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魔獣の生体について知りましたが
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確かに、時間がすぎれば消える危険な生物を、わざわざ狩りにいくのはリスクが大きくて成果が小さすぎる。
やりすごせば、相手は消えてくれるのだ。
こちらが犠牲をはらってまで、退治する必要はないのかもしれない。
これが人間のすみかまで襲いに来るような獣なら話は別で、なにがあっても退治する必要があるだろうけど。
魔獣はほとんど森から出てこず、街までくることはまず、ないという。
「月の色が変わると消えるとか、森から出ないとか。魔獣って、不思議な生き物ですね」
「そうだな。ずっとそういう生き物だからだとしか考えてなかったけど、言われてみりゃへんな生き物かもな」
レイも思案するように、うなずいた。
「あぁ、そういやさ。一説によるとよー、魔獣は別の世界から来ているらしいぜ?」
「え?」
ぴたりと足が止まった。
別の世界から、きてる?
あの魔獣が?
魔獣の唸り声や、牙を思い出す。
あの恐ろしい生き物。
あれも、私と同じ、この世界の生き物じゃないの?
もしかすると、自分の世界では平和に暮らしていた?
異世界であるこの場に「なぜか」連れてこられた時から、排除される生き物になってしまったの?
レイは私がなぜ動揺しているのか気づかないらしい。
それでも、私をいたわるように、そっと私の手をにぎり、歩くよう促した。
「街までもうすぐだからよ、頑張って歩けよ」
「はい。えと、じゃなくて。魔獣って、別の世界から来ているんですか?」
気が付くと、街の門はかなり近づいてきていた。
話しながら歩いていると、あっという間だ。
けれど今は、人がたくさんいるだろう街の中に入る前に、魔獣について聞いておきたかった。
「らしいぜー?なんかよぉ、月の色が一定の場合だけ交わってる世界があってよ、そこから来ているって話だ」
レイは軽く答える。
え。もしかして、レイはぜんぜん気づいていないんだろうか?
「あの、それって。魔獣も、私と同じで異世界から来ているってことですよね?」
「は?」
レイは目を大きく見開いた。
そして何度かゆっくりと瞬きをする。
そうしていると、レイはよくできたビスクドールみたいだ。
白磁のような肌の、怜悧に整った美貌のお人形。
話している時はあんなに快活な印象なのに、黙っていると月の光のように静かな雰囲気だ。
これが戦いになると覇気がこもって、またぜんぜん違う雰囲気になるんだよな。
無言のレイに見つめられるのは、居心地が悪い。
握りしめられたままの手のせいで、全身が熱い。
そっと重ねられた手を外そうとすると、レイがぎゅっと手を握り返してきた。
「すまねぇ。ぜんぜん考えてなかったわ」
「あ、はい。そうみたいですね」
私が首肯すると、レイは焦ったようにつづけた。
「いやよー、お前が魔獣と一緒だって言ったつもりはないんだぜ!?」
「はい。レイに悪気がないのは、わかっていますよ」
そりゃ、あの魔獣も別の世界から来てるって聞いたらさ、異世界から来た自分と重なるようで、ちょっと嫌な気分はしたよ。
あの魔獣が「魔獣」って呼ばれるなら、私は「魔人」じゃないのってさ。
この世界の生き物じゃない生き物は「悪」だと断じられているようで、いい気分はしない。
だけどね。
「あんな魔獣は、私の世界にはいませんし。あれらが別の世界から来ているとしても、私の世界とは違うところから来ているんだと思います。だから、私だって、彼らが私と同じとは思ってませんから」
笑って言えば、レイはほっと息を吐いた。
「なら、よかったよ。また考えなしなこと言っちまったって、焦ったぜー」
やりすごせば、相手は消えてくれるのだ。
こちらが犠牲をはらってまで、退治する必要はないのかもしれない。
これが人間のすみかまで襲いに来るような獣なら話は別で、なにがあっても退治する必要があるだろうけど。
魔獣はほとんど森から出てこず、街までくることはまず、ないという。
「月の色が変わると消えるとか、森から出ないとか。魔獣って、不思議な生き物ですね」
「そうだな。ずっとそういう生き物だからだとしか考えてなかったけど、言われてみりゃへんな生き物かもな」
レイも思案するように、うなずいた。
「あぁ、そういやさ。一説によるとよー、魔獣は別の世界から来ているらしいぜ?」
「え?」
ぴたりと足が止まった。
別の世界から、きてる?
あの魔獣が?
魔獣の唸り声や、牙を思い出す。
あの恐ろしい生き物。
あれも、私と同じ、この世界の生き物じゃないの?
もしかすると、自分の世界では平和に暮らしていた?
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レイは私がなぜ動揺しているのか気づかないらしい。
それでも、私をいたわるように、そっと私の手をにぎり、歩くよう促した。
「街までもうすぐだからよ、頑張って歩けよ」
「はい。えと、じゃなくて。魔獣って、別の世界から来ているんですか?」
気が付くと、街の門はかなり近づいてきていた。
話しながら歩いていると、あっという間だ。
けれど今は、人がたくさんいるだろう街の中に入る前に、魔獣について聞いておきたかった。
「らしいぜー?なんかよぉ、月の色が一定の場合だけ交わってる世界があってよ、そこから来ているって話だ」
レイは軽く答える。
え。もしかして、レイはぜんぜん気づいていないんだろうか?
「あの、それって。魔獣も、私と同じで異世界から来ているってことですよね?」
「は?」
レイは目を大きく見開いた。
そして何度かゆっくりと瞬きをする。
そうしていると、レイはよくできたビスクドールみたいだ。
白磁のような肌の、怜悧に整った美貌のお人形。
話している時はあんなに快活な印象なのに、黙っていると月の光のように静かな雰囲気だ。
これが戦いになると覇気がこもって、またぜんぜん違う雰囲気になるんだよな。
無言のレイに見つめられるのは、居心地が悪い。
握りしめられたままの手のせいで、全身が熱い。
そっと重ねられた手を外そうとすると、レイがぎゅっと手を握り返してきた。
「すまねぇ。ぜんぜん考えてなかったわ」
「あ、はい。そうみたいですね」
私が首肯すると、レイは焦ったようにつづけた。
「いやよー、お前が魔獣と一緒だって言ったつもりはないんだぜ!?」
「はい。レイに悪気がないのは、わかっていますよ」
そりゃ、あの魔獣も別の世界から来てるって聞いたらさ、異世界から来た自分と重なるようで、ちょっと嫌な気分はしたよ。
あの魔獣が「魔獣」って呼ばれるなら、私は「魔人」じゃないのってさ。
この世界の生き物じゃない生き物は「悪」だと断じられているようで、いい気分はしない。
だけどね。
「あんな魔獣は、私の世界にはいませんし。あれらが別の世界から来ているとしても、私の世界とは違うところから来ているんだと思います。だから、私だって、彼らが私と同じとは思ってませんから」
笑って言えば、レイはほっと息を吐いた。
「なら、よかったよ。また考えなしなこと言っちまったって、焦ったぜー」
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