幼なじみと共に異世界転生〜とあるハーレムパーティーでギルド活動録〜

ほとりちゃん

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22.魔王が剣地をさらったわけ

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剣地:マージドイナカ山


 魔王は俺を連れ、かなり遠くまで飛んで行った。ロイボの町外れから飛び始めて、降り立つまで数日はかかったかもしれない。降り立ってしばらく歩いていると、子供みたいなモンスターが魔王を見て、指さした。


「あ! 魔王様だ!」

「おかえりー!」

「ただいまー」


 その後、周りの藁屋根の家から、モンスターのような人が次々と魔王の元へ集まった。


「皆ただいま。我がいない間、大丈夫だったか?」

「はい。魔王大三幹部の皆様が監視していました」

「悪い奴はこなかったよ!」


 なんかのほほんとした雰囲気が流れていたため、俺は驚いていた。

 周りを見ると、魔王が住み着いている割に、周りはさみしいし、禍々しいオーラとかそんなのは感じなかった。

 ゲームだと禍々しそうな雰囲気で、辺り周辺には毒の沼があったりしたけど。


「では我はこやつと共に住処へ戻る」

「はーい」


 やっと会話を終えた魔王は、俺を連れて住処へ行った。城のようなものかと思ったけど、住処というのは城ではなくて掘立小屋のようなものだった。


「皆、ただいま戻ったぞ!」

「お帰りなさいませ、魔王様」

「お疲れ様です」

「食事にしますか? それとも休みますか?」


 中で家事をしていたでかい三人組のモンスターが魔王に向かって返事をした。

 どうやら、さっきのモンスターが言っていた魔王第三幹部って奴らだろう。魔力を察知しなくても分かる。こいつらはかなりの強者だ。


「少し休む。こやつと話がしたいからな」


 魔王は俺を睨み、こう言った。確かに怖いのだが、ところどころ不思議に思うところがある。

 魔王のような大物が、どうしてこんな田舎で住処を作ったのか? どうして強そうなモンスターが周りにいないのか? そして、あの弱そうなモンスターは一体?




成瀬:マージドイナカ山へ向かう車の中


 剣地がさらわれた翌日。私たちは車に乗り込み、マージドイナカ山へ向かった。私たちが剣地奪還を心に決めてやる気に満ち溢れる中、ティーアが話しかけてきた。


「話を聞いて、今からマージドイナカ山に着くまで気を抜かないでほしい」

「魔王が私たちの動きを察している可能性がある。でしょ」


 ルハラがこう言うと、ティーアは頷いた。


「そう。あいつらが何の目的でケンジをさらったか分からないけど、ケンジを取り戻すために私たちが動くと予想している。だから、ロイボの町からマージドイナカ山に着くまで、魔王の手先が襲ってくる可能性があるわ」

「そのモンスターって強いの?」

「この辺の雑魚よりは上……今の私たちの強さが上だと思うけど、大群で襲ってきたらまずいわ」

「雑魚の相手は私に任せて」


 私の声を聞いたティーアは少し考えたけど、こう返事をした。


「そうね。マジックマスターとゼロマジックがあるナルセが雑魚の相手をしてくれるなら安心ね」

「いざとなったら私も戦うわ」


 ヴァリエーレさんが私にこう言った。数が多い時、ヴァリエーレさんがいてくれたらほんと、助かる。


「じゃあ山に着くまで気を抜かないでね!」


 真剣な目で、ティーアがこう言った。




剣地:魔王の部屋


 俺は魔王の部屋……というより掘立小屋から離れた小屋の中にいた。

 魔王の部屋というのだから、とんでもない部屋かと思っていたが、中は水晶玉とベッドとして使われているワラ以外は何もなかった。あるとしたら、小さな窓だけ。


「ここが我の部屋だ」

「は……はぁ」


 魔王の部屋と言っているのだが、中はさっき言った通りろくなものが置いてないし、それに魔王を守るためのセキュリティーのようなものが一切ない。


「これが魔王の部屋……なんですか?」

「そうだ。とにかくその上に座るがいい」


 と、魔王は俺をワラの上に座らせた。で、魔王は俺の膝の上に座った。

 しかもかなり笑顔で。なんかこの展開、ティーアの時と同じだな。ん? おい、ちょっと待て。もしかして。


「あの、どうして俺をさらったのですか?」

「その前に自己紹介をしよう。我はヴィルソル・カリーノ。そなたは?」

「剣地です」

「そうかそうか。これでやっと惚れた相手の名を知ることができたぞ!」


 やっぱり。うすうす感じていたけど、やっぱりこの魔王、俺に惚れていやがった。ナイスフェイスがここまで威力あるとは思わなかった。


「ケンジの活躍はその水晶玉から見ていた。そなたのようなものを旦那にしたら、魔族は安泰じゃ!」

「いや、安泰というかなんというか……その……」

「勇者もそなたに惚れているのであろう? それに、そなたは他にも三人の嫁がいる。全て水晶玉で見ていたからな」

「うっ」


 何もかもお見通しってわけか。俺は少し考え、ヴィルソルにこう聞いた。


「なぁ。どうして俺を婿にしようと考えた? 教えてくれよ」

「性格の良さと強さ」

「ティーアと惚れた理由同じだ」

「何? 勇者と同じ理由だと?」

「はい」

「くっ……ふん。まぁいい。今、そなたは我の旦那様じゃ」


 ヴィルソルは俺に抱き着き、首筋を舐め始めた。うおっ、なんか変な気分。


「とにかく早くそなたと交わり、魔族の未来をつなげたい」

「どうして?」

「魔族は絶滅しかけている。皆、人間共に殺されてしまった」

「何かやらかした記憶はないのか?」

「違う! 人間は……私利私欲のために魔族の地へ攻め込んだのだ。本来魔族は闇の力を持つが、そんなに危険な思考を持たない種族だ。例外はいるが」

「危険な魔族もいる。まぁ、その逆と言えるけど、まともな人間もいるぞ」

「そう。ただ、そなたのような心優しい奴もいることは知っている。我が嫌いなのは、ここから少し離れたシリヨク王国だ。歴代魔王はこの王国を壊滅するため、戦ったのだ。だが、皆打ち倒され、共に戦った魔族も殺された」


 大体だけど、状況は理解した。魔王の住処が寂れているのはシリヨク王国って国のせい。で、強そうなモンスターがいないのは皆殺された。


「今のシリヨク王国は我以上の力を持つ兵器を持っている。戦っても必ず負ける。だから……今は何もせず、魔族安泰のために子孫を作りたいのだ。だから、そなたのような婿が欲しかったのだ! こんなことをしてすまん!」


 魔王も大変だな。未来のために、いろいろ考えなくちゃならない。まだ十四歳の少女なのに。


「分かった。とりあえず成瀬やヴァリエーレさん、ルハラと相談したい」

「誰だ?」

「俺の嫁さんだ」

「そうか。多分ここに到着するのは約二週間後だ」

「そいじゃ……ちょっと俺外出るわ。ふもとの人たちの手伝いでもやっているよ」


 俺はそう言って、外に出た。で、薪割りやワラを編んでいる人たちに話をし、手伝いを始めた。




剣地:マージドイナカ山


 俺がさらわれてから一週間が経過した。この間に村の人たちと打ち解けたし、魔族三大幹部の人とも話をするようになった。

 三大幹部のことを説明すると、俺と同じ身長の人がエイトシター。

 少し細身のある人がドーター。太くてでかく、力のある人がカウモ。皆ヴィルソルを尊敬している。

 俺が村の人の手伝いをしていると、村の子供たちの悲鳴が聞こえた。


「ちょっと行ってくる」

「気を付けて」


 俺は子供のいる場所へ向かうと、へんてこな鎧を着た連中が子供を捕まえていた。


「おいお前ら! 何やってんだこの野郎!」


 俺がこう言うと、連中は笑いながらこう答えた。


「奴隷にするためよ」

「人型モンスターっては珍しい。高く買い取ってくれる」

「お前も人間なら、手伝ってくれよ」


 俺はハンドガンを構え、子供をさらおうとした奴の太ももに向けて弾丸を放った。


「あがっ!」

「今のうちに逃げろ!」


 子供が解放され、泣きながら去って行った。


「あ、待て!」


 逃げる子供の後を追おうとする奴がいたため、俺はそいつの足を打ち抜いた。


「うぎゃっ!」


 そいつはその場に倒れ、足を抱えて転げまわった。残った奴は悲鳴を上げながら、バイクのようなものに乗って逃げて行った。


「ケンジさん!」


 ふもとの人が俺に駆け寄り、声をかけた。


「大丈夫ですか?」

「ええ。それより、あいつらはなんですか?」

「モンスターさらいの連中です。これまで……あいつらは子供たちを奴隷にして売るため、よくここへ襲ってくるのです。魔王様や三大幹部の皆様がいつも応戦しているのです」

「アジトは潰さないのか?」

「はい。そんなことをしたらニュースになり、我々魔族はより厳しい立場になります」


 このことを聞き、俺はあの連中に対し、腹が立ってきた。


「すみません。ヴィルソルに少し出かけてくると伝言してもらえませんか?」

「一体何をするつもりですか?」

「あいつらのアジトをぶっ潰してきます」


 俺はそう言うと、怪我をした人をヴィルソルか三大幹部の人に頼んで捕獲するよう頼んだ後、奴らの残したタイヤの跡を追ってアジトへ向かった。

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