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七章 白と黒の追跡者
76 盤上整理
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「シオンそっち一人頼む!」
「分かった!」
俺とロングソードの男の間に割って入ってきたシオンに片割は任せ、目の前のハンマーを持つ男に全神経を集中させる。
させなければ切り抜けられない。
「……ッ!」
男の振り下ろしてきたハンマーを辛うじて躱す。だが今までと違って容易に反撃へと移れない。
隙が少なくそして……攻撃がそこで終わらない。
「ッ!」
足元から突き上げるように、衝撃波が全身に叩き付けられた。
まるで地面に叩き付けられたハンマーの衝撃がそのまま床から跳ね返って来たように。
だが左程威力は無い。精々が全身に激痛が走る程度。
耐えられる。大丈夫だ。
だけど衝撃で体が浮いた。
「……ッ!?」
そして僅かな隙も殆ど見せず、ハンマーを高速で男は振り払う……だけど。
殆どだ。全く隙が無いわけじゃない。
そして……それを隙だと認識できている時点で、勝機は十分にある。
瞬時に左手を頭上に向けて風を噴出し、宙に浮いていた体を床スレスレの低い体制へと落とす。
そして頭上をハンマーが通過した瞬間、風で体勢を整え低い重心のまま男の腹部に右ストレートを叩き込んだ。
それで男の動きが僅かに止まった。
それを認識した……次の瞬間だった。
「……ッ!?」
突然視界に映る、ハンマーを持った男以外の全ての光景が変貌を遂げた。
戦いの喧騒は無く、シオンもレベッカも他の敵だって見えない。
否、見えないのではなく……いない。
……そして。
「が……あ……」
白衣の男の口から血反吐が溢れだした。
俺の拳の影響……なのかどうかは分からない。
ただ完全に動きの止まった男は吐血だけではなく鼻血を流し、首筋や腕の血管も浮き出ているのが分かった。
明らかに男の体に外傷以外の異変が起きている。
今こうして状況が一変した事も合わさって、一体何が起きているのだろうか。
だけど……それを必ずしも究明する必要なんてない。
「悪いな」
追い討ちを掛けるように男の顎にアッパーカットを叩き込んだ。
衝撃で僅かに体を浮かせた後、男は地面に倒れ伏せる。
どうやら気を失ったようで、それ以上動く事はなかった。
「……よし」
明らかに心身に異常をきたしていた男の隙に付け入るような勝ち方は気持ちのいい物では無かったが、そもそも戦いに快楽を求める様な人間ではないつもりで。そして同情なんてしていられる立場でもなくて。
だから今はどうでもいい。そんな事に意識を割いてはいられない。
俺にとってどうでもいいような奴らから目を背けて踏みにじってでも前へ進まなければならない。
……先へ進もう。
男の身にだけでなく自分の身に何が起きたのかも推測するしか無い訳で、仮に答えを出す為のピースがこの手にあったとしても、少なくとも今は何故こうなったのかという事よりも、こうなった上でどうするべきかを考える方が先決で。
だからとにかく、立ち止るな。
「……エル、今行く」
可能ならばシオンとレベッカと合流してエルの元へ。それが無理でも早急にエルと合流し、シオン達とも
合流する。
少なくとも立ち止っている理由なんてない。
だから俺は部屋に一つだけあった扉を開いて全力で走り出した。
比較的先程よりもエルとの距離は近く感じる。
……そして。
「くそ……なんかあったのか?」
エルの方からもこちらに向けて動き出している感覚が刻印から伝わってきた。
それが誰か此処の人間に連れられてなのか、エルが何かしらの手段で逃げだした結果なのかは分からない。だけど状況を考えれば圧倒的に前者の可能性が高い。
とにかく……とにかく一秒でも早く合流するんだ。
「頼む……無事でいてくれ……ッ!」
そう口にしながら、拳を強く握り絞めた。
「分かった!」
俺とロングソードの男の間に割って入ってきたシオンに片割は任せ、目の前のハンマーを持つ男に全神経を集中させる。
させなければ切り抜けられない。
「……ッ!」
男の振り下ろしてきたハンマーを辛うじて躱す。だが今までと違って容易に反撃へと移れない。
隙が少なくそして……攻撃がそこで終わらない。
「ッ!」
足元から突き上げるように、衝撃波が全身に叩き付けられた。
まるで地面に叩き付けられたハンマーの衝撃がそのまま床から跳ね返って来たように。
だが左程威力は無い。精々が全身に激痛が走る程度。
耐えられる。大丈夫だ。
だけど衝撃で体が浮いた。
「……ッ!?」
そして僅かな隙も殆ど見せず、ハンマーを高速で男は振り払う……だけど。
殆どだ。全く隙が無いわけじゃない。
そして……それを隙だと認識できている時点で、勝機は十分にある。
瞬時に左手を頭上に向けて風を噴出し、宙に浮いていた体を床スレスレの低い体制へと落とす。
そして頭上をハンマーが通過した瞬間、風で体勢を整え低い重心のまま男の腹部に右ストレートを叩き込んだ。
それで男の動きが僅かに止まった。
それを認識した……次の瞬間だった。
「……ッ!?」
突然視界に映る、ハンマーを持った男以外の全ての光景が変貌を遂げた。
戦いの喧騒は無く、シオンもレベッカも他の敵だって見えない。
否、見えないのではなく……いない。
……そして。
「が……あ……」
白衣の男の口から血反吐が溢れだした。
俺の拳の影響……なのかどうかは分からない。
ただ完全に動きの止まった男は吐血だけではなく鼻血を流し、首筋や腕の血管も浮き出ているのが分かった。
明らかに男の体に外傷以外の異変が起きている。
今こうして状況が一変した事も合わさって、一体何が起きているのだろうか。
だけど……それを必ずしも究明する必要なんてない。
「悪いな」
追い討ちを掛けるように男の顎にアッパーカットを叩き込んだ。
衝撃で僅かに体を浮かせた後、男は地面に倒れ伏せる。
どうやら気を失ったようで、それ以上動く事はなかった。
「……よし」
明らかに心身に異常をきたしていた男の隙に付け入るような勝ち方は気持ちのいい物では無かったが、そもそも戦いに快楽を求める様な人間ではないつもりで。そして同情なんてしていられる立場でもなくて。
だから今はどうでもいい。そんな事に意識を割いてはいられない。
俺にとってどうでもいいような奴らから目を背けて踏みにじってでも前へ進まなければならない。
……先へ進もう。
男の身にだけでなく自分の身に何が起きたのかも推測するしか無い訳で、仮に答えを出す為のピースがこの手にあったとしても、少なくとも今は何故こうなったのかという事よりも、こうなった上でどうするべきかを考える方が先決で。
だからとにかく、立ち止るな。
「……エル、今行く」
可能ならばシオンとレベッカと合流してエルの元へ。それが無理でも早急にエルと合流し、シオン達とも
合流する。
少なくとも立ち止っている理由なんてない。
だから俺は部屋に一つだけあった扉を開いて全力で走り出した。
比較的先程よりもエルとの距離は近く感じる。
……そして。
「くそ……なんかあったのか?」
エルの方からもこちらに向けて動き出している感覚が刻印から伝わってきた。
それが誰か此処の人間に連れられてなのか、エルが何かしらの手段で逃げだした結果なのかは分からない。だけど状況を考えれば圧倒的に前者の可能性が高い。
とにかく……とにかく一秒でも早く合流するんだ。
「頼む……無事でいてくれ……ッ!」
そう口にしながら、拳を強く握り絞めた。
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