異世界で(口の悪い)騎士様に拾われたのですが

木村 真理

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ドレスの色は、ただ好きな色だから選んだだけなんですが

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 レイとオサドさんが部屋から出ていくと、少しだけお洋服屋さんの女の子たちの空気が緩んだ。

「次は、こちらのドレスでございますね」

「えぇ。それをお願いするわ」

 まずはすみれ色のドレスを脱ごうと、後ろにずらっとならんだボタンをはずしてもらう。
 で、ピンクのドレスに着替える。
こっちは前に隠しボタンがあるタイプ。
これなら自分でも着られそうなのが、ポイント高いかも。

 鏡を見せてもらうと、こちらもいい感じに似合っている、と思う。

「ドーンピンクがお似合いですね」

「ドーンピンク?」

 鏡を見ながら、リーダーっぽい人が聞きなれない名前を言う。
首をかしげてきくと、

「夜明けの空の、やわらかいピンク色のことですわ。やわらかな雰囲気が、美咲様にとてもお似合いだと思います」

「そう……」

 ドレスの胸元をなんとなくさわりながら、あらためて鏡を見る。
好きな色だと思ったけど、ふつうにくすみピンクだと思ってたよ。
夜明けの空の色だと言われると、なんかいい感じな気がする。
あと、好きな色が似合ってるって言われるのは、嬉しいな。

「あ、もちろん、先ほどのすみれ色もお似合いでしたが……!」

「え? ああ、ありがとうございます」

 内心でにやにやしていたら、焦ったようにリーダーさんが追加で褒めてくれた。
いやべつに、「これが似合ってるって言われたけど、さっきのはどうだったの」とか思ってたわけじゃないんだよ。

 にやつくのはよくないと思って、おすまししているだけなんだけど。
さっきあんなことがあったばかりだ。
愛想よくにこにこ全開にしてるほうがいいのかな。

「どちらも好きな色なので、似あっているって言っていただいて嬉しいです」

「恐れ入ります。美咲様は、象牙のような美しいお肌をされていますが、どちらもそれに映えるお色味だと思います」

 象牙のような、かぁ。
こっちの人は、お国柄か、世界的になのかはわからないけど、肌の色が白い。
使用人さんたちは日に焼けた色だけど、私の肌の色とは基本が違う感じ。
 だからドレスとかも似合う色とか違うんだろうなと思うけど、髪や目の色がバラエティにあふれているせいか、以外に私に似合う色味もありそうだ。
 というか、今まで肌の色でびっくりされることもなかったし、私が見たことないだけで、この世界にもアジア人っぽい見た目の人はいるのかも。
 あらためて、自分がこの世界のこと、なにも知らないんだなぁって思う。

「……そういえば、先ほどのドレス。レイモンド様にご感想をいただいておりませんでした!」

 鏡にうつる私を見ていたリーダーさんが、はっとして叫んだ。

「あぁ、そうですね」

 いちおうさっきのドレスも、レイに見てはもらったことになるのかな。
でも、あんな状況じゃ、ドレスどころじゃないよね。

「いちおう見てはいただいたし、感想なんていいですよ」

 だって感想って、ねぇ。
こっちの世界的にナシって感じなら、きっとこのお洋服屋さんたちが止めてくれるはずだ。
それがないってことは、自分が気に入るかどうかが選ぶ基準になるんだろう。
 スポンサーであるレイの意見もきくけど、この量のドレスの感想をいちいち聞かれてもレイだって困るだろう。

 と、ふんわりと言う。
するとリーダーさんは、申し訳なさそうに言った。

「でも、あのすみれ色のドレスは、レイモンド様の瞳の色に似た色だからお選びだったのでしょう? レイモンド様も嬉しそうにされていましたし。好きな方の色のドレスを選ぶというのは、伝統的な好意の示し方ですし」

「えっ。そうなんですか? あの、あのドレスを選んだのは、自分の故郷で持っていたドレスに似ていたので、馴染みがあったからなんです。……もちろん、今日着せていただいたドレスほど、素敵なものではなかったのですけど」

 あのドレス、そんな意味で選んでないよ!
言われてみれば、そういう話、確かに異世界転生ものの小説とかで読んだことがある。
でもレイの瞳の色はかなり薄い色の紫で、あのドレスは濃い目の紫だった。
一緒の色、なんて意識はしてなかったんですけど……!
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