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「凛…今日はクロウじゃなくて、紫苑となんだ…」
心臓はバクバク、胸の辺りは嫌なモヤモヤがする。
「うん!
この前も紫苑とだったんだけどぉ、紫苑とのエッチは超キモチイーの!
あんなのクロとじゃ味わえないんだからっ」
嫌だ…っ
自分の知らない所で知らない人とするのはまだ許せるけど。
でも、明らかに今から誰ととかリアルに教えられたら…そんなの耐えられない!
しかも、よりによって凛とだなんて…!!
「ねぇ…紫苑の出張費って、どのくらいするの?」
「あれ~?
愛さん、紫苑とはまだなんだぁ」
「…いいから。
いくらなのか、教えてよ」
まだだなんて、いちいち余計な事訊かなくてもいいじゃない!
あたしなんて、会うだけでもこんなに苦労してるのにっ
「紫苑は特別だから、料金も特別なんだよ。
とりあえず今夜は、50ってとこだけど」
一晩で50…万!?
その桁違いの数字にあ然としてしまったけれど。
でもあたしは、そんな数字には臆しなかった。
「凛、お願い…。
その紫苑との約束、あたしに50…ううん、60万で売って…!」
__『…ごめんね。
今日は、ずっと予定が入ってるんだ』
初めて言われた、紫苑からの否定的な言葉。
違うってわかっていても、まるであたしの全てを否定されたかのようにショックだった。
あたしはお店に行ってもなかなか会えないのに、なのに凛は…
__『この前も紫苑とだったんだけどぉ、紫苑とのエッチは超最高なの!』
__『今から凛と会ってくれるの?
嬉しい~っ!』
凛とは、連絡先も交換し合ってるの?
そんな簡単に、会う約束ができちゃう関係なの?
クロウにあんなに貢いでるのに、紫苑にはもっと貢いでるって事?
あたしだって、気持ちは凛なんかに負けてない。
ううん。
凛よりも、ずっと本気。
「やだぁ、愛さんてば。
凛から紫苑買っちゃうの?」
「一度だけでいいの。
お金は…いくらでもいいから…」
どんな方法でもいい。
とにかく紫苑と近付けるなら、あたしは何だったする…っ!
「うふふっ
じゃあ、愛さんの為に~特別に譲ってあげちゃおうかなぁ」
「…ありがとう!
感謝するわ、凛!」
あたしはすぐに急いで凛に教えてもらった紫苑との待ち合わせ場所へと走った。
ネオン街から細い道に抜けた、ちょっぴり寂しげな場所。
真夜中だから、余計にひと気もなくて暗く静か。
目印の自販機の前までたどり着くと、バッグからミラーを出してメイクを直す。
紫苑と会える!
紫苑と過ごせる!
昼間のランチデートの時もドキドキしたけど、今はそれ以上に胸が熱く激しく鼓動してる。
たとえお金で買った恋人でも、今のあたしにはどうしても紫苑が欲しいからっ
「………………紫苑…」
落ち着かない心臓に手を胸に当てて待っていた。
その時___…
「…本当だ…
来てくれたんだ…」
「…っ!」
暗闇の向こうから聞こえてきた声に、あたしはハッとして振り向いた。
街灯の明かりが届きにくい狭い路地。
向こうからは自販機の明かりでこちらの姿がよく見えてるようだけど、こちらからは声の主の姿はよく見えない。
「嬉しいよ…まさか本当に僕に会いにきてくれるなんて…」
「……………っ」
明らかに、紫苑の声とは違う。
でも、聞き覚えのある声にこの口調。
まさか……
「やっぱり僕には、愛ちゃんだけだ。
愛ちゃんだって、きっと僕しか見えていない…」
「えっ!!
と、徹っ…ちゃん?」
側まで近付いてきた声の主は自販機の明かりに照らされて、その姿を映した。
汗の染みたヨレヨレのシャツを着て、額からは脂を浮かせたあの気持ち悪い顔。
それは今日もお客としてうちの店に来て、あたしの接待に大金を叩いて帰った、常連客の徹だったのだ。
「徹ちゃん!
どうして、こんな所に…っ?」
あまりに予想外の出来事に、あたしは目を丸くした。
偶然通りかかったって言えるような場所…とも思えない。
だいたい、うちのお店から出て未だこんな時間に外をうろついてるなんて、家族はいいのかしら。
「愛ちゃん、何言ってんのさぁ。
愛ちゃんも同じ気持ちだから、来てくれたんだろ?」
「えっ、ちょっと!」
変な事を言い出す徹は、いきなりあたしの腕を掴んで顔を寄せてきた。
心臓はバクバク、胸の辺りは嫌なモヤモヤがする。
「うん!
この前も紫苑とだったんだけどぉ、紫苑とのエッチは超キモチイーの!
あんなのクロとじゃ味わえないんだからっ」
嫌だ…っ
自分の知らない所で知らない人とするのはまだ許せるけど。
でも、明らかに今から誰ととかリアルに教えられたら…そんなの耐えられない!
しかも、よりによって凛とだなんて…!!
「ねぇ…紫苑の出張費って、どのくらいするの?」
「あれ~?
愛さん、紫苑とはまだなんだぁ」
「…いいから。
いくらなのか、教えてよ」
まだだなんて、いちいち余計な事訊かなくてもいいじゃない!
あたしなんて、会うだけでもこんなに苦労してるのにっ
「紫苑は特別だから、料金も特別なんだよ。
とりあえず今夜は、50ってとこだけど」
一晩で50…万!?
その桁違いの数字にあ然としてしまったけれど。
でもあたしは、そんな数字には臆しなかった。
「凛、お願い…。
その紫苑との約束、あたしに50…ううん、60万で売って…!」
__『…ごめんね。
今日は、ずっと予定が入ってるんだ』
初めて言われた、紫苑からの否定的な言葉。
違うってわかっていても、まるであたしの全てを否定されたかのようにショックだった。
あたしはお店に行ってもなかなか会えないのに、なのに凛は…
__『この前も紫苑とだったんだけどぉ、紫苑とのエッチは超最高なの!』
__『今から凛と会ってくれるの?
嬉しい~っ!』
凛とは、連絡先も交換し合ってるの?
そんな簡単に、会う約束ができちゃう関係なの?
クロウにあんなに貢いでるのに、紫苑にはもっと貢いでるって事?
あたしだって、気持ちは凛なんかに負けてない。
ううん。
凛よりも、ずっと本気。
「やだぁ、愛さんてば。
凛から紫苑買っちゃうの?」
「一度だけでいいの。
お金は…いくらでもいいから…」
どんな方法でもいい。
とにかく紫苑と近付けるなら、あたしは何だったする…っ!
「うふふっ
じゃあ、愛さんの為に~特別に譲ってあげちゃおうかなぁ」
「…ありがとう!
感謝するわ、凛!」
あたしはすぐに急いで凛に教えてもらった紫苑との待ち合わせ場所へと走った。
ネオン街から細い道に抜けた、ちょっぴり寂しげな場所。
真夜中だから、余計にひと気もなくて暗く静か。
目印の自販機の前までたどり着くと、バッグからミラーを出してメイクを直す。
紫苑と会える!
紫苑と過ごせる!
昼間のランチデートの時もドキドキしたけど、今はそれ以上に胸が熱く激しく鼓動してる。
たとえお金で買った恋人でも、今のあたしにはどうしても紫苑が欲しいからっ
「………………紫苑…」
落ち着かない心臓に手を胸に当てて待っていた。
その時___…
「…本当だ…
来てくれたんだ…」
「…っ!」
暗闇の向こうから聞こえてきた声に、あたしはハッとして振り向いた。
街灯の明かりが届きにくい狭い路地。
向こうからは自販機の明かりでこちらの姿がよく見えてるようだけど、こちらからは声の主の姿はよく見えない。
「嬉しいよ…まさか本当に僕に会いにきてくれるなんて…」
「……………っ」
明らかに、紫苑の声とは違う。
でも、聞き覚えのある声にこの口調。
まさか……
「やっぱり僕には、愛ちゃんだけだ。
愛ちゃんだって、きっと僕しか見えていない…」
「えっ!!
と、徹っ…ちゃん?」
側まで近付いてきた声の主は自販機の明かりに照らされて、その姿を映した。
汗の染みたヨレヨレのシャツを着て、額からは脂を浮かせたあの気持ち悪い顔。
それは今日もお客としてうちの店に来て、あたしの接待に大金を叩いて帰った、常連客の徹だったのだ。
「徹ちゃん!
どうして、こんな所に…っ?」
あまりに予想外の出来事に、あたしは目を丸くした。
偶然通りかかったって言えるような場所…とも思えない。
だいたい、うちのお店から出て未だこんな時間に外をうろついてるなんて、家族はいいのかしら。
「愛ちゃん、何言ってんのさぁ。
愛ちゃんも同じ気持ちだから、来てくれたんだろ?」
「えっ、ちょっと!」
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