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四日目①
しおりを挟む…ゴソゴソと物音がして目が覚めた。
あれ、私ってば今まで寝てたのかな。
眠ってた感覚はないものの、起きてた記憶もない。
壁にもたれて眠っていた南が、急にドアを開けて外に出た。
残された小屋の中には、縛られた私と大金の入ったリュックとナイフ。
…ナイフ!
今なら…奪えるかも。
私を縛るロープを切る事のできる唯一のアイテムだもの。
だけど、手に入れた所でなかなか扱える状態じゃない。
どうにかしてロープを切らなきゃいけないけど、自分の力だけじゃ絶対無理だよ…。
でも凶器は奪っておいた方がいいのは確かよね。
あんなものいちいち振り回されちゃ危なっかしいもの。
「……………」
外に出て何してるんだろ。
開いたドアから外を伺おうと、身体を伸ばす。
ひゅうっと小屋の中に入ってきた夜風が冷たくてゾクゾクっとした。
「……クシュン!」
私のくしゃみと同時に、外に出た南が戻ってきた。
…ズボンのチャックを閉めながら。
小屋に戻った南は、またさっきと同じように毛布をかぶりながら壁にもたれて目を閉じた。
「あの…」
私の声に、面倒くさそうに目を開けた。
「もう1枚の毛布…分けてよ。
寒くって…」
ずっと耐えていたけど、やっぱり寒いものは寒い。
2枚あるなら、もう1枚くらい貸してくれたっていいじゃない?
ところが、プライドを捨ててお願いしたってのに、南はまた目を閉じてしまった。
え、なに無視って事?
信じらんない!
聞こえなかったわけないと思う。
私がお腹空いた時だって全く気にかけてくれなかった。
うう~っ
何なのよ南の奴!!
壁の隅に置いてある毛布の方へ、私は身体を引きずりながら向かった。
…何だか寒くて、トイレにも行きたくなってきた。
水分だってそんなに取ってないとはいえ、朝からずっと行ってない。
だけど、この調子じゃトイレだって行かせてくれないに決まってる。
…辛い。
辛すぎるよ、強盗さぁん。
毛布を壁の隅に畳んで置いたのは、朝洗濯して乾いた服を着た時。
だから、自分が使ってた毛布って事だね。
それを目指しているのだけど、両腕を縛られて両膝を縛られれば、必然的にお尻と足でズコズコとゆっくりの移動になる。
砂で汚れた床を、お尻を付けながら移動するのはちょっとイヤ。
だけど、毛布なしじゃ寒くて仕方ないもの!
必死に床を引きずりながら毛布のある所までたどり着くと、急に目の前にギラッと光るものが見えた。
「…妙な真似したら命が縮むって言っただろうが。
何をするつもりだ?」
私の目の前で光ったものは、南が向けたナイフの刃だった。
私の動きに気付いた南が、起きて来たんだ。
「…寒いから、毛布を借りようと思ったのよっ」
「人質の癖に贅沢な奴だ。
今度変な真似してみろ。次は訊く前に刺し殺すからな!」
そう言って南はまた同じ場所に戻った。
…ちょっと。
言うだけ言って結局毛布はかけてくれないの!?
「………ぐすっ」
あまりに悲しいというか悔しさに、涙を浮かべながら私は毛布を身体にかけようと、必死に格闘した。
そして身体にかけるのに、それから更に30分くらいを要した…。
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