ただ帰りたいはずだったのに、私は壊す者になった

第14話『力の真実と、新たな可能性』

第14話『力の真実と、新たな可能性』
【1. 魔力の検証】
　森の端でティオは目を閉じ、静かに魔法陣を展開した。
幾何学模様が淡い光を放ち、空気がかすかに震える。
やがて周囲に無数の粒子が浮かび上がり、夜空に散る星のように規則正しく並んでいく。
その一部が大きく歪んでいた。
湿った土の匂いが立ち上り、風が粒子を小さく揺らす。

「これは『空間読解術』。残された魔力を読み取れる」
「……どういうこと？」
　ティオは視線を歪みに向けたまま、ゆっくりと答えた。
「ハルカの魔力が空間に干渉したんだ。『安心できる場所へ行きたい』という強い想いが、この森を呼び寄せた」
（私が……無意識に？）
【2. 力の真実】
「ハルカの力は壊すだけじゃない。強い想いに反応して、現実を作り変える」
「危険でもある。でも同時に希望だ。人を想えば、壊す力は守る力にもなる」
　ティオは枝を拾い、指先で小さな光を灯す。
その光は淡く揺れ、彼の横顔を照らした。

晴歌は黙っていた。ただ胸の奥に、言葉にならない小さな怖さが残った。
けれどその声には、不思議と安心も混じっていた。

「魔力は心を映す鏡。川の流れのようなものだ。澄めば光を映し、濁ればすべてを壊す。あるいは、嵐となって大地を裂くことも、雨となって芽を育てることもある」
　その言葉に、晴歌の胸にひとすじの光が差し込んだ。
【3. 未来への可能性】
「ただし、注意も必要だ。ハルカの力は、やがて大きな現象を呼ぶ。遠くを繋ぐダンジョンが自然に生まれるかもしれない」
「……そんなこと、あり得るの……？」
「制御できれば、人を繋ぎ、失われたものを取り戻す力になる」
　ティオの瞳は真剣だった。
　晴歌は小さく息をのみ、うつむきながらつぶやいた。
「まだ……信じられない」
「ハルカがここに来られたのが何よりの証拠だよ。自分を救えた力なら、きっと他の誰かも救える」
【4. 新たな理解】
「力を使うとき、一番大切なのは『なぜ』使うか。怒りで使えば破壊、愛で使えば創造だ」
　晴歌は深く頷いた。危険でも、想い次第で未来を変えられる力。
「また迷ったら来ていい。森ごと迎えに行くから」
「脅してるの？　それとも励ましてるの？」
「君を大切に思ってるから」
　その言葉に涙がにじみ、晴歌は小さく笑った。
【5.新たな歩み】
　森を出る足取りは来た時よりも軽かった。壊すだけでなく、繋ぐ力もあると知ったから。
（今度リュゼルに伝えたい。そして、いつか陽翔にも）
　空を見上げると、朝靄を透かして光が流れていく。その光は、昨夜見た粒子のきらめきを思わせ、遠い未来を指し示す道しるべのように思えた。晴歌は微笑み、胸の奥に小さな決意を抱いた。