。
そして……そんな最悪の先に出来たのは最低8つの霊装。いや、その憲兵に貸し出されたのであろう霊装と対峙したのだから最低9つか。
それをまともな価値観を持っている人間がやっているのだというのだから、いかにその相手が狂っているのかが理解できる。
そんな相手の元にエルがいるという事に改めて寒気がする。
……しかし、今最低でも5つ襲撃予定の研究所に霊装が存在するというのは……その位は想定していたのだけれど、それでも頭を抱えたくなってくる。
三人相手でこれなのだ。しかもうち一人は俺の右腕の粉砕骨折というあまりにも安すぎる対価で実質一人にしていて、ようやくギリギリにも程がある勝利を納めた。
それなのにこれから向かう所には、実質倍以上の霊装に加えて霊装持ち以外の敵もいるかもしれなくて。そして向こうに利がある敵陣のど真ん中だ。
ほんと無茶苦茶な難易度だと思う。
……もしあの時レベッカに協力を申し出て貰えなかったら、これを俺一人で攻略しなければならない所だった。
そう考えると、本当に最悪な事態は回避してる訳だ。
ほぼゼロに等しかった可能性を1パーセントに引き上げる位には。
そしてシオンはその確率を少しでも高める為にグランに問いかける。
「じゃあ今把握してる霊装のスペックを教えろ」
「……聞いてどうするんだよ。対策を立てるってか?」
グランは苦笑いを浮かべながらシオンに言う。
「お前みたいな奴がなんでこんな事を始めたのかは知らねえが……無謀だぜお前のやろうとしてる事は」
「……」
「……お前は馬鹿じゃねえ。そんな馬鹿じゃねえお前が手を尽くしてどうにもならず逃げ出して、今も死にかけたのが現実だ。正直攻略に頭使う位ならこれからの事でも考えた方がいいんじゃねえのか?」
「これからの事を考えた上で出した答えがこれだよ。別に理解してくれなくても構わない……とにかく教えろグラン。向こうの霊装のスペックを教えるんだ」
「……」
その後少しの間黙り混んだ後、グランは知っている情報を語り出した。
少なくとも今グランが把握している向こうの霊装の情報。
高速戦闘を得意とする短剣の霊装。
一撃の破壊力に重きを置かれたハンマーの霊装。
超硬度の決壊を作り出すグローブの霊装。
そして中、遠距離を得意とするマスケット銃型の霊装。これはあの時襲撃してきた奴の霊装だろう。
……そして。
「後はルミアの槍か」
シオンが苦い表情で言うと、グランは頷いて言う。
「コイツは説明不要か」
「知ってるし、そもそもされても対して意味を成さない。なにせなんでもできるであろうルミアに霊装の力が加わるってだけなんだから」
「……」
仮にそのルミアという研究者がシオンと同等の実力を持っていたとしたら、確かにどんな霊装かなんてのは殆ど意味を成さないだろう。
例えば俺とエルなら風を操り、そして日本刀に姿を変えたエルの力で斬撃と防壁を張れる。
だけどシオンのような奴の場合、どんな精霊と契約していようが、それらができてしまうのだから。
裏技のような出力の底上げに霊装による出力強化を重ねて、高いレベルの力で。
……無茶苦茶だ。もしかしたら天野よりも強いんしゃないか?
まあ……天野はあの時明らかに手を抜いていた訳で。俺はあの最強の魔術師の全力を知らない訳だけど。
そしてシオンの言葉を聞いたグランは、シオンに諭す様に言う。
「アイツの強さは化け物染みてるぞ。他の7人と手を組んでも勝てねえかもしれねえ。そんな奴相手に勝つつもりでいるのかお前は」
「勝つさ……勝たなきゃいけない」
そしてシオンはどこか自分を鼓舞する様に、一拍空けてからグランに言った。
「勝つのは僕達だ」
なにもグランを脅してやってもらう事というのは回復術による治療だけではないから。
「……さて、グラン。いくつか質問があるんだ」
グランは俺達が戦うべき相手の情報を持っている訳で、故に俺達がこれから行うべきは尋問だ。
そしてシオンは問いかける。
「今ルミアの研究所にキミが使っていた様な霊装はいくつある」
「……」
「答えろグラン。言っておくけど嘘を付いても無駄だからな。あらゆる精霊術をキミに対して行使できるこの状況で嘘を見抜く程度の事は容易いという事はわかる筈だ」
その言葉を聞いてグランは苦い表情を浮かべながら答える。
「……俺が確認している分で八つだ。だから俺達が三つ持ちだしている今は五つって所か」
「確認している分っていうのは?」
「ルミア以外に霊装を持っていた研究者が7人居たって事だ。それにルミアを足して八つ。だけどそれを作っている張本人がいくつ持っているかなんてのは分からねえだろ? だから確認している分はだ。実際はそれより多いんじゃねえかと思う。実地テスト用に憲兵に貸し出したりもしているし、廃棄の失敗作も結構あった訳だしな」
「……ッ」
廃棄の失敗作という言葉に思わず声にならない声が出る。
それは即ち精霊を霊装へと加工して廃棄した。つまりは殺した。殺された精霊が何人も居たという事だから。
分かってはいたけれど。そもそも加工されてしまっている時点で実質的に死んでいるのと同義なのだろうけど。
それでも……そこで起きていた事はあまりにも目を反らしたくなるような出来事だ。
そして……そんな最悪の先に出来たのは最低8つの霊装。いや、その憲兵に貸し出されたのであろう霊装と対峙したのだから最低9つか。
それをまともな価値観を持っている人間がやっているのだというのだから、いかにその相手が狂っているのかが理解できる。
そんな相手の元にエルがいるという事に改めて寒気がする。
……しかし、今最低でも5つ襲撃予定の研究所に霊装が存在するというのは……その位は想定していたのだけれど、それでも頭を抱えたくなってくる。
三人相手でこれなのだ。しかもうち一人は俺の右腕の粉砕骨折というあまりにも安すぎる対価で実質一人にしていて、ようやくギリギリにも程がある勝利を納めた。
それなのにこれから向かう所には、実質倍以上の霊装に加えて霊装持ち以外の敵もいるかもしれなくて。そして向こうに利がある敵陣のど真ん中だ。
ほんと無茶苦茶な難易度だと思う。
……もしあの時レベッカに協力を申し出て貰えなかったら、これを俺一人で攻略しなければならない所だった。
そう考えると、本当に最悪な事態は回避してる訳だ。
ほぼゼロに等しかった可能性を1パーセントに引き上げる位には。
そしてシオンはその確率を少しでも高める為にグランに問いかける。
「じゃあ今把握してる霊装のスペックを教えろ」
「……聞いてどうするんだよ。対策を立てるってか?」
グランは苦笑いを浮かべながらシオンに言う。
「お前みたいな奴がなんでこんな事を始めたのかは知らねえが……無謀だぜお前のやろうとしてる事は」
「……」
「……お前は馬鹿じゃねえ。そんな馬鹿じゃねえお前が手を尽くしてどうにもならず逃げ出して、今も死にかけたのが現実だ。正直攻略に頭使う位ならこれからの事でも考えた方がいいんじゃねえのか?」
「これからの事を考えた上で出した答えがこれだよ。別に理解してくれなくても構わない……とにかく教えろグラン。向こうの霊装のスペックを教えるんだ」
「……」
その後少しの間黙り混んだ後、グランは知っている情報を語り出した。
少なくとも今グランが把握している向こうの霊装の情報。
高速戦闘を得意とする短剣の霊装。
一撃の破壊力に重きを置かれたハンマーの霊装。
超硬度の決壊を作り出すグローブの霊装。
そして中、遠距離を得意とするマスケット銃型の霊装。これはあの時襲撃してきた奴の霊装だろう。
……そして。
「後はルミアの槍か」
シオンが苦い表情で言うと、グランは頷いて言う。
「コイツは説明不要か」
「知ってるし、そもそもされても対して意味を成さない。なにせなんでもできるであろうルミアに霊装の力が加わるってだけなんだから」
「……」
仮にそのルミアという研究者がシオンと同等の実力を持っていたとしたら、確かにどんな霊装かなんてのは殆ど意味を成さないだろう。
例えば俺とエルなら風を操り、そして日本刀に姿を変えたエルの力で斬撃と防壁を張れる。
だけどシオンのような奴の場合、どんな精霊と契約していようが、それらができてしまうのだから。
裏技のような出力の底上げに霊装による出力強化を重ねて、高いレベルの力で。
……無茶苦茶だ。もしかしたら天野よりも強いんしゃないか?
まあ……天野はあの時明らかに手を抜いていた訳で。俺はあの最強の魔術師の全力を知らない訳だけど。
そしてシオンの言葉を聞いたグランは、シオンに諭す様に言う。
「アイツの強さは化け物染みてるぞ。他の7人と手を組んでも勝てねえかもしれねえ。そんな奴相手に勝つつもりでいるのかお前は」
「勝つさ……勝たなきゃいけない」
そしてシオンはどこか自分を鼓舞する様に、一拍空けてからグランに言った。
「勝つのは僕達だ」
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