秘密の生徒会室 君とふたりきり

むらさ樹

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ふと、桐生君は書いていた手を止めた。

「終わったの?」

「いや」

「?」

桐生君は机に置いていたフラットファイルから、何か別の書類を取り出した。
何だか見た事あるような文面…

…あ、わたしが書いた教師選択システムの提案書だ。

もしかしてわたしが副会長辞めるからって、提出したのを取り戻してきたのかな。或いは採用されなかったとか…
まぁ今となっては、どっちでもいいんだけど。


「あのね、桐生君…。
今日は話さなきゃならない事があるんだけど…」

「オレもあるよ。
だけど、その前に…」

「きゃ…っ」

急に抱き寄せられた身体。
桐生君と密着するわたし。

懐かしい桐生君のぬくもりが、久しぶりにわたしの身体に伝わってきたんだ。

「桐りゅ…っ」

「榊…」

ギュウっと抱きしめられるその感覚に、わたしも少しだけ浸ってしまっていた。


「榊、キスさせて」

「待って、き…
……ぅんっ」

強く抱きしめられた後は、後頭部を掴まれ強引に唇を重ねられた。

ちょっぴり激しい、まるでむさぼられたような強引なキス。


「…んっ…ちょっと…
…苦しいよっ」

「…ぁ」

ようやく解放された唇。
だけど身体は、まだ強く抱き寄せられていた。

「…ごめん。
何か、久しぶりでさ。
我慢出来なくなって…」

胸はドキドキ、顔は熱くなってきた。

わたしだって、本当は嫌じゃない。
もちろんそんな事をするつもりはなかったんだけど、でもやっぱり正直に嬉しかった。

でもね、

「桐生君。
もうね、これで最後だから…。
今日はそれを言う為にここに来たんだよ」

副会長を辞めるだけが理由じゃない。
アンタを守る為にも、わたしは今から大ウソをつかなきゃならないんだからね…っ


腰を抱かれたまま、わたしを離さない桐生君。
わたしだって本当はずっとこうしていたい。

なのに…っ

「も…離してっ」

「ごめん、キツかった?」

桐生君は腰に回した手を少しだけ緩める。

違う。
本当はもっと強く抱きしめてほしい。
でも本心とは反対の事を言わなくちゃならないのよ。

ツラくても、それは今だけ。
今を頑張れば、また何事もなかったかのような毎日が戻るだけ…っ


「いいからっ
離してってば!」

半ば強引に引き離し、突き飛ばすように桐生君を押した。

「わ…っ、榊…っ」

「わたしとアンタはもう生徒会の仲間でなければ友達でもなんでもないの!
もう金輪際わたしには話しかけないで!」

胸が張り裂けそうだった。
桐生君を傷付けるつもりなんてないのに、言いたくもない言葉を吐かなきゃならない。

だけど、一番傷付いたのはわたしなのかもしれない。


「どう…したんだよ、榊」

わたしの発言に、当然桐生君は驚いた顔をした。
わたしだってもし急に桐生君にそんな事を言われたら、驚く以上にショックを受けるかもしれないもんね…。


「コレも、もういらないから返すわ。
…話ってそれだけだから…じゃあねっ」

わたしはスカートのポケットに入れていた生徒会室のカギを取り出すと、机の上に置いた。

そして桐生君の次の言葉も聞かず、わたしは生徒会室を飛び出した。


「榊っ!」




…目頭が熱くなってきた。

気が付くと、わたしの頬には熱い涙が伝っていた。

…ほら、やっぱりこんなに傷付いてた。





階段を一気に駆け下りて、1階と2階を繋ぐ踊場で足を止めた。

ボタボタと大粒の涙が床に落ちていく。

…これで、桐生君との関係も終わったんだ……。





「…へぇ。
言い切ったな」

階段の上から声をかけてきたのは更科だった。
走って飛び出したものだから気付かなかったけど、多分生徒会室のドア付近にいたんだろう。

泣き顔を見られたくなくて、わたしはわざと下を向いたままでいた。

何が言い切ったよ。
アンタのせいでこんな目に合って、ほんっとムカつくっての!


「…これで、いいんでしょ?
これで、黙っててもらえるんですよね…?」


どうせ桐生君との関係はいつか終わると思っていたけど、コイツのせいでこんな事になるなんて夢にも思わなかった。

もう、一生の不覚。
だから…もうわたしは二度と誰にも気を許す事なく、また仮面少女を…


「さてね。
たったあれだけの事でずっと黙ったままでいるなんて、そんな約束出来ないよな」

「な…っ」

なのに更科は、とんでもない事を言い出したんだ。

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