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「書類全て確認できました。そして次はこちらの書類に目を通していただきたいのですが…」
そう言ってソン殿が机に並べたのは、正室選考に残された6人の妃の情報が書かれたものでした。
本来の予定では領地にいる一か月の間に情報を送ってくださるはずだったのですが、妃選定が難航し本日まで情報の用意が間に合わなかったそうです。
「ありがとうございます。拝見させていただきます」
そこに書かれていた情報によると、正室選考に残ったのは旧後宮体制で上級妃10人の中から選ばれていたようでした。シュタイン公爵家の息がかかっている妃が4名、フリッツ派が1名、中立の立場である妃が1名という形のようです。そして旧体制の時に利用していたのと同じ宮を使用するとのことでした。
「この資料を見ますと下級妃である私の選出はかなり不自然ではございませんか?」
「本当は中級妃の中からも2人ほど選出する予定でしたが、適任がおらずこのような形となりました。ミミ様の選出に関しては大きな反発はなかったとお伺いしました。そもそも王太子様がお渡りになった宮は旧ユリ宮のみでございます。そのため反対する大臣も少なく簡単に決まったとのことでした。」
王太子様のお渡りがここまで少なかったとは思いもしませんでした。目立たず行くつもりがこれからかなり難しい立場になることが予想されます。馬車での楽しみな気持ちは一気に冷め、かなり不安になってきました。
「シュタイン公爵家の方々から見ると、伯爵令嬢が一人入り込む程度は問題がないと認識されているのかもしれません。ただ大臣からの反発はございませんでしたが、他の正室選抜者からの心証はあまり良くないものなのかもしれません。」
「そちらの認識は間違っていないと存じます。こちらからは信頼できる者を選抜させていただいておりますが、警戒は怠らないようにお願いいたします。このような危険なことに巻き込むこととなってしまい申し訳ございません。王太子様の名代として深くお詫び申し上げます。」
「頭を上げてください。こちらも王太子様にはご迷惑お掛けしていますし…何か手伝えることがあれば頼りないかもしれませんが、この一年間全力でお力添え致します。」
「そのように言っていただけて心強いです。これまで王太子様の味方は後宮にはいらっしゃらなかったですから。」
そういってソン殿は少し嬉しそうな表情をされていました。その後今後の立ち回りについて作戦会議を致しました。
「基本的に他の宮様に関わる必要はございませんが、茶会などのお誘いがあった際は先ほどの資料を参考にして欲しいとのことでした。」
「承知致しました。」
「それとこれからお名前の呼び方は宮の名前となります。そのためこれからは私どももミミ様のことをグロッサム様と呼ばせていただくこととなります。ご承知おきください。」
なんだか他人の名前のように感じますが、これから頑張って慣れていかなければ。
ソン殿が王太子宮に下がったあと、私は気持ちの切り替えをしようとグロッサム宮探索をしました。
基本的に上級宮は3棟から成り立っており、本館、メイド館、そして食料などの保管をする倉庫という成り立ちのようです。本館とメイド館、メイド館と倉庫がわたり廊下でつながっており、基本的に妃は本館のみの利用となるそうです。また上級宮には小さな図書室がありそこに貯蔵されている本は自由に読むことができ、それでも足りない場合は王宮図書館から本を借りることができます。
宮は人の出入りが制限されており、親族であっても申請を出さないと出入りはできないようです。
また妃も許可が無ければ帰省はできず、宮から出るのはパーティーやお茶会の時のみです。旧体制ではここまで制限されていなかったのですが、正室選抜をするに当たって余計な揉め事が起きないようにするための配慮だと伺いました。
少し窮屈な1年間になりそうだと思ったと同時に、これは学習のチャンスだとも感じました。
この役目が終わり、領地に戻った後も、養子のままだと旦那様はおっしゃった。そのためメイドの仕事はもうさせてもらえない。これまではメイドとしてのキャリアについて考えてきましたが、今回のお役目で妹の学費の目途もつきましたし、今からは貴族としてのライフプランについて考えていかなければいけません。
そこで私にはひそかに考えていたことがありました。それは、お嬢様の研究所助手になり、二人で領地の発展に寄与していくことでした。今までは学がなく、お野菜の感想を言うことしかできませんでした。しかしこの時間を利用し農学についての基礎知識を身につけることができれば、お嬢様の助手までは行けなくとも、何かお手伝いができるようになるかもしれません。
宮の出入りする人間は厳しく制限されますが、教師を雇うことはできるはずです。カナに頼んで申請をしなくては。
宮を出た後の未来に思いを馳せるとなんだかわくわくしてきました。
そう言ってソン殿が机に並べたのは、正室選考に残された6人の妃の情報が書かれたものでした。
本来の予定では領地にいる一か月の間に情報を送ってくださるはずだったのですが、妃選定が難航し本日まで情報の用意が間に合わなかったそうです。
「ありがとうございます。拝見させていただきます」
そこに書かれていた情報によると、正室選考に残ったのは旧後宮体制で上級妃10人の中から選ばれていたようでした。シュタイン公爵家の息がかかっている妃が4名、フリッツ派が1名、中立の立場である妃が1名という形のようです。そして旧体制の時に利用していたのと同じ宮を使用するとのことでした。
「この資料を見ますと下級妃である私の選出はかなり不自然ではございませんか?」
「本当は中級妃の中からも2人ほど選出する予定でしたが、適任がおらずこのような形となりました。ミミ様の選出に関しては大きな反発はなかったとお伺いしました。そもそも王太子様がお渡りになった宮は旧ユリ宮のみでございます。そのため反対する大臣も少なく簡単に決まったとのことでした。」
王太子様のお渡りがここまで少なかったとは思いもしませんでした。目立たず行くつもりがこれからかなり難しい立場になることが予想されます。馬車での楽しみな気持ちは一気に冷め、かなり不安になってきました。
「シュタイン公爵家の方々から見ると、伯爵令嬢が一人入り込む程度は問題がないと認識されているのかもしれません。ただ大臣からの反発はございませんでしたが、他の正室選抜者からの心証はあまり良くないものなのかもしれません。」
「そちらの認識は間違っていないと存じます。こちらからは信頼できる者を選抜させていただいておりますが、警戒は怠らないようにお願いいたします。このような危険なことに巻き込むこととなってしまい申し訳ございません。王太子様の名代として深くお詫び申し上げます。」
「頭を上げてください。こちらも王太子様にはご迷惑お掛けしていますし…何か手伝えることがあれば頼りないかもしれませんが、この一年間全力でお力添え致します。」
「そのように言っていただけて心強いです。これまで王太子様の味方は後宮にはいらっしゃらなかったですから。」
そういってソン殿は少し嬉しそうな表情をされていました。その後今後の立ち回りについて作戦会議を致しました。
「基本的に他の宮様に関わる必要はございませんが、茶会などのお誘いがあった際は先ほどの資料を参考にして欲しいとのことでした。」
「承知致しました。」
「それとこれからお名前の呼び方は宮の名前となります。そのためこれからは私どももミミ様のことをグロッサム様と呼ばせていただくこととなります。ご承知おきください。」
なんだか他人の名前のように感じますが、これから頑張って慣れていかなければ。
ソン殿が王太子宮に下がったあと、私は気持ちの切り替えをしようとグロッサム宮探索をしました。
基本的に上級宮は3棟から成り立っており、本館、メイド館、そして食料などの保管をする倉庫という成り立ちのようです。本館とメイド館、メイド館と倉庫がわたり廊下でつながっており、基本的に妃は本館のみの利用となるそうです。また上級宮には小さな図書室がありそこに貯蔵されている本は自由に読むことができ、それでも足りない場合は王宮図書館から本を借りることができます。
宮は人の出入りが制限されており、親族であっても申請を出さないと出入りはできないようです。
また妃も許可が無ければ帰省はできず、宮から出るのはパーティーやお茶会の時のみです。旧体制ではここまで制限されていなかったのですが、正室選抜をするに当たって余計な揉め事が起きないようにするための配慮だと伺いました。
少し窮屈な1年間になりそうだと思ったと同時に、これは学習のチャンスだとも感じました。
この役目が終わり、領地に戻った後も、養子のままだと旦那様はおっしゃった。そのためメイドの仕事はもうさせてもらえない。これまではメイドとしてのキャリアについて考えてきましたが、今回のお役目で妹の学費の目途もつきましたし、今からは貴族としてのライフプランについて考えていかなければいけません。
そこで私にはひそかに考えていたことがありました。それは、お嬢様の研究所助手になり、二人で領地の発展に寄与していくことでした。今までは学がなく、お野菜の感想を言うことしかできませんでした。しかしこの時間を利用し農学についての基礎知識を身につけることができれば、お嬢様の助手までは行けなくとも、何かお手伝いができるようになるかもしれません。
宮の出入りする人間は厳しく制限されますが、教師を雇うことはできるはずです。カナに頼んで申請をしなくては。
宮を出た後の未来に思いを馳せるとなんだかわくわくしてきました。
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