crow〜鴉と裸の彼女

むらさ樹

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午前10時



繁華街からそれた細い道を少し行った先にあるラブホの前が、待ち合わせ場所だった。









ホストクラブで働くようになって、まだ1年。


源氏名は、クロウ。


ポツリ ポツリと指名を受けるようになったものの、まだまだ売り上げトップ3までの道のりさえもほど遠い。


時には指名もなく、一日お茶で終わる事もあったりした。






そんなある日。

ヘルプで入った客の女から、遠まわしに誘いをかけられたんだ。




「クロウ君って、若くてかっこいいから人気者でしょうね。
お昼もデートとかして忙しいでしょ?」




オレよりも全然年上、多分20代後半か30過ぎじゃないかと思う。


派手な服来た女と違って、地味で落ち着いた雰囲気の女だった。




「よくわかってんじゃん!
…って、ホントは全然ヒマだよ。
みんな見る目ないのかなぁ…なんちゃってね!」



そんなオレの冗談に、彼女はクスクスと笑ってくれた。

そしてもう一度オレの方に向き直ると、ニコニコしながらまた訊いてきた。




「じゃあ…私とデートしてくれる暇は、あるのかなぁ?」




「モチロン!
オレを選んでくれるなんて、さすがお目が高いね」




おどけたオレにクスクス笑う彼女だけど。


でもその時、目は笑っていなかった。



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