1 / 4
VRゲームの世界へ
しおりを挟む
一 VRゲームの世界へ
初夏のすばらしい天気の日!
窓の外からは、虫取りに興じる子供たちの歓声が聞こえる。家の中にいるのはもったいない日だ。そんな日に、おれは出かけた。自分の家にいながら、冒険の旅に!
ここ銀杏が丘はかつて振興住宅街だった。ブールバールのある街としてもてはやされ、テレビでしきりに宣伝された。スーパーも理容室も電気屋もホームセンターもある人気の団地だった。
いつの間にかホームセンターがつぶれ、最近スーパーが退散した。すぐ隣にJRに近くて便利な団地が造成されたせいだが、住民の年齢も上がり、ゴーストタウンになる日も近かった。
隣にできた団地の名前は『洋光台』。名前の響きが違う。太陽が燦々と照りつけ、若者の声があふれている雰囲気。『銀杏が丘』じゃ黄色くなって枯れ落ちていくだけだ。
おれはそんな枯れ行く街で生まれた。ベビーカーに乗せるのも一苦労なほど、落ち着きのない子だった。積極性はあるがかといってなにをやっても一生懸命にやる気はなく、途中で投げ出してしまう。
サッカーが唯一長続きした趣味だった。小さい頃は近くのポポロ公園でおやじと一緒にサッカーをするのが休日の日課になっていた。おやじはおれをサッカー選手にしたかったようだ。一発当てておれの稼いだ金で優雅な暮らしをしたかったに違いない。何しろギャンブル好きだ。totoもよく買ってたし、競艇通いも十年は続けていた。
おれはおやじがいなくなってからサッカーへの興味を失った。もともとサッカーなんて好きじゃなかった。だっていくらボールをゴールに蹴り込んでも、少しも楽しくないんだから。おれは家で尻でもかきながらマンガでも読むのが分相応のだめな奴だ。それに昔から本音でものを言いすぎる。きれい事やお世辞がまったく言えない。
だから友達はできなかった。口が悪くて、何をしても楽しめない人間に近づいてくる物好きはいない。まあ、おれだって友達なんていらないと思ってる。うっとうしいだけだからね。ちょっとなんか言うと、傷ついたなんて文句を言ってくる。
毎日本を読んだりゲームをしたり、一人で過ごすのが楽しい。本は文句を言ってこないし、ゲームだってそうだ。ときどきうまくいかなくて、ゲーム機を投げ飛ばしたくなるときもあるけど、本当に投げることなんてない。腹の立つ度合いが違うんだな。
いなくなったおやじのことはすぐに忘れちまった。嫌いだったんだ。酒癖が悪くてすぐに殴るから。ゲームのプログラマーをしていたけど、おもしろい作品は何一つこの世に出さなかった。若い頃は天才と言われてたらしいけど、どこで道を誤ったのか、ろくなものは生み出せなかった。いつも下品な作品を作って、会社の上司に怒られてた。時々おやじが母さんを殴ってるところを見かけたけど、「役立たずのくせに、腕力だけは一人前ね!」なんて言い返されてた。かあちゃんもおやじがいなくなってせいせいしてるに違いない。でもわかんないな。男女の仲は複雑だってワイドショーで芸能リポーターがよく言ってるから。
でも人間は、『ハジ→』の歌にあるように、突然、「逆転満塁ホームラン」をかっ飛ばすことだってある。それも気がつかないうちにその準備ができていたりする。
その逆転満塁ホームランを見つけたのは、夏休みに入ったばかりで、蝉の鳴き声が体中にじんわりと染み込んでくるクソ暑い季節だった。
おれはエアコンもつけず、扇風機から送られてくる生暖かい風を額に受け、ひたすらパソコンに向かっていた。尻はかきすぎてあせもだらけになっていた。薬箱のメンタムを塗ったけど効きやしない。蓋に印刷してある『かわいこちゃんナース』の笑顔は何の足しにもならなかった。
汗をかきかき、尻をかきかき、時々痛みに顔をしかめながら、学校の宿題を終えるため、インターネットを使ってナナフシが何を食べるのか調べていた。担任の山中先生が夏休みの宿題に出した自由研究だ。
宿題をこんなに早く始めるのは初めてだった。暑苦しくてしたいことが何もない以上、宿題はいい暇つぶしだった。
おれはどうせするなら庭で捕まえたナナフシの研究に決めていた。カブトムシやクワガタはあまりに人気がありすぎておもしろみがない。まぁっっっったく取り柄がなくて目立たない生き物だけど、その健気さにおれは引かれている。いるかいないかわからないのに、見つけたときは妙に気持ち悪くて身震いしてしまう。そんなナナフシぐらいがおれには合っている。
でもなかなか知りたいことは見つけられなかった。人気がないんだから当然だけど、かといって今さらカブトムシやクワガタに鞍替えするのは癪だった。奴らは、偉そうにふんぞり返って、馬鹿にした目でこっちを見るエリート有名中学進学組と同じだ。
でも、本当にナナフシは人気がない。調べられることにも限界がある。尋ねる奴もいない。かあちゃんは虫なんて大嫌いだ。特にナナフシなんて日陰者は、見るのも嫌そうだった。
虫かごのナナフシを見て、「木の枝が歩いてるよ! そんな気持ち悪いもの捨てちゃいなさい! 虫かごが泣いてるよ!」
そう言い残して逃げていった。そこまで言わなくていいのに。ナナフシが不憫じゃないか。わかっちゃいないんだ。ナナフシほど印象がないのが印象的な生き物はいないのに。
「おれはナナフシの研究に決めた。絶対に最後までこれでいってやる!」
ただ、百科事典に出てるありきたりの解説だけじゃおもしろくもなんともない。やる気のない大学教授が印象のない生き物をレポートしてるんだから、おもしろいはずがない。独自の研究でノーベル賞でも何でも取ってやる。イグノーベル賞だったら夢じゃないかもしれない。この間も『バナナの皮は本当に滑るのか?』なんてくだらない研究をして日本人が賞を取ってた。
いろいろなサイトを訪ねているうちに、いつの間にかまったく関係ないスポーツニュースに興味が移って、無駄に時間が過ぎていく。いくらサッカーに興味を失っているといっても、久保や三苫の活躍には興奮する。
時間ばかりが過ぎる。そうこうしているうちにスポーツ記事にも嫌気がさして、パソコンのスイッチを叩き切ろうと思った。
そのときマイドキュメントの中の妙なアイコンに気がついた。トンボの絵柄で、とてもかわいらしく、鮮やかなピンクに点滅している。今時、女の子でも引きそうな絵柄だ。
「おやじも少女趣味だな」
思わずアイコンをクリックしてみた。まさに衝動的だった。まずいのは自分でもわかっていたが、性分だから仕方がない。この間も近所の女の子のスカートをめくりあげて学校に呼ばれ、生徒指導の鬼婆教員にしつこく説教された。赤いギンガムチェックのスカートが風になびいてちょうど良いくらいにひらひらしていた。中身を見たくなるのは当然ってもんだ。でもその鬼婆はなかなか許してくれなかった。「やられた相手の気持ちを考えなさい!」なんて偉そうなことを何遍も何遍も聞かされた。おれはただ単にひらひらするスカートに興味を覚えただけで、女の子だろうが野郎だろうがそんなことはどうでも良かった。それをあの鬼婆め。まあいいんだ。少なくともあの婆のスカートだけは頼まれたってめくることはない。
『ゴーグルをUSBに差し込んでください』
画面いっぱいに文字が出た。それを見るまでは、パソコンの横に置いてあるゴーグルとヘッドホンを組み合わせたようなものが何なのかわからなかった。耳に当てる部分のちょうど真ん中に電球がついていて、それが激しくオレンジ色に点滅している。
コードを空いているUSB端子に差し込んで、おそるおそる装着してみると、目の前が虹色に輝いて見えた。鮮やかすぎて目が痛い。
『このゲームは、あなたを不思議な世界に連れて行きます!』
頭の中で、女性の甘くてセクシーな声が響きわたった。
「こりゃ、大人のゲームなのか?」
しばらく迷っていた。おやじが、ゲームソフトは未完成だからさわっちゃいけないって言ってたからだ。
しばらくすると心臓の鼓動が聞こえるほど高くなり、誘惑に勝てなくなった。色の鮮やかさがとにかくすごい。とりあえずマウスを動かすと、目の前の黄色いカーソルが動く。『巨大昆虫の国』という真っ赤な文字をクリックしてみる。
画面が切り替わるのに少し時間がかかった。目の前が突然ブルー一色になり、光り輝いて前方に吸い込まれそうになる。それはまるで抜けるような青空と同じだった。衣服にまで染み入るような青、青、青。
「うわああああ! 助けて!」
目が痛くなって、画面をじっと見つめることができなくなった。しばらく体全体がしびれたままだったが、次第に宙に浮いたようになり、しびれはとれていった。
ゆっくりと目を開けると、まぶしさは美しい風景に変わっていた。住み慣れた北向きの薄暗い部屋じゃない。南国を思わせる風景が目の前に広がっていた。
遠くにエメラルドグリーンの海が見える。砂浜に並んでいるヤシの木が気持ち良さそうに左右に揺れている。部屋にいたはずなのに、いつの間にか屋外にいた。
目をこすってみるが、景色は変わらない。つけていたはずのゴーグルはなくなっている。
「おい、おまえ!」
急に呼ばれて振り向くと、男の子が立っていた。水泳選手のように体にぴったり張り付いたど派手な黄色いスーツを着ている。赤と青のしま模様入りだ。今時サーカスの奴でもそんなダサい服着てやしない。
「ここはいったいどこだ?」暗い声で聞いてみる。
「おまえ何者だ? そんな色あせたきたない服着て、何してるんだよ」
その男の子が近づいてきた。まるでごみ袋でも見るような目つきだ。
おれはあわてて自分の服を見たが、どこも汚れてはいない。腕を匂ってみたが臭くはない。
「おまえこそなんでそんな派手な服着てるんだ? 祭りでもあるのか? それともダンスの大会にでも出るつもりなのか? そんなの着てる奴は変態って決まってるんだぜ」
「まつり? ま・つ・り? なんだそりゃ。変なこと言うなよな。それにおいらの服のどこが派手なんだよ。おまえの服が地味すぎるんだろ! 人を変態呼ばわりしやがって、この野郎!」
そのとき、その子の後ろからパステルカラーのワンピースを着た女の子が近づいてきた。
おれの心臓はどきんとした。色白で目が大きく、鼻筋がすっと通った女の子だ。紫色の長い髪をポニーテールにして、耳には青い宝石のついたピアスをしている。ワンピースの下からすらりと伸びた桜色の足はぴったり真っ直ぐで完璧だ。
「おにいちゃん、どうしたの?」
女の子はおれの前まできて、大きな目を瞬いた。
「こんにちは。はじめまして。あたい、レイカって言うの」
「こ、こんにちは。お、おれ、おれ」
女の子に笑顔で挨拶されて、おれはしどろもどろになった。
「あなた、どこから来たの? この辺の子じゃないわね」
「なんだかよくわからないんだ。ここがどこかもわからない。急に目の前の景色が変わっちまって」
そのとき突然遠くの方から大きなラッパの音が聞こえてきた。
「たいへん! 戻りましょう!」
女の子が言って、おれの腕をつかんだ。とても柔らかくて温かい手で興奮してしまった。
「そんなやつほっとけよ!」
「だめよ。かわいそうじゃない」
「盗人かもしれないぞ。家のものをみんな盗られちまうぜ」
「ひどいこと言わないで。そんな子には見えないわ」
女の子がおれの腕を強く引っ張る。
男の子は、しかたないといった顔で、丘の上に向かって一気に走り出した。
「なんで、走らなきゃならねえんだよ!」
叫んでも二人とも答えてはくれない。二人のあまりの速さについていくのがやっとで、おれは疲れ切ってしまった。
「もう走れねえよ!」立ち止まって、中腰で大きく息をついた。
「しっかりして、もう少しなんだから!」
「怪物でも出たっていうのか?」
「そのとおりよ!」
「どこにもいないじゃないか!」
「あれが見えないなんて、あんた、どんな目をしてるのよ!」
辺りを見回したが、木立が並んでいるだけだ。
再び引きずられるように走らされて、ようやく頂上付近のログハウス風の山小屋にたどり着いた。使っている丸太にはエナメルのように輝く原色の塗料が塗られ、カラフルに色分けされている。
山小屋の中に飛び込むと、男の子が激しく入り口のドアを閉めて、かんぬきをかけた。
部屋の中も派手だった。派手すぎて、気分が悪くなる。家具もすべてカラフルに色分けされている。
「ふうー、これで一安心だ」男の子が言った。
「なんだよ、この派手な部屋。気持ち悪くていられやしないよ。おまえたち、本当に趣味が悪いな」
「いたくなきゃ、外に出てもいいんだぜ。ボソボソに踏まれちまえよ」
「なんだよ、それ?」
「おまえ、何も知らないんだなぁ。よく今まで生きてこられたもんだ」
男の子がばかにしたような目で見つめる。
「窓の外を覗いてみろよ。特に上の方を見てみな」
おれは窓辺に近寄ると、赤い水玉模様のカーテンを引き開けた。
何となくさっきより辺りが暗くなっている。
初めは大きな枯れ木が風にそよいでいるのかと思った。しかしあまりにも数が多すぎる。辺り一面に枯れ木がたくさん生えてきたみたいに見える。目を凝らしてよく見ると、それがゆっくりと移動しているのがわかる。
上の方を見ると、やっと全身が見えた。体中に鳥肌が立った。それはとてつもなく巨大なナナフシだった。胴体の太さは電柱ぐらいで、枯れた大木のような足でゆったりと家をまたぎ越えている。それも数え切れないほどの数だ。これだけたくさんいると、足の合間を縫って歩くのは一苦労だ。
「ボソボソを見るの初めてなの?」
女の子が目をくりくりさせて近づいてくる。
「もちろん初めてさ」
「いつもこの時間になると現れるのよ。あなたの家の近くにはいないの?」
「こんなでかいのはいない」
「そうなの。もう少し小さいのね。この家ぐらいの大きさかな?」
「とんでもない……」
本当のことを言おうと思ってやめた。「大きくても手のひらぐらいだよ」なんて、とても言えない。
「ボソボソって人間を食べるの?」
おれが聞くと、女の子が笑いをこらえながら言った。
「そうじゃないけど、あぶないでしょ。あんな大きな足で踏まれたらたいへんよ。確かに動作はゆっくりだし、よく見ていれば蹴られたりすることもないわ。でも前にふざけて外を走り回っていて足を踏まれた子がいるの。骨折して一月入院したわ。用心に越したことはないのよ。当番の大人が家に入るように、いつも合図してくれてるから、素直にそれに従ってるの」
この巨大ナナフシが肉食じゃないと聞いて、おれは少し安心した。あんなのに食べられるくらいなら、熊に襲われる方がましだ。
改めてよく観察すると、ボソボソの顔は、両目が不気味に光り、長い触覚が地面すれすれまで垂れ下がって、ゆっくり左右に揺れてレーダーのように見える。なんでこんな気味の悪い生き物を研究しようなんて思ったんだろう。
「でも本当に恐いのは、ギルギルのほうよ」女の子が言った。
「ギルギル?」
まったく検討もつかなかった。ボソボソがナナフシならギルギルっていったいなんだろう。少し名前の響きが恐ろしげで気味が悪い。
そのときまたしてもラッパの音が高らかに響き渡った。さっきとは違った激しい吹き方だった。
「たいへんだ! ギルギルまで現れたぞ!」男の子が叫び、再び窓の外をのぞき見る。
森の木々が激しく揺れていた。しばらくして、上の方に飛び出した植物の茎のようなものが見えた。それがまたとてつもなく大きく、巨大クレーンのようだった「何が来たって言うんだよ、キングコングか!」
そう叫んだ瞬間に、頭がぼわっと感電したようになった。体が浮き上がったみたいで、目の前が白くかすむ。
どすん!
気がつくと自分の部屋の椅子に座っていた。
顔に圧迫感があり、再びゴーグルの感触が戻っている。おれはあわててそのゴーグルをはぎ取った。
パソコンの画面には、さっきまで自分のいた場所と同じ景色が映し出されている。その下に『巨大昆虫の国』とタイトルがついている。
「まさか! ありえない!」
しかし夢とは思えなかった。女の子の手の感触がまだ残っている。
どたどた足音がして、かあちゃんが二階に駆け上がってきた。「まあ、その汗、どうしたのよ!」ドアを開けるなり言った。
その時初めて自分が汗びっしょりであることに気がついた。シャツが背中に張り付いて気持ち悪い。
「ちょっと運動不足なんで、腕立て伏せを百回ほどしてたんだよ」
「腕立て伏せ? そんなことしてる暇あるの? 明日塾のテストなんでしょ。今回成績が落ちたら、塾もパソコンも全部やめさせるからね! 馬鹿なことしてないで早く勉強を始めなさい! のんびりしてると父さんみたいになっちまうよ!」
「わかってるよ。今始めようと思ったんだ。いつも始めようとすると現れるんだから。待って、すぐ始めるから。だからパソコンは取り上げないで」
塾は辞めさせられてもいいからと言いそうになってやめた。かあちゃんをこれ以上刺激したくない。小言が多くなって、パソコンは確実に持って行かれちまう。
かあちゃんは首を左右に振り振り、ぶつぶつ言いながら部屋を出て行った。
足音が聞こえなくなると、おれは再びパソコンの前に座った。
「こんなに汗をかいてるんだ。さっきのは夢なんかじゃない!」
しばらくキーボードと格闘した。何回か試すうちに、使い方がわかってきた。それからはこのゲームに夢中になった。
ゴーグルをつけて画面の入口ボタンをクリックすると、目の前の光景が変わり、あの世界に行くことができる。まるで瞬間移動でもしたみたいで、本当にそこにいる感じがする。
おれの生活に新しい世界が加わった。コーイチとレイカだ。
二人はおれがどこから来たのか知りたがったが、いくら説明してもわかってはもらえなかった。しだいにそんなことはどうでもよくなり、おれがふらっと現れて、二人が相手をしてくれるようになった。
コーイチは少し荒っぽくて嫌な奴だけど、まあ、許せる範囲だ。レイカはとても明るくて優しい女の子だ。
「くそおやじ! くそおやじのくせにすごいものを発明しやがったな!」
今までの自分の世界が退屈に思えてきた。明るくて色鮮やかな世界がそこにある。家の中にこもってパソコンで自由研究なんて、馬鹿しくってやってられない。 なぜパソコンでこんなことができるのか理屈はさっぱりわからなかったが、おれはこの世界にのめり込んでいった。
初夏のすばらしい天気の日!
窓の外からは、虫取りに興じる子供たちの歓声が聞こえる。家の中にいるのはもったいない日だ。そんな日に、おれは出かけた。自分の家にいながら、冒険の旅に!
ここ銀杏が丘はかつて振興住宅街だった。ブールバールのある街としてもてはやされ、テレビでしきりに宣伝された。スーパーも理容室も電気屋もホームセンターもある人気の団地だった。
いつの間にかホームセンターがつぶれ、最近スーパーが退散した。すぐ隣にJRに近くて便利な団地が造成されたせいだが、住民の年齢も上がり、ゴーストタウンになる日も近かった。
隣にできた団地の名前は『洋光台』。名前の響きが違う。太陽が燦々と照りつけ、若者の声があふれている雰囲気。『銀杏が丘』じゃ黄色くなって枯れ落ちていくだけだ。
おれはそんな枯れ行く街で生まれた。ベビーカーに乗せるのも一苦労なほど、落ち着きのない子だった。積極性はあるがかといってなにをやっても一生懸命にやる気はなく、途中で投げ出してしまう。
サッカーが唯一長続きした趣味だった。小さい頃は近くのポポロ公園でおやじと一緒にサッカーをするのが休日の日課になっていた。おやじはおれをサッカー選手にしたかったようだ。一発当てておれの稼いだ金で優雅な暮らしをしたかったに違いない。何しろギャンブル好きだ。totoもよく買ってたし、競艇通いも十年は続けていた。
おれはおやじがいなくなってからサッカーへの興味を失った。もともとサッカーなんて好きじゃなかった。だっていくらボールをゴールに蹴り込んでも、少しも楽しくないんだから。おれは家で尻でもかきながらマンガでも読むのが分相応のだめな奴だ。それに昔から本音でものを言いすぎる。きれい事やお世辞がまったく言えない。
だから友達はできなかった。口が悪くて、何をしても楽しめない人間に近づいてくる物好きはいない。まあ、おれだって友達なんていらないと思ってる。うっとうしいだけだからね。ちょっとなんか言うと、傷ついたなんて文句を言ってくる。
毎日本を読んだりゲームをしたり、一人で過ごすのが楽しい。本は文句を言ってこないし、ゲームだってそうだ。ときどきうまくいかなくて、ゲーム機を投げ飛ばしたくなるときもあるけど、本当に投げることなんてない。腹の立つ度合いが違うんだな。
いなくなったおやじのことはすぐに忘れちまった。嫌いだったんだ。酒癖が悪くてすぐに殴るから。ゲームのプログラマーをしていたけど、おもしろい作品は何一つこの世に出さなかった。若い頃は天才と言われてたらしいけど、どこで道を誤ったのか、ろくなものは生み出せなかった。いつも下品な作品を作って、会社の上司に怒られてた。時々おやじが母さんを殴ってるところを見かけたけど、「役立たずのくせに、腕力だけは一人前ね!」なんて言い返されてた。かあちゃんもおやじがいなくなってせいせいしてるに違いない。でもわかんないな。男女の仲は複雑だってワイドショーで芸能リポーターがよく言ってるから。
でも人間は、『ハジ→』の歌にあるように、突然、「逆転満塁ホームラン」をかっ飛ばすことだってある。それも気がつかないうちにその準備ができていたりする。
その逆転満塁ホームランを見つけたのは、夏休みに入ったばかりで、蝉の鳴き声が体中にじんわりと染み込んでくるクソ暑い季節だった。
おれはエアコンもつけず、扇風機から送られてくる生暖かい風を額に受け、ひたすらパソコンに向かっていた。尻はかきすぎてあせもだらけになっていた。薬箱のメンタムを塗ったけど効きやしない。蓋に印刷してある『かわいこちゃんナース』の笑顔は何の足しにもならなかった。
汗をかきかき、尻をかきかき、時々痛みに顔をしかめながら、学校の宿題を終えるため、インターネットを使ってナナフシが何を食べるのか調べていた。担任の山中先生が夏休みの宿題に出した自由研究だ。
宿題をこんなに早く始めるのは初めてだった。暑苦しくてしたいことが何もない以上、宿題はいい暇つぶしだった。
おれはどうせするなら庭で捕まえたナナフシの研究に決めていた。カブトムシやクワガタはあまりに人気がありすぎておもしろみがない。まぁっっっったく取り柄がなくて目立たない生き物だけど、その健気さにおれは引かれている。いるかいないかわからないのに、見つけたときは妙に気持ち悪くて身震いしてしまう。そんなナナフシぐらいがおれには合っている。
でもなかなか知りたいことは見つけられなかった。人気がないんだから当然だけど、かといって今さらカブトムシやクワガタに鞍替えするのは癪だった。奴らは、偉そうにふんぞり返って、馬鹿にした目でこっちを見るエリート有名中学進学組と同じだ。
でも、本当にナナフシは人気がない。調べられることにも限界がある。尋ねる奴もいない。かあちゃんは虫なんて大嫌いだ。特にナナフシなんて日陰者は、見るのも嫌そうだった。
虫かごのナナフシを見て、「木の枝が歩いてるよ! そんな気持ち悪いもの捨てちゃいなさい! 虫かごが泣いてるよ!」
そう言い残して逃げていった。そこまで言わなくていいのに。ナナフシが不憫じゃないか。わかっちゃいないんだ。ナナフシほど印象がないのが印象的な生き物はいないのに。
「おれはナナフシの研究に決めた。絶対に最後までこれでいってやる!」
ただ、百科事典に出てるありきたりの解説だけじゃおもしろくもなんともない。やる気のない大学教授が印象のない生き物をレポートしてるんだから、おもしろいはずがない。独自の研究でノーベル賞でも何でも取ってやる。イグノーベル賞だったら夢じゃないかもしれない。この間も『バナナの皮は本当に滑るのか?』なんてくだらない研究をして日本人が賞を取ってた。
いろいろなサイトを訪ねているうちに、いつの間にかまったく関係ないスポーツニュースに興味が移って、無駄に時間が過ぎていく。いくらサッカーに興味を失っているといっても、久保や三苫の活躍には興奮する。
時間ばかりが過ぎる。そうこうしているうちにスポーツ記事にも嫌気がさして、パソコンのスイッチを叩き切ろうと思った。
そのときマイドキュメントの中の妙なアイコンに気がついた。トンボの絵柄で、とてもかわいらしく、鮮やかなピンクに点滅している。今時、女の子でも引きそうな絵柄だ。
「おやじも少女趣味だな」
思わずアイコンをクリックしてみた。まさに衝動的だった。まずいのは自分でもわかっていたが、性分だから仕方がない。この間も近所の女の子のスカートをめくりあげて学校に呼ばれ、生徒指導の鬼婆教員にしつこく説教された。赤いギンガムチェックのスカートが風になびいてちょうど良いくらいにひらひらしていた。中身を見たくなるのは当然ってもんだ。でもその鬼婆はなかなか許してくれなかった。「やられた相手の気持ちを考えなさい!」なんて偉そうなことを何遍も何遍も聞かされた。おれはただ単にひらひらするスカートに興味を覚えただけで、女の子だろうが野郎だろうがそんなことはどうでも良かった。それをあの鬼婆め。まあいいんだ。少なくともあの婆のスカートだけは頼まれたってめくることはない。
『ゴーグルをUSBに差し込んでください』
画面いっぱいに文字が出た。それを見るまでは、パソコンの横に置いてあるゴーグルとヘッドホンを組み合わせたようなものが何なのかわからなかった。耳に当てる部分のちょうど真ん中に電球がついていて、それが激しくオレンジ色に点滅している。
コードを空いているUSB端子に差し込んで、おそるおそる装着してみると、目の前が虹色に輝いて見えた。鮮やかすぎて目が痛い。
『このゲームは、あなたを不思議な世界に連れて行きます!』
頭の中で、女性の甘くてセクシーな声が響きわたった。
「こりゃ、大人のゲームなのか?」
しばらく迷っていた。おやじが、ゲームソフトは未完成だからさわっちゃいけないって言ってたからだ。
しばらくすると心臓の鼓動が聞こえるほど高くなり、誘惑に勝てなくなった。色の鮮やかさがとにかくすごい。とりあえずマウスを動かすと、目の前の黄色いカーソルが動く。『巨大昆虫の国』という真っ赤な文字をクリックしてみる。
画面が切り替わるのに少し時間がかかった。目の前が突然ブルー一色になり、光り輝いて前方に吸い込まれそうになる。それはまるで抜けるような青空と同じだった。衣服にまで染み入るような青、青、青。
「うわああああ! 助けて!」
目が痛くなって、画面をじっと見つめることができなくなった。しばらく体全体がしびれたままだったが、次第に宙に浮いたようになり、しびれはとれていった。
ゆっくりと目を開けると、まぶしさは美しい風景に変わっていた。住み慣れた北向きの薄暗い部屋じゃない。南国を思わせる風景が目の前に広がっていた。
遠くにエメラルドグリーンの海が見える。砂浜に並んでいるヤシの木が気持ち良さそうに左右に揺れている。部屋にいたはずなのに、いつの間にか屋外にいた。
目をこすってみるが、景色は変わらない。つけていたはずのゴーグルはなくなっている。
「おい、おまえ!」
急に呼ばれて振り向くと、男の子が立っていた。水泳選手のように体にぴったり張り付いたど派手な黄色いスーツを着ている。赤と青のしま模様入りだ。今時サーカスの奴でもそんなダサい服着てやしない。
「ここはいったいどこだ?」暗い声で聞いてみる。
「おまえ何者だ? そんな色あせたきたない服着て、何してるんだよ」
その男の子が近づいてきた。まるでごみ袋でも見るような目つきだ。
おれはあわてて自分の服を見たが、どこも汚れてはいない。腕を匂ってみたが臭くはない。
「おまえこそなんでそんな派手な服着てるんだ? 祭りでもあるのか? それともダンスの大会にでも出るつもりなのか? そんなの着てる奴は変態って決まってるんだぜ」
「まつり? ま・つ・り? なんだそりゃ。変なこと言うなよな。それにおいらの服のどこが派手なんだよ。おまえの服が地味すぎるんだろ! 人を変態呼ばわりしやがって、この野郎!」
そのとき、その子の後ろからパステルカラーのワンピースを着た女の子が近づいてきた。
おれの心臓はどきんとした。色白で目が大きく、鼻筋がすっと通った女の子だ。紫色の長い髪をポニーテールにして、耳には青い宝石のついたピアスをしている。ワンピースの下からすらりと伸びた桜色の足はぴったり真っ直ぐで完璧だ。
「おにいちゃん、どうしたの?」
女の子はおれの前まできて、大きな目を瞬いた。
「こんにちは。はじめまして。あたい、レイカって言うの」
「こ、こんにちは。お、おれ、おれ」
女の子に笑顔で挨拶されて、おれはしどろもどろになった。
「あなた、どこから来たの? この辺の子じゃないわね」
「なんだかよくわからないんだ。ここがどこかもわからない。急に目の前の景色が変わっちまって」
そのとき突然遠くの方から大きなラッパの音が聞こえてきた。
「たいへん! 戻りましょう!」
女の子が言って、おれの腕をつかんだ。とても柔らかくて温かい手で興奮してしまった。
「そんなやつほっとけよ!」
「だめよ。かわいそうじゃない」
「盗人かもしれないぞ。家のものをみんな盗られちまうぜ」
「ひどいこと言わないで。そんな子には見えないわ」
女の子がおれの腕を強く引っ張る。
男の子は、しかたないといった顔で、丘の上に向かって一気に走り出した。
「なんで、走らなきゃならねえんだよ!」
叫んでも二人とも答えてはくれない。二人のあまりの速さについていくのがやっとで、おれは疲れ切ってしまった。
「もう走れねえよ!」立ち止まって、中腰で大きく息をついた。
「しっかりして、もう少しなんだから!」
「怪物でも出たっていうのか?」
「そのとおりよ!」
「どこにもいないじゃないか!」
「あれが見えないなんて、あんた、どんな目をしてるのよ!」
辺りを見回したが、木立が並んでいるだけだ。
再び引きずられるように走らされて、ようやく頂上付近のログハウス風の山小屋にたどり着いた。使っている丸太にはエナメルのように輝く原色の塗料が塗られ、カラフルに色分けされている。
山小屋の中に飛び込むと、男の子が激しく入り口のドアを閉めて、かんぬきをかけた。
部屋の中も派手だった。派手すぎて、気分が悪くなる。家具もすべてカラフルに色分けされている。
「ふうー、これで一安心だ」男の子が言った。
「なんだよ、この派手な部屋。気持ち悪くていられやしないよ。おまえたち、本当に趣味が悪いな」
「いたくなきゃ、外に出てもいいんだぜ。ボソボソに踏まれちまえよ」
「なんだよ、それ?」
「おまえ、何も知らないんだなぁ。よく今まで生きてこられたもんだ」
男の子がばかにしたような目で見つめる。
「窓の外を覗いてみろよ。特に上の方を見てみな」
おれは窓辺に近寄ると、赤い水玉模様のカーテンを引き開けた。
何となくさっきより辺りが暗くなっている。
初めは大きな枯れ木が風にそよいでいるのかと思った。しかしあまりにも数が多すぎる。辺り一面に枯れ木がたくさん生えてきたみたいに見える。目を凝らしてよく見ると、それがゆっくりと移動しているのがわかる。
上の方を見ると、やっと全身が見えた。体中に鳥肌が立った。それはとてつもなく巨大なナナフシだった。胴体の太さは電柱ぐらいで、枯れた大木のような足でゆったりと家をまたぎ越えている。それも数え切れないほどの数だ。これだけたくさんいると、足の合間を縫って歩くのは一苦労だ。
「ボソボソを見るの初めてなの?」
女の子が目をくりくりさせて近づいてくる。
「もちろん初めてさ」
「いつもこの時間になると現れるのよ。あなたの家の近くにはいないの?」
「こんなでかいのはいない」
「そうなの。もう少し小さいのね。この家ぐらいの大きさかな?」
「とんでもない……」
本当のことを言おうと思ってやめた。「大きくても手のひらぐらいだよ」なんて、とても言えない。
「ボソボソって人間を食べるの?」
おれが聞くと、女の子が笑いをこらえながら言った。
「そうじゃないけど、あぶないでしょ。あんな大きな足で踏まれたらたいへんよ。確かに動作はゆっくりだし、よく見ていれば蹴られたりすることもないわ。でも前にふざけて外を走り回っていて足を踏まれた子がいるの。骨折して一月入院したわ。用心に越したことはないのよ。当番の大人が家に入るように、いつも合図してくれてるから、素直にそれに従ってるの」
この巨大ナナフシが肉食じゃないと聞いて、おれは少し安心した。あんなのに食べられるくらいなら、熊に襲われる方がましだ。
改めてよく観察すると、ボソボソの顔は、両目が不気味に光り、長い触覚が地面すれすれまで垂れ下がって、ゆっくり左右に揺れてレーダーのように見える。なんでこんな気味の悪い生き物を研究しようなんて思ったんだろう。
「でも本当に恐いのは、ギルギルのほうよ」女の子が言った。
「ギルギル?」
まったく検討もつかなかった。ボソボソがナナフシならギルギルっていったいなんだろう。少し名前の響きが恐ろしげで気味が悪い。
そのときまたしてもラッパの音が高らかに響き渡った。さっきとは違った激しい吹き方だった。
「たいへんだ! ギルギルまで現れたぞ!」男の子が叫び、再び窓の外をのぞき見る。
森の木々が激しく揺れていた。しばらくして、上の方に飛び出した植物の茎のようなものが見えた。それがまたとてつもなく大きく、巨大クレーンのようだった「何が来たって言うんだよ、キングコングか!」
そう叫んだ瞬間に、頭がぼわっと感電したようになった。体が浮き上がったみたいで、目の前が白くかすむ。
どすん!
気がつくと自分の部屋の椅子に座っていた。
顔に圧迫感があり、再びゴーグルの感触が戻っている。おれはあわててそのゴーグルをはぎ取った。
パソコンの画面には、さっきまで自分のいた場所と同じ景色が映し出されている。その下に『巨大昆虫の国』とタイトルがついている。
「まさか! ありえない!」
しかし夢とは思えなかった。女の子の手の感触がまだ残っている。
どたどた足音がして、かあちゃんが二階に駆け上がってきた。「まあ、その汗、どうしたのよ!」ドアを開けるなり言った。
その時初めて自分が汗びっしょりであることに気がついた。シャツが背中に張り付いて気持ち悪い。
「ちょっと運動不足なんで、腕立て伏せを百回ほどしてたんだよ」
「腕立て伏せ? そんなことしてる暇あるの? 明日塾のテストなんでしょ。今回成績が落ちたら、塾もパソコンも全部やめさせるからね! 馬鹿なことしてないで早く勉強を始めなさい! のんびりしてると父さんみたいになっちまうよ!」
「わかってるよ。今始めようと思ったんだ。いつも始めようとすると現れるんだから。待って、すぐ始めるから。だからパソコンは取り上げないで」
塾は辞めさせられてもいいからと言いそうになってやめた。かあちゃんをこれ以上刺激したくない。小言が多くなって、パソコンは確実に持って行かれちまう。
かあちゃんは首を左右に振り振り、ぶつぶつ言いながら部屋を出て行った。
足音が聞こえなくなると、おれは再びパソコンの前に座った。
「こんなに汗をかいてるんだ。さっきのは夢なんかじゃない!」
しばらくキーボードと格闘した。何回か試すうちに、使い方がわかってきた。それからはこのゲームに夢中になった。
ゴーグルをつけて画面の入口ボタンをクリックすると、目の前の光景が変わり、あの世界に行くことができる。まるで瞬間移動でもしたみたいで、本当にそこにいる感じがする。
おれの生活に新しい世界が加わった。コーイチとレイカだ。
二人はおれがどこから来たのか知りたがったが、いくら説明してもわかってはもらえなかった。しだいにそんなことはどうでもよくなり、おれがふらっと現れて、二人が相手をしてくれるようになった。
コーイチは少し荒っぽくて嫌な奴だけど、まあ、許せる範囲だ。レイカはとても明るくて優しい女の子だ。
「くそおやじ! くそおやじのくせにすごいものを発明しやがったな!」
今までの自分の世界が退屈に思えてきた。明るくて色鮮やかな世界がそこにある。家の中にこもってパソコンで自由研究なんて、馬鹿しくってやってられない。 なぜパソコンでこんなことができるのか理屈はさっぱりわからなかったが、おれはこの世界にのめり込んでいった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる