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第一巻:荒野の怠慢神殿編
第十話:【終焉】ブラック王国の崩壊と、ユラリアの完全なる休日
「――ユラリア様! どうか、どうかお戻りください!!」
聖域の境界線で、一国の宰相ともあろう老人が地面に額を擦り付けていた。 その後ろには、かつてユラリアを「無能」と蔑んだ文官たちが、ボロ雑巾のような顔で列をなしている。
王都は今、完全なる機能不全に陥っていた。 ユラリアが指先一つで管理していた地脈の防衛結界は霧散し、街道には魔獣が溢れ、農作物は枯れ果てた。さらに、彼女が無意識に調整していた国家予算の計算式をリリアンが書き換えたせいで、国庫は一夜にして破綻寸前となったのだ。
「リリアン聖女は……リリアン様は、公務の重圧で『お腹が痛い』と引きこもってしまわれました! ジークフリート殿下も、氾濫した魔獣に追い回されて腰を抜かし、寝込んでおります! この国を救えるのは、貴女様しかいないのです!」
必死の訴え。だが、邸宅のバルコニーに立つユラリアは、耳を塞ぎたいほどに面倒そうな顔をしていた。
(((……嫌よ。せっかく退職できたのに、わざわざ再就職しに戻るバカがどこにいるのよ)))
ユラリアは、シャドウが時空を超えて持ってきた最高級の「完熟マンゴープリン」をスプーンで掬いながら、冷淡に言い放った。
「お引き取りください。私は今、人生で最も重要な『食後の昼寝』の準備で忙しいのです」
「そんなっ! 国民を見捨てるのですか!? 貴女には公爵令嬢としての責任が――」
言いかけた宰相の言葉を、アルベルト公爵の鋭い抜刀音が遮った。
「責任だと? 彼女をゴミのように捨て、死地に追放したのは貴殿らだろう。今さら自分たちの無能を棚に上げ、彼女の安眠を奪おうとは……笑わせるな」
アルベルトの背後で、神龍王へと進化したネロが、一吹きで王都を焦土に変えかねない熱線を喉元に溜めている。
「……ユラリア様が、この地を離れることはない。ここは、彼女がその尊い休息によって守り抜いた『唯一の安息の地』なのだからな」
宰相たちは、アルベルトとネロの威圧感に気絶し、シャドウの影魔法によって「まとめて王都の城門前までポイ捨て」された。
静寂が戻った聖域。 ユラリアは、マンゴープリンを完食すると、幸せな溜息をついた。
「……ねえ、アルベルト様、ネロ、シャドウ。私、気づいたんだけど」
「はっ、何なりとお申し付けください、我が主」 「お湯加減でしょうか、お嬢様?」
「この場所、広すぎるわ。……誰にも邪魔されないように、もっと『怠惰』を極められる場所にしたい。……そうだ、この荒野全体を、私の『庭』にしちゃいましょう」
ユラリアは、手に持っていたスプーンを軽く振った。 【世界改変:永劫なる土曜日(エターナル・サタデー)】。
一瞬、荒野全体が眩い真珠色の光に包まれた。 ユラリアの魔力が大地に浸透し、この地に入った者は「働かなければならない」という強迫観念から解放され、心身ともに最高の休息を得られるという、神さえも驚愕する「超広域・癒やし結界」が完成したのだ。
こうして、かつての死の荒野は、全人類が一生に一度は訪れたいと願う伝説の聖域『ラグジュアリー・ユラリア』へと生まれ変わった。
夕暮れ時。 ユラリアは、究極のベッドに身を沈め、とろけるような意識の中で思った。
(((明日も、明後日も、その次も……。ずっと休み。……最高ね)))
彼女の寝顔は、どの宗教画の聖女よりも幸福に満ちていた。 これが、後に語り継がれる「絶対働きたくない令嬢」が、世界を救い(サボらせ)、最強の聖域を築き上げた第一章の幕切れであった。
聖域の境界線で、一国の宰相ともあろう老人が地面に額を擦り付けていた。 その後ろには、かつてユラリアを「無能」と蔑んだ文官たちが、ボロ雑巾のような顔で列をなしている。
王都は今、完全なる機能不全に陥っていた。 ユラリアが指先一つで管理していた地脈の防衛結界は霧散し、街道には魔獣が溢れ、農作物は枯れ果てた。さらに、彼女が無意識に調整していた国家予算の計算式をリリアンが書き換えたせいで、国庫は一夜にして破綻寸前となったのだ。
「リリアン聖女は……リリアン様は、公務の重圧で『お腹が痛い』と引きこもってしまわれました! ジークフリート殿下も、氾濫した魔獣に追い回されて腰を抜かし、寝込んでおります! この国を救えるのは、貴女様しかいないのです!」
必死の訴え。だが、邸宅のバルコニーに立つユラリアは、耳を塞ぎたいほどに面倒そうな顔をしていた。
(((……嫌よ。せっかく退職できたのに、わざわざ再就職しに戻るバカがどこにいるのよ)))
ユラリアは、シャドウが時空を超えて持ってきた最高級の「完熟マンゴープリン」をスプーンで掬いながら、冷淡に言い放った。
「お引き取りください。私は今、人生で最も重要な『食後の昼寝』の準備で忙しいのです」
「そんなっ! 国民を見捨てるのですか!? 貴女には公爵令嬢としての責任が――」
言いかけた宰相の言葉を、アルベルト公爵の鋭い抜刀音が遮った。
「責任だと? 彼女をゴミのように捨て、死地に追放したのは貴殿らだろう。今さら自分たちの無能を棚に上げ、彼女の安眠を奪おうとは……笑わせるな」
アルベルトの背後で、神龍王へと進化したネロが、一吹きで王都を焦土に変えかねない熱線を喉元に溜めている。
「……ユラリア様が、この地を離れることはない。ここは、彼女がその尊い休息によって守り抜いた『唯一の安息の地』なのだからな」
宰相たちは、アルベルトとネロの威圧感に気絶し、シャドウの影魔法によって「まとめて王都の城門前までポイ捨て」された。
静寂が戻った聖域。 ユラリアは、マンゴープリンを完食すると、幸せな溜息をついた。
「……ねえ、アルベルト様、ネロ、シャドウ。私、気づいたんだけど」
「はっ、何なりとお申し付けください、我が主」 「お湯加減でしょうか、お嬢様?」
「この場所、広すぎるわ。……誰にも邪魔されないように、もっと『怠惰』を極められる場所にしたい。……そうだ、この荒野全体を、私の『庭』にしちゃいましょう」
ユラリアは、手に持っていたスプーンを軽く振った。 【世界改変:永劫なる土曜日(エターナル・サタデー)】。
一瞬、荒野全体が眩い真珠色の光に包まれた。 ユラリアの魔力が大地に浸透し、この地に入った者は「働かなければならない」という強迫観念から解放され、心身ともに最高の休息を得られるという、神さえも驚愕する「超広域・癒やし結界」が完成したのだ。
こうして、かつての死の荒野は、全人類が一生に一度は訪れたいと願う伝説の聖域『ラグジュアリー・ユラリア』へと生まれ変わった。
夕暮れ時。 ユラリアは、究極のベッドに身を沈め、とろけるような意識の中で思った。
(((明日も、明後日も、その次も……。ずっと休み。……最高ね)))
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