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運動は得意じゃないのですが
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もともと運動は得意じゃない。
そのうえ、大学生の時から10年近く運動らしい運動なんてしていない。
たまにダイエット熱に浮かされた時に走ったり、泳ぐくらい。
それだって、年に数日ってレベル。
おまけに、いま履いている靴は、ムートンブーツ。
飛行機での長距離移動でもラクで暖かいから、冬の海外旅行で欠かせないアイテムだけど、走るのには適していない。
この男の人は、さっきの戦いぶりを見ていても、絶対に運動神経はチートにいいと思う。
走るのも速かった。
比べるまでもなく、私は足手まといになってしまう。
さっきあの場所にいた時は、私も彼も、あの獣に殺される可能性は同じくらいだと思っていた。
獣は目の前にいて、私たちはあの獣を倒さなければ、逃げる術がなかった。
だから彼が獣と戦うって言った時、止めなかった。
だけど今は逃げられる確率が、私と彼ではまったく違う。
男はあのヨーダとかいう獣をあっさり倒していた。
だけどあれが集まってくるというなら、彼にだって危険がないはずない。
男が集まってくるヨーダとの戦いではなく、逃げるという選択をしたのも、複数のヨーダを相手にするのは危険だからだろう。
いま会ったばかりの人に、そんな危険をおかしてまで、自分を助けてとは言えなかった。
ほんとは、言いたかったけど。
この人に置いていかれてあら、私は絶対、あの獣に殺されるよなぁ。
さっきあの獣に食われると思った時の恐怖を思いだすと、今でも体が震えそうだ。
……ほんとは、助けてほしいよ。
だけどそこまで甘えるのはフェアじゃない。
会ったばかりの人で、彼のことはほんの少ししか知らない。
それでも、彼がいい人だという確証があった。
もし私を見捨てることになったら、この人はきっと自分を責める。
彼の知り合いでもなんでもない、ただの通りすがりの私なのに、自分が守れなかったことを責めちゃう人だ。
だけどそんなの、理不尽だ。
私なんかのことで、たまたま居合わせただけの人を煩わせるなんて。
だから私は、この手が、脚が、震えているのを気づかれたくなった。
精いっぱいの強がりで、いざという時は自分を置いて逃げてねときっぱり言う。
だけど、彼はそんな私の精いっぱいの強がりが気に入らなかったらしい。
「ばぁか」
ニヤリと不敵に笑って、私の頭をぽんぽんと叩く。
それは、さっきヨーダと戦う前、私を安心させるようしてくれた仕草と同じだった。
「言っただろ。ヨーダなんて、俺の敵じゃないって。ただ相手が多いと、お前に万が一のことがあるかもしれねぇし、幸いここは街に近い。あいつらは森からは滅多にでないから、一気に森を抜けて、それでも追いかけてきたやつだけを倒す。その前にお前を安全な場所に避難させたいってだけだ」
「安全な、場所?」
「そうだ。俺を信じろ。だいじょうぶ、お前は助かる。見捨てたりなんてしねぇよ」
大きな白い手が、私の髪をなでる。
大らかに笑う彼の顔は自信に満ちていて、私は彼に頼りきってしまいそうになる。
だけど。
「あなたは?」
それを問わずには、いられなかった。
「あなたも、絶対に助かるよね?」
すがるように、彼の目を見つめる。
彼は笑い飛ばそうとしたけど、私が思いつめた顔をしていたからだろう、真面目な顔で言ってくれた。
「約束する。二人とも無事で、逃げるぞ」
そのうえ、大学生の時から10年近く運動らしい運動なんてしていない。
たまにダイエット熱に浮かされた時に走ったり、泳ぐくらい。
それだって、年に数日ってレベル。
おまけに、いま履いている靴は、ムートンブーツ。
飛行機での長距離移動でもラクで暖かいから、冬の海外旅行で欠かせないアイテムだけど、走るのには適していない。
この男の人は、さっきの戦いぶりを見ていても、絶対に運動神経はチートにいいと思う。
走るのも速かった。
比べるまでもなく、私は足手まといになってしまう。
さっきあの場所にいた時は、私も彼も、あの獣に殺される可能性は同じくらいだと思っていた。
獣は目の前にいて、私たちはあの獣を倒さなければ、逃げる術がなかった。
だから彼が獣と戦うって言った時、止めなかった。
だけど今は逃げられる確率が、私と彼ではまったく違う。
男はあのヨーダとかいう獣をあっさり倒していた。
だけどあれが集まってくるというなら、彼にだって危険がないはずない。
男が集まってくるヨーダとの戦いではなく、逃げるという選択をしたのも、複数のヨーダを相手にするのは危険だからだろう。
いま会ったばかりの人に、そんな危険をおかしてまで、自分を助けてとは言えなかった。
ほんとは、言いたかったけど。
この人に置いていかれてあら、私は絶対、あの獣に殺されるよなぁ。
さっきあの獣に食われると思った時の恐怖を思いだすと、今でも体が震えそうだ。
……ほんとは、助けてほしいよ。
だけどそこまで甘えるのはフェアじゃない。
会ったばかりの人で、彼のことはほんの少ししか知らない。
それでも、彼がいい人だという確証があった。
もし私を見捨てることになったら、この人はきっと自分を責める。
彼の知り合いでもなんでもない、ただの通りすがりの私なのに、自分が守れなかったことを責めちゃう人だ。
だけどそんなの、理不尽だ。
私なんかのことで、たまたま居合わせただけの人を煩わせるなんて。
だから私は、この手が、脚が、震えているのを気づかれたくなった。
精いっぱいの強がりで、いざという時は自分を置いて逃げてねときっぱり言う。
だけど、彼はそんな私の精いっぱいの強がりが気に入らなかったらしい。
「ばぁか」
ニヤリと不敵に笑って、私の頭をぽんぽんと叩く。
それは、さっきヨーダと戦う前、私を安心させるようしてくれた仕草と同じだった。
「言っただろ。ヨーダなんて、俺の敵じゃないって。ただ相手が多いと、お前に万が一のことがあるかもしれねぇし、幸いここは街に近い。あいつらは森からは滅多にでないから、一気に森を抜けて、それでも追いかけてきたやつだけを倒す。その前にお前を安全な場所に避難させたいってだけだ」
「安全な、場所?」
「そうだ。俺を信じろ。だいじょうぶ、お前は助かる。見捨てたりなんてしねぇよ」
大きな白い手が、私の髪をなでる。
大らかに笑う彼の顔は自信に満ちていて、私は彼に頼りきってしまいそうになる。
だけど。
「あなたは?」
それを問わずには、いられなかった。
「あなたも、絶対に助かるよね?」
すがるように、彼の目を見つめる。
彼は笑い飛ばそうとしたけど、私が思いつめた顔をしていたからだろう、真面目な顔で言ってくれた。
「約束する。二人とも無事で、逃げるぞ」
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