10 / 12
最後に悪あがきしてみたぞ!
しおりを挟む
「私、そろそろ帰らなきゃ…」
店長が持ってきたピンクのジュースを飲み終わった時、姉貴はまたビックリするような発言をした。
「ちょっ!
待ってよ、姉貴。まだ何も頼んでないじゃんよ!!」
何たって、今からコレからいろいろ売り上げ貢献してもらおうかと思ってたのに。
来て1時間経ったか?
もう帰るとか、ありえないだろーっ!!
「ノンアルコールなら呑めるわけだろ?
だったら、何か気の利いた奴を一発頼んでくれよ」
「え~?
だって私、ウーロン茶にカクテル飲んだらもう、お腹いっぱいになっちゃったんだもん。
それに、蓮の事も心配だし…」
甥っ子なら義兄貴が見てくれるって言ったじゃんよ!
って、ウーロン茶で腹いっぱいって意味わかんねーっ!!
「それに、ホストクラブって結構お金かかっちゃうんでしょ?
うち、そんな余裕あるわけじゃないんだから」
なんて現実的な事を言ってきた姉貴。
最初っからオレに尽くしてくれる気なかったって事かー!?
「マジかよ~。
一生のお願いだよ、姉貴!あと少しだけ…」
「姉 貴…?」
席を立とうとする姉貴に手を合わせて二回目の一生のお願いをしている時、またしても側を通りかかった煌さんが足を止めたようだ。
「RIKU☆?
今、姉貴?って…?
え、そのお客さん…」
空いたボトルを奥へと片付けている途中の煌さんだったようだけど、オレの問題発言に眉をひそめた。
ヤバい!
これはヤバいぞ!!
「ききき煌さん!
ヤだなぁ、姉貴なわけないじゃないですかーっ
あ あね…An○Can(←雑誌)っていつ発売だったかなー…なんて…」
鈍感っぽそうな煌さんだ。
どうか、騙されてくれーっ!
「何言ってんだよ、RIKU☆
て言うか…でも、よく見たら似てなくもない…かな…」
オレの苦しすぎる冗談をサラッと流した煌さんは、事もあろうにオレと姉貴の顔をジロジロと見比べだした。
「ひゃぁ…」
「ちょっ
煌さん!やめてくれよ!
姉…お客さんも困ってるだろっ!」
さすがにこんな事態になって、姉貴も顔を伏せるようにしてオレの身体に身を寄せている。
一応バレたら困るって事は、理解してくれているんだ。
「んー…おかしいと思ったんだよ。バイトなのに3日目で指名入るんだもんね。
RIKU☆、さてはインチキしたな?」
バレたー!ΣΣΣ
よりによって、一番鈍感そうな煌さんにバレたぞ!!
あちゃー。
これで店長にもバレるだろうし、もしかしたら減給ものだよ…。
「おいおい、煌。
勝手な事を言っちゃいけないよ」
「!」
とうとう年貢の納め時…と思っていた時だった。
オレの作戦に気付いた煌さんに、それを否定してくれた人物が現れたのだ。
「…紫苑さん!」
「店長…!?」
オレと煌さんが仕事サボってしゃべってるとでも思って、注意しに来たのかな。
店長にまでバレたらおしまいだって思ってたけど、何か様子が違うようだぞ?
「煌、彼女はホストクラブ初めてのお客さまでね、たまたま出迎えたRIKU☆を指名してくれたんだよ?」
「え…あ…」
さっきオレが言った適当なデタラメを、今度は店長が煌さんにそのまま伝えた。
「だから、姉なんて言っちゃ失礼だよ。
ほら、謝って」
「あ…と。
その…ごめんなさい…」
「…あ、いえ…」
まさか意外にも、店長によってオレのこの疑惑は助けられてしまったのだ。
え これはもしや、ラッキー…?
「あ、あの…。
じゃあ私、この辺で…」
「あれ、もう帰っちゃうの?
もっとゆっくりしてけばいいのに」
「あ、いえ…っ」
どうにか姉弟疑惑は無事に免れたものの。
このまままた疑われないうちにと、煌さんの誘いをやんわりと断った姉貴は、早々に立ち去ろうと腰を上げた。
残念だけど、それが無難かもなぁ。
えーっと、じゃあ次は会計をしたらいいのかな。
オレも立ち上がり、出入り口付近にあるレジの方へ姉貴を連れて行こうとした。
しかしまぁ、このジュースは多分店長の売り上げになるだろうから、今回のオレの売り上げはウーロン茶だけか。
仮に半分が手取りとして………………
ホント、コンビニの時給にもならないかもなぁ。
「……………………」
……あ、そうだ!
最後の手段があるぞ!
オレは性懲りもなく、まだ悪あがきをしようとした。
「RIKU☆、君はレジの方は教えてないから、彼女のお会計は僕が付き添うよ。
後は、また通常業務に戻ってくれるかな」
姉貴を会計の方へ連れて行こうとした時、店長はそう言ってオレを制した。
確かにここのレジとか触った事ないから、操作とかわからないけど。
でも、このままじゃオレの売り上げがウーロン茶1杯になっちまうー!
「ちょっ、待った!!」
「え?」
オレは姉貴の腕をグイと引き寄せた。
「彼女…優さんとさっき話してて、実はオレ、朝まで出張するって事になってるんです!!」
「?」
「!」
「!?」
…もちろん出張の意味なんて知らないけど。
ただ2日目の時に、あのタワー女がそんな感じに言ってたのを思い出して、オレも同じように言ってみたのだ。
これで、オレの売り上げも多少アップだろ!
てゆーか、これはもう完全に金の亡者だな、オレ…!(自覚)
「…ちょっ、陸っ
出張って何の話?
朝までって、私ムリよ?」
顔を寄せ、ヒソヒソと姉貴はオレに訊いてきた。
そりゃそうだろう。
オレだって今唐突に思い付いて言っただけなんだから。
「…何か知らないけど、適当に口裏合わせてくれよ。
出張ってんだから、オレのホスト学の勉強の為に、出張費を出してあげるとかそんな客のサービスなんじゃないの?」
「私がそのお金出すの?」
「だから口裏合わせてくれるだけでいいんだよ!
後でうまく誤魔化すから」
「…もぉっ」
そうしてヒソヒソと話を合わせた所で姉貴と顔を離すと、目の前の店長と煌さんに向き直った。
…気のせいかな。
煌さんは驚いたような、店長はビミョーな汗をかいたような表情をしていた。
「す…げぇな、RIKU☆
指名初日から出張の約束入ったんだ…」
「あ…ははっ
まぁね…っ」
まるで神を見るような目でオレにそうボヤいた煌さん。
え、オレ後光でも差してますか?
「…と、いうわけなんですけど…」
使い方、間違ってたかなぁ。
朝まで出張。
つまり、朝までオレの勉強に姉貴が付き合ってくれますよー…みたいな?
だけど、実際何のサービスだ?こりゃ。
「……………………っ」
ヒヤヒヤしながら、オレはそっと店長の反応を待ってみた。
合ってる?
間違ってる?
てゆーか、+歩合給になる?
「あー……RIKU☆…?」
「あ、はいっ!」
店長の開口に、ドキリと心臓が跳ね上がった。
OK?
NG?
あーっ、どっちなんだ!?
「……じゃあRIKU☆は彼女と出て、そのまま直帰でいいから」
「え………?」
出てって、この店をって事だよな。
え、直帰って事は、もうここに戻って来るなって事…?
まさか…やっぱり、使い方間違ってたかー!?
「あの、店長…
オレ、もしかしてクビ…?」
「え?まさか。
もちろん約束の期間は今日の閉店までだったけど、でももうあがってもいいよ。
クビとかじゃなくてね。
ほら、まだ彼女との約束があるんだろ?」
「あ、はい!」
…よかった。
出張の使い方、間違ってなかったみたいだ。
最後にして、言ってみるもんだな。
「じゃあ、帰る支度しておいで。
僕は彼女と一緒に、外までついて待っておくから」
「あ、はい!」
そんなわけで、この3日目も何とかうまく終わらせる事ができたわけだ。
てゆーか、出張費っていくらするもんなのかなぁ。
もちろん店から手当てとか出るんだろうなぁ。
この出張のホントの意味はわからないまま、オレは“club-shion”でのバイトを終了した。
さぁ、いくら給料が入るのか?
後日送られてくるっていう給料明細、今から楽しみだな。
店長が持ってきたピンクのジュースを飲み終わった時、姉貴はまたビックリするような発言をした。
「ちょっ!
待ってよ、姉貴。まだ何も頼んでないじゃんよ!!」
何たって、今からコレからいろいろ売り上げ貢献してもらおうかと思ってたのに。
来て1時間経ったか?
もう帰るとか、ありえないだろーっ!!
「ノンアルコールなら呑めるわけだろ?
だったら、何か気の利いた奴を一発頼んでくれよ」
「え~?
だって私、ウーロン茶にカクテル飲んだらもう、お腹いっぱいになっちゃったんだもん。
それに、蓮の事も心配だし…」
甥っ子なら義兄貴が見てくれるって言ったじゃんよ!
って、ウーロン茶で腹いっぱいって意味わかんねーっ!!
「それに、ホストクラブって結構お金かかっちゃうんでしょ?
うち、そんな余裕あるわけじゃないんだから」
なんて現実的な事を言ってきた姉貴。
最初っからオレに尽くしてくれる気なかったって事かー!?
「マジかよ~。
一生のお願いだよ、姉貴!あと少しだけ…」
「姉 貴…?」
席を立とうとする姉貴に手を合わせて二回目の一生のお願いをしている時、またしても側を通りかかった煌さんが足を止めたようだ。
「RIKU☆?
今、姉貴?って…?
え、そのお客さん…」
空いたボトルを奥へと片付けている途中の煌さんだったようだけど、オレの問題発言に眉をひそめた。
ヤバい!
これはヤバいぞ!!
「ききき煌さん!
ヤだなぁ、姉貴なわけないじゃないですかーっ
あ あね…An○Can(←雑誌)っていつ発売だったかなー…なんて…」
鈍感っぽそうな煌さんだ。
どうか、騙されてくれーっ!
「何言ってんだよ、RIKU☆
て言うか…でも、よく見たら似てなくもない…かな…」
オレの苦しすぎる冗談をサラッと流した煌さんは、事もあろうにオレと姉貴の顔をジロジロと見比べだした。
「ひゃぁ…」
「ちょっ
煌さん!やめてくれよ!
姉…お客さんも困ってるだろっ!」
さすがにこんな事態になって、姉貴も顔を伏せるようにしてオレの身体に身を寄せている。
一応バレたら困るって事は、理解してくれているんだ。
「んー…おかしいと思ったんだよ。バイトなのに3日目で指名入るんだもんね。
RIKU☆、さてはインチキしたな?」
バレたー!ΣΣΣ
よりによって、一番鈍感そうな煌さんにバレたぞ!!
あちゃー。
これで店長にもバレるだろうし、もしかしたら減給ものだよ…。
「おいおい、煌。
勝手な事を言っちゃいけないよ」
「!」
とうとう年貢の納め時…と思っていた時だった。
オレの作戦に気付いた煌さんに、それを否定してくれた人物が現れたのだ。
「…紫苑さん!」
「店長…!?」
オレと煌さんが仕事サボってしゃべってるとでも思って、注意しに来たのかな。
店長にまでバレたらおしまいだって思ってたけど、何か様子が違うようだぞ?
「煌、彼女はホストクラブ初めてのお客さまでね、たまたま出迎えたRIKU☆を指名してくれたんだよ?」
「え…あ…」
さっきオレが言った適当なデタラメを、今度は店長が煌さんにそのまま伝えた。
「だから、姉なんて言っちゃ失礼だよ。
ほら、謝って」
「あ…と。
その…ごめんなさい…」
「…あ、いえ…」
まさか意外にも、店長によってオレのこの疑惑は助けられてしまったのだ。
え これはもしや、ラッキー…?
「あ、あの…。
じゃあ私、この辺で…」
「あれ、もう帰っちゃうの?
もっとゆっくりしてけばいいのに」
「あ、いえ…っ」
どうにか姉弟疑惑は無事に免れたものの。
このまままた疑われないうちにと、煌さんの誘いをやんわりと断った姉貴は、早々に立ち去ろうと腰を上げた。
残念だけど、それが無難かもなぁ。
えーっと、じゃあ次は会計をしたらいいのかな。
オレも立ち上がり、出入り口付近にあるレジの方へ姉貴を連れて行こうとした。
しかしまぁ、このジュースは多分店長の売り上げになるだろうから、今回のオレの売り上げはウーロン茶だけか。
仮に半分が手取りとして………………
ホント、コンビニの時給にもならないかもなぁ。
「……………………」
……あ、そうだ!
最後の手段があるぞ!
オレは性懲りもなく、まだ悪あがきをしようとした。
「RIKU☆、君はレジの方は教えてないから、彼女のお会計は僕が付き添うよ。
後は、また通常業務に戻ってくれるかな」
姉貴を会計の方へ連れて行こうとした時、店長はそう言ってオレを制した。
確かにここのレジとか触った事ないから、操作とかわからないけど。
でも、このままじゃオレの売り上げがウーロン茶1杯になっちまうー!
「ちょっ、待った!!」
「え?」
オレは姉貴の腕をグイと引き寄せた。
「彼女…優さんとさっき話してて、実はオレ、朝まで出張するって事になってるんです!!」
「?」
「!」
「!?」
…もちろん出張の意味なんて知らないけど。
ただ2日目の時に、あのタワー女がそんな感じに言ってたのを思い出して、オレも同じように言ってみたのだ。
これで、オレの売り上げも多少アップだろ!
てゆーか、これはもう完全に金の亡者だな、オレ…!(自覚)
「…ちょっ、陸っ
出張って何の話?
朝までって、私ムリよ?」
顔を寄せ、ヒソヒソと姉貴はオレに訊いてきた。
そりゃそうだろう。
オレだって今唐突に思い付いて言っただけなんだから。
「…何か知らないけど、適当に口裏合わせてくれよ。
出張ってんだから、オレのホスト学の勉強の為に、出張費を出してあげるとかそんな客のサービスなんじゃないの?」
「私がそのお金出すの?」
「だから口裏合わせてくれるだけでいいんだよ!
後でうまく誤魔化すから」
「…もぉっ」
そうしてヒソヒソと話を合わせた所で姉貴と顔を離すと、目の前の店長と煌さんに向き直った。
…気のせいかな。
煌さんは驚いたような、店長はビミョーな汗をかいたような表情をしていた。
「す…げぇな、RIKU☆
指名初日から出張の約束入ったんだ…」
「あ…ははっ
まぁね…っ」
まるで神を見るような目でオレにそうボヤいた煌さん。
え、オレ後光でも差してますか?
「…と、いうわけなんですけど…」
使い方、間違ってたかなぁ。
朝まで出張。
つまり、朝までオレの勉強に姉貴が付き合ってくれますよー…みたいな?
だけど、実際何のサービスだ?こりゃ。
「……………………っ」
ヒヤヒヤしながら、オレはそっと店長の反応を待ってみた。
合ってる?
間違ってる?
てゆーか、+歩合給になる?
「あー……RIKU☆…?」
「あ、はいっ!」
店長の開口に、ドキリと心臓が跳ね上がった。
OK?
NG?
あーっ、どっちなんだ!?
「……じゃあRIKU☆は彼女と出て、そのまま直帰でいいから」
「え………?」
出てって、この店をって事だよな。
え、直帰って事は、もうここに戻って来るなって事…?
まさか…やっぱり、使い方間違ってたかー!?
「あの、店長…
オレ、もしかしてクビ…?」
「え?まさか。
もちろん約束の期間は今日の閉店までだったけど、でももうあがってもいいよ。
クビとかじゃなくてね。
ほら、まだ彼女との約束があるんだろ?」
「あ、はい!」
…よかった。
出張の使い方、間違ってなかったみたいだ。
最後にして、言ってみるもんだな。
「じゃあ、帰る支度しておいで。
僕は彼女と一緒に、外までついて待っておくから」
「あ、はい!」
そんなわけで、この3日目も何とかうまく終わらせる事ができたわけだ。
てゆーか、出張費っていくらするもんなのかなぁ。
もちろん店から手当てとか出るんだろうなぁ。
この出張のホントの意味はわからないまま、オレは“club-shion”でのバイトを終了した。
さぁ、いくら給料が入るのか?
後日送られてくるっていう給料明細、今から楽しみだな。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる