異世界で(口の悪い)騎士様に拾われたのですが

木村 真理

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Side キリ 10

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 しかもこの日の夜、美咲様を害する意識があったとしてブロッケンシュタイン家にとどめられていたリジーが、無事に帰ってきたのだ。
 そしてなぜか、やたらきらきらした表情で言った。

「今までお世話になりました。…このような騒動を起こした以上、ここでこのまま働くわけにはいきません。私はここを辞職いたします」

 オサドさんとしても、リジーの申し出は納得いくものだったのだろう。
 美咲様はオサド商会に対して好意的な態度を示してくださったけれど、レイモンド様がどのようにお考えかはわからない。
お話に聞く他領の領主のように、「全員牢屋にいれろ!」なんてことにはならないだろうけど、商会ごと館への出入りは禁じられても不思議はない。
 このまま張本人であるリジーを雇い続けることは、オサド商会としてはありえない選択肢なのだろう。

 それに、リジーの実家は裕福で、リジーがここで働いているのも、花嫁修業のためだ。
実家に帰したところで、罪悪感もない。
 そう思ったのだが……。

「わかった。それで、今後はどうするつもりだ? 実家に帰るのか?」

 オサドさんが尋ねると、リジーは輝かんばかりの笑顔で言った。

「それが、美咲様のメイドになることになりました」

「どういうことだい?」

 オサドさんは戸惑いを隠さずに、リジーに尋ねた。
リジーはサバサバと、

「実は私、実家の両親とは折り合いが悪いんですよね。母がなくなってすぐ、同じ歳の腹違いの妹と元愛人が入り込んできたんで。父は義母に頭が上がらなくて、私への嫌がらせも無視。このままだと、へんなおじさんと無理矢理結婚させられそうだと思って、花嫁修業と称して無理矢理、ここで働かせてもらいにきたんですけど」

 私たちは、言葉もなかった。
初めて知るリジーの家庭環境も、衝撃的だった。
良いところのお嬢様だから苦労なく生きてきたんだろうと思っていたのに、この感じでは、相当な苦労をしてきたんだろう。

 それに、リジーの話し方や態度が、これまでとはぜんぜん違っていた。
今までのリジーは大人しくて夢みがちな子で、ふわふわと現実と夢の境のような戯れ言を語ってばかりいた。
こんなふうにきっぱり、自分のことを言うところも見たことがなかった。
なのに、急に別人のように、しっかりとした目付きで、きびきびと言う。

 いったいブロッケンシュタイン家で、なにがあったんだろう。
すこし怖くなりながらリジーを見ていると、リジーは照れたように笑った。

「取り調べの結果、美咲様がおとがめなしで帰してあげてって言ってくださったそうなんです。でも、このままオサド商会では働けませんし、家に帰るのは嫌だ、いっそこのままこのお城の牢に入れてくれって泣きわめいていたら、美咲様がお口添えしてくださって」

 リジーは、さっきのオサドさんのように、美咲様に心酔した顔をしていた。

「といっても、美咲様のメイドの方の下働きなんですけど。監視をかねて、なんて言い訳をつけてまで、庇ってくださったんです……!」

 美咲様は、そんなにお優しくてだいじょうぶなんだろうか。
 でもこのリジーやオサドさんの心酔ぶりを見ていると、だいじょうぶだろうとも思う。
 とはいえ、リジーのほうは先ほども急に美咲様に敵愾心を抱いたみたいだし、油断は禁物かも。

 私も周囲に目を配って、美咲様が危険な目におあいにならないように気を付けよう……!
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