crow〜鴉と裸の彼女

むらさ樹

文字の大きさ
10 / 12

**********

それからというもの、かずみはオレといる時間、愚痴も言うようになった。



「私、具合悪くて早く休みたかったけど洗い物残ってるからって言ったらね、明日にすればいいんじゃないって言うのよ?
洗っといてあげようかなんて言わないのねっ」



中でも、家での旦那の愚痴が一番多かった。


男と女じゃ価値観は違うだろうから、すれ違う事もあるだろう。

相談事なら共感したりなだめたりする所なんだろうが、オレの場合はそれがおかしくてたまらなかった。



「この前もね、出勤する時についでにゴミくらい出してくれたらいいのに………あ、ごめんなさい」



「え?」



「私ったら、せっかくクロウ君と過ごしてるのに家の愚痴ばっかり言っちゃって…っ」



かずみは申し訳なさそうに、オレを見た。



「いいのいいの。
かずみの溜まってるもの、全部ここで吐き出しちゃえよ」



「ん…でも…」



旦那の悪口を聞いていると、それがオレの栄養源にもなってきてるような気がしてきた。


かずみはプライベートに不満があればあるほど、オレを必要としてるんだ。

それが、今のオレにはおかしいくらい快感だった。



「ほら、もう言わねぇの?」



「んー…そう言われると、今度は言えなくなっちゃう…」



オレはフッと笑うと、かずみの身体の上に乗った。



「なら、今度はかずみの身体に溜まったもの、出させちゃおうかな?」



仰向けになるかずみの脚を開くと、オレはそこに舌を這わせた。



「ぁ…っ、ダメ…ダメェ…っ!」



出張ホストをホテルに呼ぶ女なんて、だいたいイケメンとヤりたいとかそんな理由が殆どだろう。


容姿がいいってのも商売になる時代なんだ。
それはそれで、オレは別にいいと思う。


だが、かずみの場合は違った気がした。


旦那の代わりに構ってくれるイケメンなら誰でもいいわけじゃない。

かずみは、オレだから選んでくれたんだ。




「かずみのクリちゃん、でっかくなってんじゃん?
ほら、イっちゃいな」



「クロウく……っ
やぁああぁっ///」






かずみは子持ちの人妻とは思えないくらい、オレの前で淫らな姿を晒した。



こんな全てをぶちまけてる裸のかずみを、旦那だって見た事ねぇだろ?



ははっ
ざまぁみろってんだ!!









________
_____



それから次の約束までに1ヵ月空いた、かずみとの久し振りのある日。



ホテルの部屋に入ってすぐ、かずみは荷物から何やら小さな包みを取り出してオレに手渡した。



「これ、良かったらクロウ君に」



「オレに?マジで?」



何だろうな。

客からプレゼントなんて珍しい話でもないんだけど。

でもかずみから何かもらえるなんて、思ってもみなかった。



包みを開けて、オレは中の物を手のひらに出して見た。



「…へぇ。
これホンモノの金だったりして?」



オレの手のひらに乗せたそれは、ピカピカと部屋の照明に反射して光る金のネックレスだった。




「…主婦が自由に使えるお金って決まってるから、ヤリクリするの大変だったわ。
しばらくご無沙汰しちゃってごめんなさい」




…前回から今回までに、ヤケに日があったのはそのせいだったのか。


なに?
家で節約して貯めた金で買ってくれたってわけ?

泣かせるねぇ。


て事は、旦那の食うハズだったオカズの1つがこれに化けたのか?




「く…ははっ」



「え、何がおかしいの?
…気に入らなかった?」



笑いが堪えきれず、吹き出したオレを不安げな顔でかずみが見る。



「違う違う。
嬉しくってたまんねぇの!」



「…本当?」



「あぁ。
マジサンキューな、かずみ」




何だか、旦那よりオレに尽くすかずみが、かわいくって仕方ないや。



かずみとのエッチはもちろん好きだったが、それと同じくらいかずみの話も好きだった。



その大抵が愚痴なんだけど、それが旦那の悪口であればあるほど気分が良い。


性格の不一致。

育児方針の食い違い。



最初は旦那の事を腹の内で笑っていたんだけど。

しかし、それがだんだん憎悪へと変わってきていた。



愛し合って結婚しただろうに、何でこんなにかずみを大切にしないんだ。

どうしてこんなに不満がってるのに、対処してやらないんだ。



お前は、かずみと一緒にいる価値があるのか。



オレだったら、もっとかずみを大切にする。

オレだったら、かずみに寂しい思いをさせない。

オレだったら…





…たかが出張ホストをやってるオレがそこまで思う必要ない事に、オレ自身この時はまだ気付かなかったんだ。




「…わ。
よく似合ってる」



オレはかずみのプレゼントしてくれた金のネックレスをつけた。


襟のボタンを外した黒いシャツから覗く金が、ひときわ存在感を引き立てる。



黒ばかり身につけているオレが、初めて他の色を取り込んだんだ。



妖しく黒光りするカラスに、金の冠でも与えられたような気分だな。



「すげぇ気に入った。
これ、かずみと思って大事にするよ」



「ありがとう。
よかった、気に入ってくれて」



ホッと一安心したかずみに、オレは腰を抱き唇を重ねた。



「ん…っ、クロウ…君っ//」



「これのお礼、たっぷりしてやるからな」



オレはかずみの身体にたくさんのキスを降らせた。


どこが感じる所なのか、どこでイかせる事ができるのか。

オレはかずみの身体の事なら、全部把握しているんだからな。



汗を身体に滲ませながら、オレたちはベッドの上で何度も愛し合った。



唇を合わせ、舌をからませる。

唾液と唾液が混じり合い、唇を引き離すと細い糸となって、それはやがて切れる。



「ん……はぁ…っ」



身体だけじゃない、指も絡ませてはお互いを離さないよう、しっかり握っていた。




「ん…っ
かずみん内、気持ち良すぎっ
そんなに締め付けたら、オレもう保たねぇって」



「私…っ、も…イっちゃうっ
ぁ…ぁ…っ」




しっかりとお互いを捕まえたまま、オレたちは共に絶頂を迎えようとした。


…と、その時に___



「ぁあっ、クロウくんっ
………好き ぃ…っ」


「…………っ」




初めてかずみの口から聞いた、好きの言葉。

しかもイった時にとか。



もうかずみには間違いなくオレしかいないと、そう確信した瞬間だった――――。




感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。