乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、この恋は諦められません

木村 真理

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艶のある金の髪を、ゆっくりと撫でる。
腕の中の少女が愛しくて、彼女が自分の腕の中にいることが嬉しくて、時間を忘れてしまった。

気が付くと私の肩に頬をよせていたリアは、眠ってしまったらしい。
すぅすぅとかわいい寝息が、耳をくすぐる。

ずっとこのままでいたいが、理性がもちそうにない。
リアを起こさないようにそっと抱き上げて、ベッドへと運んだ。

ベッドにリアの体を横たえると、シーツに金の髪が広がる。
ささやかなリアの胸は、呼吸とともに上下する。
ふっくらとした小さな唇は、ついばまれるのを待つかのようにすこし開いていて、私の理性をぐらぐらと揺さぶる。

とつぜんリアが倒れた昨夜は、リアの体調が心配すぎて、枕元に一晩つめていても欲情などわかなかった。
が、先ほどの元気そうなリアを見て安心したとたん、これだ。

美しくかわいいリア。
この手の中に閉じ込めてしまえればいいのに。

努力家の彼女を愛しているのに、ときおりそう思ってしまう。
他の誰にも会わせず、リアの世界が私だけになればいいと。
もちろんそんなことをすれば、リアが萎れてしまうだろうからしないけれど。

後ろ髪をひかれる思いで、リアの部屋を後にする。
そのまま向かったのは、ハッセン公爵の執務室だ。

「リアの容体はどうだい?」

ハッセン公爵は、からかうように私に尋ねる。

「一度目を覚ました時は元気そうでしたが、すぐに眠ってしまいました」

先ほどの欲望を隠して、端的に答える。
ハッセン公爵はすこし眉をあげ、楽しそうに唇を歪めた。

「今日のリーリアの予定は?」

「エミリオにこの家を案内するために、リアも私もスケジュールは空けていました。エミリオを案内するのは私だけでも事足りますし、今日はリアは休ませましょう」

「そうだな。あの子が倒れるなんて、初めてのことだ。大事をとるほうがいいだろう。とはいえ、ガイにとっては幸いだったかな。エミリオとリーリアを近づけなくてすむ」

冗談のようにハッセン公爵は言う。
が、その眼差しは厳しい。
私がさりげなくリアに、エミリオと距離をおくよう誘導していたことは、お見通しらしい。

エミリオを養子にと望んだハッセン公爵からすれば、私の言動は彼に逆らうものだた思われても仕方ない。
私は、次期ハッセン公爵の地位を狙っている。
だから私の未来を握っているハッセン公爵に逆らうつもりはない。
だが。

ハッセン公爵が新たに養子を迎えると聞いた時から、私は不安だった。
自分の能力が次期公爵として足らないとは思わない。
自分の実力にも努力にも、自負がある。
いくらエミリオの魔力が強いとはいえ、急に公爵家に迎えられた人間に負けるつもりはない。

……けれど、リアのことは別だ。

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