異世界で(口の悪い)騎士様に拾われたのですが

木村 真理

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Side キリ 3

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 オサドさんは、クリスとケイトを下がらせると、さっそくブロッケンシュタイン家にお持ちするものを用意し始めた。
 用意するのは、ドレスから部屋着まで、フォーマル度もテイストもばらばらの服を大量に。
それに、靴やバッグ、帽子やアクセサリー、下着や寝間着まで、オサド商会が扱うすべての品目の商品を多種多様に集めました、といわんばかりの量だ。

 今までも、いろいろな貴族のお家に大量のドレスをお持ちしたことはある。
お嫁入りのためなんかだと、それはもうたくさんのドレスや服飾品をお持ちすることはある。
それでも、今回ほどいろいろな種類、たくさんの量の品を一度にお持ちしたことはなかった。

 用意されたのは、一流のものだけでなく、部屋着などは、それより少し劣る品質のものもあった。
もちろんオサド商会が扱うものだから、それなりのものではあるけれど。
ブロッケンシュタイン家にお持ちするのに何故かと考えていると、手伝いに来てくれていたカミラさんがこっそり教えてくれた。

「ご婚約者様が、今までどのような境遇であられたかわからないでしょう? 場合によっては、あまり高級な品ばかりだとくつろげないと感じられるかもしれないからよ」

 言われてみれば、当たり前のことだ。
けれど、私はぜんぜんそのことに思い当たらなかった。

 癒し人の伴侶は、身分などに関係なく選ばれる。
そう知ってはいても、癒し人なんてそうそういるものじゃない。
貴族には多いそうだけど、この領の癒し人なんて、レイモンド様とお姉さまであるダイアモンド様だけだ。
ブロッケンシュタイン家下についているこの領の他の貴族様たちにも、ひとりもいない。

 だから、レイモンド様のお相手がどのような階級の方なのかわからないまま、無意識に貴族の令嬢を想定して用意しようとしていた。
 貴族の結婚相手は、貴族。
癒し人以外なら、それが「ふつう」だし、癒し人だって貴族ならお相手も貴族を選ぶことが多いと思う。
そもそも知り合う機会が多いだろうし、結婚するとなると知識の違いや考え方の違いだってあまりに違いすぎると、なかなか親しくなりにくいだろうし。

 オサドさんにリーダー役に選ばれて喜んでいたけど、わたしなんてまだまだだ。
カミラさんたちベテランの商会員が今回お店で待機になったのは、オサドさん不在の中で、ご予約のお客様への対応を完璧にするためだ。
レイモンド様からも、無理な時間にお願いするのだし、婚約者様はマナーにうるさい方ではなく、むしろ親しみやすい雰囲気の人間のほうが喜ぶだろうから、ベテランの商会員でなくてもよい、とお言葉があったそうだ。
 それでオサドさんは、私たち若手の商会員の中から、今回同行する人間を選んでくれたのだ。
そこには、私たちに経験を積ませてくれようとする心遣いと、ご婚約者様の心をつかもうとする考えがあるのだろう。

 そう思うと、クリスとケイトのことが、苦々しく思い出された。
顔には出していないつもりだったのに、お持ちするドレスの点検をしていたカミラさんに、また助言をもらってしまった。

「キリ。あなたが仕事に熱心なのは知っているけど、すべての商会員が同じ熱量で働いているとは思わないようにしなさい。ここで働く理由がお金のための子もいれば、結婚相手を探したいからという子もいる。でも、仕事にはみんな熱心でしょう」

「でも、あの二人は。オサドさんに禁止されていたのに、レイモンド様に恋心を抱いていたんですよ」

「それを正直に告白して、同行を断ったのでしょう? それって、すごいことなのよ。誰だってかなわない恋の話を人にするのは辛いものよ。それなのに職場のみんなの前で打ち明けた。仕事の査定にも響くでしょうに。自分の気持ちよりも、同行して結界に阻まれて、あちらにこの商会ごと不信を抱かれないように告白したのよ」

 


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