紫に抱かれたくて

むらさ樹

文字の大きさ
25 / 68

しおりを挟む
バスルームから戻った煌は上半身は裸のままで、下はジーンズを履いているだけ。

だけどその頭はやっぱりウイッグだったようで、シャワーから戻った今はそれが取り払われ、地毛を晒している。


ウイッグを使ってるくらいだからどんな頭なのかと思ったら、染めてる事もなく黒色に普通に短髪なだけ。

ウイッグのせいか、ボリュームが減ったような印象があるんだけど…。



「………やっぱ、変?
おれ、猫っ毛だからさ…」

「わ…本当だ」

近寄って触ってみると、煌の髪は細くてサラサラしてた。

なるほど、だからボリュームが減ったような印象になったわけだ。



「男なのに猫っ毛なんて、カッコ悪いよね…」

「…そんなことないわよっ
あたしは、好きよ」

なんだ、それでウイッグつけて隠してたんだ。
こんな事をコンプレックスにしてるなんて、煌ってばかわいいなぁ。


「……………………」

「……………………」

髪に触れた後、急に言葉が途切れてしまった。

変だな。
初めて見る新しい煌に、またドキドキし始めてきたみたいだ。

…どんなプレイでもいい。
今日は、煌の好きなように抱いてほしい。


大人しくて、何だか恨めないかわいい印象の煌。
さぁ、ベッドの上じゃあどんな獣に変身するの?
どんな風にあたしを鳴かせるの?


「……………………」

「……………………」

「……………………」

「…………………?」


お互い無言で向き合ったまま、ずっと時間ばかりが経過して何も起こらない。

あれ?放置プレイ?
焦らされてるのかな。

「………………煌?」


あまりにも微動だにしなさすぎる煌に、とうとう痺れを切らしたあたしの方が先に声をかけた。

「…あ、うん………」

まるで煌の方が緊張してるみたい。

あたしがお客だから、どんな風に対応したらいいのか迷ってんのかな。


「いいよ、普通にしてくれたら。
キス、して」

あたしは煌の方に顔を向けて、目を閉じた。

すると少し時間が経った後、煌はあたしの両腕を掴んでそっと唇を重ねた。


「ん…………



…………………?」


だけどそれからすぐに、重なった唇は離れてしまった。


時間にして1~2秒?

すぐに2回目が来るかと思ったけど、それもない。

…え、それだけ?


あたしは目を開けて、煌の方を見た。


「煌?」

すると煌は顔を赤くしながら視線を背け、困ったような表情を浮かべていた。


「…ごめん、愛さん。
偉そうに出張できるなんて言って実は…おれ、初めてなんだ…」

「………………は…?」

あまりに予想外のカミングアウトに、しばらく開いた口が塞がらなかった。

初めてって何が?
出張の事?
それとも、キス?

まさか煌、経験もないとか___?


「本当に、ごめん!!
お金も返すよっ
ホテル代もおれが払う!
愛さんには恥かかせる真似して悪いって思ってる。
本当に…本当に、ごめんなさいっ」


手を合わせて頭を垂れる煌に、何が起こったのかわからないまま呆然としてしまった。


ええと…

つまり煌は、童貞なのに、あたしの誘いに乗ったって事なんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

君に何度でも恋をする

明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。 「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」 「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」 そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。 でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。 もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……? 表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。 全年齢作品です。 ベリーズカフェ公開日 2022/09/21 アルファポリス公開日 2025/06/19 作品の無断転載はご遠慮ください。

消えた記憶

詩織
恋愛
交通事故で一部の記憶がなくなった彩芽。大事な旦那さんの記憶が全くない。

処理中です...