異世界で(口の悪い)騎士様に拾われたのですが

木村 真理

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結界なんて、ファンタジーだと思いますが

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 レイに連れられて行ったのは、書斎っぽい部屋だった。
ここには、ふたりきりだ。
それだけ大切な話なんだろう。
メアリーも、この部屋には入れず、私の部屋に帰された。

 この部屋は、ふだんレイが仕事で使っている部屋らしい。
部屋の三方が天井まである本棚で、びっしりと本がつまっている。
扉から見て奥のほうに大きな机がひとつあり、レイはその後ろにあるどっしりとした椅子に私を座らせようとした。

「え。この椅子は、この部屋の主のものでしょう?」

 部屋には、他に背もたれのない簡単な椅子が一脚、机のわきにある。
あと、扉のほうにソファもある。

 ソファだと話をするのに離れすぎているというのなら、背もたれのない椅子に座ってもいい。
こんな主然とした椅子にひとり座らされるよりはマシだ。

「いや、長くなるかもしれないから」

 レイはそう言って、私をどっしりした椅子に座らせようとする。
けれど、私は先に背もたれのない椅子に座って、譲らないぞとばかりにレイを見た。

 レイは困ったように頭をかき、あきらめてどっしりした椅子に座る。

「んー…。じゃぁ、簡単に説明するからな。気になることがあったら、言えよー」

「うん。お願いします」

 私はうなずいて、真剣な顔で言う。

「さっき、仕立て屋の女がひとり、美咲の部屋で壁に飛ばされただろ。あれは、美咲に嫉妬したからなんだ」

「うん……?」

 さっぱりわかりませんけど。
私が首をかしげてうながすと、レイは恥ずかしそうに言う。

「基本的に、この家自体、結界を張ってるんだよ。危険なことがおこらないように、この家の主一家に敵意を持つ人間には入れないようになってる。これは貴族の家なんかだと、だいたい施されてる処置なんだけどよ……。美咲の世界にはなかったんじゃねーかなと思って」

「はい。そもそも結界自体が、空想上のものでしかなかったです……」

 ちょっと待て、ファンタジー!
ここでも、なの?
 いや、月が違うとか、癒し人とかいるなら、他にも要素があってしかるべきですよね。
魔力とかも、こっちにはあるんだし……。

「かなぁと思った。結界は、基本、魔力で張るもんだからよー……」

「なるほど。……あれ、でも。さっきの女の子は、私に嫉妬したって……」

 頭の中で整理しながら、はたと気づいた。
主一家に敵意を持つ人間をはじく「結界」が、私に嫉妬する女の子を排除しようとした。
それって、つまり、私を「主一家の人間」だと結界が判断したってことで。

 レイが、さっきから恥ずかしそうにしている理由がようやくわかったと思って、私も顔を赤くした。

「それってつまり、結界の設定的なものの主一家の人間として、私のことも入れてくれたってことなの?」

 だけどレイは、ますます恥ずかしそうに首を横に振った。

「いや……。美咲がなにを想像してるかわかんねーけど。結界には、設定とかは厳密にはねーんだよ。ここの屋敷だと、俺と姉と弟が『身内』だと思ってる人間を、結界が判断して『一家』にカウントしてるんだ。ここで働く使用人たちも含めて、な。で、その強さも、結界が俺たちの思考を読み取って、勝手に設定してるっつーか」

「えっと。なるほど? たとえばここで働いているメアリーさんとかも、レイの『身内』に入るわけですか?」

「そうだな。使用人も、身内にカウントされてる。だからここで働くやつに危害を加えようとした人間も、この屋敷に入れなかったりする。つっても身内同士でゴタつくこともあるし、使用人相手だと、本気で犯罪になるような危害を加えるつもりでもないかぎり、はじかれることはねぇんだけど」

 なるほど。
つまり、結界があの女の子をはじいたのは、レイの意識を読み取って、勝手に設定したせいで。
ふつう使用人さんたちに対してなら、犯罪レベルの危害を加えようとしないとはじかれることはないのに、私に嫉妬しただけで、あの女の子ははじかれたってことは。

 なんか、めちゃくちゃレイに愛されてるっぽい……?
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