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第一巻:荒野の怠慢神殿編
第九話:【家族】骨龍ネロ、ユラリアに撫でられて「真の龍王」へ進化する。
その日のユラリアは、いつもより少しだけ機嫌が良かった。 理由は単純。王都の混乱(と影のデリバリー)を経て届いた、期間限定の「極上とろけるプリン」が、想像を絶する絶品だったからだ。
「……ふぅ。満足だわ」
お腹がいっぱいになると、猛烈な睡魔が襲ってくるのが彼女の常である。 ユラリアは、バルコニーの特等席で日向ぼっこをしていたネロの元へと歩み寄った。
再生が進んだネロの体は、今や骨の隙間を美しい銀色の筋肉と鱗が埋め尽くしている。だが、かつて「絶望を呼ぶ黒き風」と恐れられた彼は、ユラリアの前では一匹の大きな飼い犬のようだった。
「ネロ、ちょっと高いわ。頭を下げて」
「はっ、はい! お嬢様、これでよろしいでしょうか?」
巨躯を折り曲げ、地面に伏せるネロ。ユラリアは、寝ぼけて半分閉じかかった目のまま、彼の眉間のあたりを無造作に、優しく撫でた。
「……ふわぁ。……ネロ、いつも、お湯加減……ありがとうね。……あなた、いい子ね……」
ユラリアの指先から、金色の魔力がサラサラと溢れ出し、ネロの鱗に吸い込まれていく。 それは、世界を創造した神が万物を祝福する時に使うとされる【原初の慈愛(マザー・グレイス)】。ユラリア本人は「ただのスキンシップ」だと思っているが、その純度は、神殿の最高司祭が一生をかけて捧げる祈りの数億倍に達していた。
「あ……あ、ああああ……っ!!」
ネロの全身を、衝撃的なまでの多幸感と熱い力が駆け抜けた。 折れていた角が黄金色に輝きながら再生し、背中からはさらに二対、合計六枚の輝く翼が展開される。
(((なんだ……この温かさは……。我の中の死の毒が、すべて光に変わっていく……! お嬢様……貴女というお方は、一体どれほどの深淵な愛を隠し持っていらっしゃるのだ!!)))
ドォォォォォン!!
空に向かって放たれたネロの咆哮は、周囲の雲をすべて吹き飛ばし、夜でもないのに空にオーロラを出現させた。 伝説の骨龍は、この瞬間、唯一無二の存在――『始源の神龍王(オリジン・バハムート)』へと進化したのである。
「……うるさいわよ、ネロ。喜びすぎ」
「も、申し訳ございません! しかし、この力……我、今ならこの大陸をまるごと浮遊させて、お嬢様をより静かな成層圏までお運びすることも可能かと!」
「そんな面倒なことしなくていいわ。……あ、でも、その六枚の翼……。広げると、ちょうどいい日除けになりそうね」
「……はっ! 承知いたしました! 我が全神威をかけて、最高の日陰を作り上げます!」
神龍王ネロは、大陸を滅ぼせるほどの翼を「日除けのパラソル」として完璧な角度で固定した。
その光景を見ていたアルベルト公爵は、もはや感極まって膝をつき、祈りを捧げていた。
「……龍の王さえも一撫でで従え、さらなる高みへと導く……。ユラリア様、やはり貴女はこの世界の調停者。貴女が撫でてくださるなら、私は……私はこの剣を捨てて、貴女の靴磨きにでもなりたい……!」
「アルベルト様も、お疲れならあそこの芝生で寝ていいわよ」
「……っ!! 聖女様からの、直接の休息命令……!! ありがたき幸せ!!」
アルベルトもまた、聖域の魔力に当てられ、芝生の上で幸福な死んだ魚のような目で眠りに落ちた。
ユラリアは、神龍王の翼の下、涼しい風に吹かれながら三度寝の準備を整える。
(((……なんだか、みんな勝手に強くなったり幸せになったりしてるわね。ま、私の睡眠を邪魔しないなら、それでいいわ。……おやすみなさい)))
彼女が静かに目を閉じた瞬間。 進化の余波で、荒野に流れる川が「最高級のミネラルウォーター」へと変化した。 ユラリアの怠惰が深まるほど、世界はますます、彼女にとって「都合の良い天国」へと作り変えられていくのであった。
「……ふぅ。満足だわ」
お腹がいっぱいになると、猛烈な睡魔が襲ってくるのが彼女の常である。 ユラリアは、バルコニーの特等席で日向ぼっこをしていたネロの元へと歩み寄った。
再生が進んだネロの体は、今や骨の隙間を美しい銀色の筋肉と鱗が埋め尽くしている。だが、かつて「絶望を呼ぶ黒き風」と恐れられた彼は、ユラリアの前では一匹の大きな飼い犬のようだった。
「ネロ、ちょっと高いわ。頭を下げて」
「はっ、はい! お嬢様、これでよろしいでしょうか?」
巨躯を折り曲げ、地面に伏せるネロ。ユラリアは、寝ぼけて半分閉じかかった目のまま、彼の眉間のあたりを無造作に、優しく撫でた。
「……ふわぁ。……ネロ、いつも、お湯加減……ありがとうね。……あなた、いい子ね……」
ユラリアの指先から、金色の魔力がサラサラと溢れ出し、ネロの鱗に吸い込まれていく。 それは、世界を創造した神が万物を祝福する時に使うとされる【原初の慈愛(マザー・グレイス)】。ユラリア本人は「ただのスキンシップ」だと思っているが、その純度は、神殿の最高司祭が一生をかけて捧げる祈りの数億倍に達していた。
「あ……あ、ああああ……っ!!」
ネロの全身を、衝撃的なまでの多幸感と熱い力が駆け抜けた。 折れていた角が黄金色に輝きながら再生し、背中からはさらに二対、合計六枚の輝く翼が展開される。
(((なんだ……この温かさは……。我の中の死の毒が、すべて光に変わっていく……! お嬢様……貴女というお方は、一体どれほどの深淵な愛を隠し持っていらっしゃるのだ!!)))
ドォォォォォン!!
空に向かって放たれたネロの咆哮は、周囲の雲をすべて吹き飛ばし、夜でもないのに空にオーロラを出現させた。 伝説の骨龍は、この瞬間、唯一無二の存在――『始源の神龍王(オリジン・バハムート)』へと進化したのである。
「……うるさいわよ、ネロ。喜びすぎ」
「も、申し訳ございません! しかし、この力……我、今ならこの大陸をまるごと浮遊させて、お嬢様をより静かな成層圏までお運びすることも可能かと!」
「そんな面倒なことしなくていいわ。……あ、でも、その六枚の翼……。広げると、ちょうどいい日除けになりそうね」
「……はっ! 承知いたしました! 我が全神威をかけて、最高の日陰を作り上げます!」
神龍王ネロは、大陸を滅ぼせるほどの翼を「日除けのパラソル」として完璧な角度で固定した。
その光景を見ていたアルベルト公爵は、もはや感極まって膝をつき、祈りを捧げていた。
「……龍の王さえも一撫でで従え、さらなる高みへと導く……。ユラリア様、やはり貴女はこの世界の調停者。貴女が撫でてくださるなら、私は……私はこの剣を捨てて、貴女の靴磨きにでもなりたい……!」
「アルベルト様も、お疲れならあそこの芝生で寝ていいわよ」
「……っ!! 聖女様からの、直接の休息命令……!! ありがたき幸せ!!」
アルベルトもまた、聖域の魔力に当てられ、芝生の上で幸福な死んだ魚のような目で眠りに落ちた。
ユラリアは、神龍王の翼の下、涼しい風に吹かれながら三度寝の準備を整える。
(((……なんだか、みんな勝手に強くなったり幸せになったりしてるわね。ま、私の睡眠を邪魔しないなら、それでいいわ。……おやすみなさい)))
彼女が静かに目を閉じた瞬間。 進化の余波で、荒野に流れる川が「最高級のミネラルウォーター」へと変化した。 ユラリアの怠惰が深まるほど、世界はますます、彼女にとって「都合の良い天国」へと作り変えられていくのであった。
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