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01 ラウンド・ヘッズ
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オリヴァーは「その戦い」に参加して、敗北を経験した。
オリヴァーは王の政治に納得がいかなかった。特に星法院の恣意的な裁判と厳罰により、王の意のままに国を動かそうとするやり方が。
「そして重税。これでは王のみが栄える。われら議会派、ラウンド・ヘッズとしては、これを止めるのみ」
そう言って勇んで参じた「その戦い」だったが、結果はオリヴァーの属するラウンド・ヘッズの敗退である。
もう少し詳しく言うと、王を支持する騎士党、すなわちキャヴァリアーズに敗退したのだ。特に、キャヴァリアーズの名将、「狂奔の騎士」プリンス・ルパートの猛攻凄まじく、ラウンド・ヘッズは何度も撃ち破られた。
「一体、この夜の終わりまで何マイルなんだろう」
戦場を駆けるオリヴァーは、そうひとりごちた。
そう、正午に始まった戦闘は、夜にまでつづいていた。
洗練され、鍛え抜かれたキャヴァリアーズの相次ぐ攻撃に抗するため、オリヴァーは何度も出撃した。
しかしラウンド・ヘッズは、訓練もまともにしていない、寄せ集めの新兵しかおらず、オリヴァーについてくる者はいなくなってしまう。
それでもオリヴァーは単騎、キャヴァリアーズに挑んだ。
朝に……そう、夜の終わりに至るまで。
*
朝が来て、ラウンド・ヘッズは、これ以上の戦闘は不可能と判じ、撤退を決めた。
憤懣やるかたないオリヴァーは、ただただ地面を拳で叩き、涙を流すほかなかった。
「僕に、僕にキャヴァリアーズに匹敵するような兵があれば。訓練した、鍛え上げられた兵があれば!」
オリヴァーは決意した。
必ずや騎士党に匹敵する兵を作り上げる。
それさえあれば、たとえ「狂奔の騎士」プリンス・ルパートにすら負けない。
「見ていろ」
オリヴァーは遠く王の軍をにらんだ。
そして思う。
この王の支配という「夜」の終わりまであと何マイルあろうとも。
「いつかこの僕が貴様らを打ち破り、ロード・プロテクターとなる。そして王の支配を終わらせてやる!」
清教徒革命の最中、一六四四年のマーストン・ムーアの戦いにて、のちの護国卿オリヴァー・クロムウェル率いる鉄騎隊が「狂奔の騎士」プリンス・ルパートを撃破する、その二年前の出来事であった。
オリヴァーは王の政治に納得がいかなかった。特に星法院の恣意的な裁判と厳罰により、王の意のままに国を動かそうとするやり方が。
「そして重税。これでは王のみが栄える。われら議会派、ラウンド・ヘッズとしては、これを止めるのみ」
そう言って勇んで参じた「その戦い」だったが、結果はオリヴァーの属するラウンド・ヘッズの敗退である。
もう少し詳しく言うと、王を支持する騎士党、すなわちキャヴァリアーズに敗退したのだ。特に、キャヴァリアーズの名将、「狂奔の騎士」プリンス・ルパートの猛攻凄まじく、ラウンド・ヘッズは何度も撃ち破られた。
「一体、この夜の終わりまで何マイルなんだろう」
戦場を駆けるオリヴァーは、そうひとりごちた。
そう、正午に始まった戦闘は、夜にまでつづいていた。
洗練され、鍛え抜かれたキャヴァリアーズの相次ぐ攻撃に抗するため、オリヴァーは何度も出撃した。
しかしラウンド・ヘッズは、訓練もまともにしていない、寄せ集めの新兵しかおらず、オリヴァーについてくる者はいなくなってしまう。
それでもオリヴァーは単騎、キャヴァリアーズに挑んだ。
朝に……そう、夜の終わりに至るまで。
*
朝が来て、ラウンド・ヘッズは、これ以上の戦闘は不可能と判じ、撤退を決めた。
憤懣やるかたないオリヴァーは、ただただ地面を拳で叩き、涙を流すほかなかった。
「僕に、僕にキャヴァリアーズに匹敵するような兵があれば。訓練した、鍛え上げられた兵があれば!」
オリヴァーは決意した。
必ずや騎士党に匹敵する兵を作り上げる。
それさえあれば、たとえ「狂奔の騎士」プリンス・ルパートにすら負けない。
「見ていろ」
オリヴァーは遠く王の軍をにらんだ。
そして思う。
この王の支配という「夜」の終わりまであと何マイルあろうとも。
「いつかこの僕が貴様らを打ち破り、ロード・プロテクターとなる。そして王の支配を終わらせてやる!」
清教徒革命の最中、一六四四年のマーストン・ムーアの戦いにて、のちの護国卿オリヴァー・クロムウェル率いる鉄騎隊が「狂奔の騎士」プリンス・ルパートを撃破する、その二年前の出来事であった。
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