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02 執政官(コンスル)・カトゥルス
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カトゥルスは執政官の就任式を済ませると、早速に浴場へと向かった。
ローマの人たちは、皆、浴場が好きだ。
汗を流し、語り合う。
そういったローマ市民の楽しみが、そこにあった。
「邪魔するよ」
カトゥルスが入ったその一室には、すでに三人ほどの客がいた。
すなわち、最高神祇官メテッルス、同僚執政官アルビヌス、そして法務官ファルトである。
「やあやあ」
メテッルスはよほど浴場が好きらしく、上機嫌にカトゥルスを招じ入れた。
「こうして皆を浴場に呼んだのは、他でもない。今ここに来られた、カトゥルス君の差し金である」
「差し金」
真面目なファルトは目を剥く。
カトゥルスは冗談を言わないで下さいと言いながら、そのファルトの横に腰を下ろした。
「何せ初の三頭体制での執政だ。こうして、意思疎通を図っておいた方が良いと思ってね」
「しかし浴場とは」
アルビヌスは呆れたような、感心したような、どちらともつかない歎息を洩らす。
「いや、こうして集まること自体は構わないのだが、私は不要ではないのかね? それよりも急ぎ、シチリアに向かわれた方が」
アルビヌスは、自身がローマから離れられないことに引け目を感じているようだった。
カトゥルスは、「いや」と応じた。
「君がローマを離れないことも含めて、私がメテッルスどのにお願いしたのだよ、アルビヌス」
メテッルスはにやりと笑った。
「何しろ吾輩、目が見えぬ。ゆえに、これはと思う人物を執政官に推薦して、あとはその考えを聞いて、良いと思えば従う――つまり任せるつもりだった」
メテッルスは、ここ最近敗戦つづきの第一次ポエニ戦争において、特に海戦が芳しくないことに目をつけて、逆にそれを得意とする人材を探していた。プルケルといい、プッルスといい、ローマ海軍にはこれまで将帥に恵まれないまま、今に至っているからだ。
「そこでだ。カトゥルス君はなかなかの船乗りだ。あの負けっぱなしのローマ海軍の残存部隊を率いて、吾輩がパノルマスにて戦うのを支えてくれた」
ほんのわずか残された艦艇と、民間の漁船を糾合し、カトゥルスはカルタゴ艦隊の目を盗んでは、当時執政官だったメテッルスの軍団への補給に務めていた。
「あの支えがあったればこそ、吾輩はハスドルバルを打ち破ることができた」
「いえいえ、ひとえに最高神祇官の作戦の賜物でしょう」
カトゥルスは謙遜しているように聞こえるが、アルビヌスもファルトも、メテッルスの作戦こそがあのパノルマスの勝利を導いたことを知っている。
戦象軍団という脅威を擁するカルタゴ軍に、その戦象を塹壕にて足止めし、さらにその塹壕に潜んでいたローマ軽装歩兵が戦象に斬りつける、そういう作戦を。
そしてそれにより、カルタゴ軍はパニックに陥った象たちに襲われた。
そこへローマ軍団の本隊を叩きつけ、メテッルスはカルタゴの向こう脛に蹴りを入れた。
「……ま、昔のことはもういい。問題は、今と、これからのことじゃ」
咳払いをしてから、メテッルスはカトゥルスに「早く話を」と言って誤魔化した。
それはメテッルスの照れ隠しでもあるが、実際、今、カルタゴの良将ハミルカル・バルカがシチリアを席巻し、それはカルタゴ本国からの海運によって支えられ、このままではローマは駆逐されてしまう状況にあることは、確かだった。
話を振られたカトゥルスは「では」と、本題に入った。
「まず、敢えて三頭体制にしたのは、ローマ本国における内政と、シチリアにおける戦争を手分けしたいからだ」
「そのために、敢えて私がマルス神殿最高神官であることを持ち出したのか」
「そうだ」
だが、とカトゥルスはアルビヌスの肩を掴んだ。
「アルビヌス、内政と言ったが、それは単なる内政ではない。いわば、より過酷な戦いを、君に任せたい、否、君にしかできないと思ったからだ」
「過酷」
アルビヌスが反芻するように呟く。
ファルトは、一体なんのことやらと目をぱちくりとさせた。
「……結局のところ、カルタゴに勝つには、その生命線である船を叩かないと駄目だ。そのためには」
「そのためには」
いつの間にかメテッルスまで身を乗り出している。
今度はカトゥルスが咳払いをした。
「……そのためには、ローマ市民に、犠牲になってもらいたいと思います」
*
浴場を後にした面々は、特にアルビヌスとメテッルスは元老院へとすぐに向かった。
そして彼らは演説する。
「ローマの元老院と市民諸君、今こそ皆の力が必要である!」
力とは、金銭である。
艦船を作るための、金銭である。
二人は、富裕層であるローマ市民に、金銭の供出を求めたのである。
アルビヌスは戦場に赴けない自分の戦いがこれだと唱えた。
メテッルスはその戦場にいた思い出を語り、船こそがこの戦いの肝だと訴える。
結果。
ローマ市民からの資金提供により、約二百隻の五段櫂船が用意された。
「出帆!」
カトゥルスとファルトは、まずはローマの勢力圏内の海域に向かった。
新生ローマ艦隊は、乗組員もまた新たに募集したばかり。
「諸君、これより訓練を始める!」
二人は万全を期した。
一方で。
カルタゴにおいては、ハミルカル・バルカがシチリアで無敗を誇ることにより、逆にある動きを生じていた。
「バルカは無敵だ。もう海軍は必要なかろう」
カルタゴ国内の鳩派ともいうべき党派が、長引く戦争に愛想を尽かし、シチリアに進駐している陸軍は仕方ないとして、海軍は解散すべきと訴えた。
国力が疲弊していることは事実なので、それが通ってしまった。
海軍に向けていた人材と資金を国内に向け、カルタゴとしては戦後を見据えて動き出したと言ってもいいが、ハミルカルとしてはたまったものではなかった。
「少なくとも、本国からシチリアへの輸送は継続しろ」
矢のような催促をカルタゴ本国へと送るが、それは無視される。
とうとう痺れを切らしたハミルカルが「帰る」とまで言い切ったため、いざというときは、鳩派の領袖たるハンノが艦隊を率いてシチリアに向かうと約束し、ハミルカルを宥めすかした。
こうしたカルタゴ側の事情により、ローマは貴重な時を稼ぎ、艦隊新設と調練に充てることができたのである。
こうして一年近くが過ぎ、カトゥルスとファルトの、執政官と法務官の任期が迫ってきた。
「もうよかろう」
「はい」
ついにカトゥルスとファルトは艦隊の練達に満足し、シチリアへと舳先を向けた。
ところで、当時の共和政ローマには、執政官と法務官は、前執政官と前法務官として、権限をもう一年保持する制度があった。つまり、事実上任期を一年延長していた。
さらに。
「今期の執政官を、ケルコが?」
カトゥルスの弟、ケルコが現任の執政官となり、ローマは「カトゥルス体制」を続行する意思を示した。
むろん、裏にメテッルスとアルビヌスの思惑が働いていたのは、言うまでもない。
ローマの元老院と市民諸君と呼びかけて。
ローマの人たちは、皆、浴場が好きだ。
汗を流し、語り合う。
そういったローマ市民の楽しみが、そこにあった。
「邪魔するよ」
カトゥルスが入ったその一室には、すでに三人ほどの客がいた。
すなわち、最高神祇官メテッルス、同僚執政官アルビヌス、そして法務官ファルトである。
「やあやあ」
メテッルスはよほど浴場が好きらしく、上機嫌にカトゥルスを招じ入れた。
「こうして皆を浴場に呼んだのは、他でもない。今ここに来られた、カトゥルス君の差し金である」
「差し金」
真面目なファルトは目を剥く。
カトゥルスは冗談を言わないで下さいと言いながら、そのファルトの横に腰を下ろした。
「何せ初の三頭体制での執政だ。こうして、意思疎通を図っておいた方が良いと思ってね」
「しかし浴場とは」
アルビヌスは呆れたような、感心したような、どちらともつかない歎息を洩らす。
「いや、こうして集まること自体は構わないのだが、私は不要ではないのかね? それよりも急ぎ、シチリアに向かわれた方が」
アルビヌスは、自身がローマから離れられないことに引け目を感じているようだった。
カトゥルスは、「いや」と応じた。
「君がローマを離れないことも含めて、私がメテッルスどのにお願いしたのだよ、アルビヌス」
メテッルスはにやりと笑った。
「何しろ吾輩、目が見えぬ。ゆえに、これはと思う人物を執政官に推薦して、あとはその考えを聞いて、良いと思えば従う――つまり任せるつもりだった」
メテッルスは、ここ最近敗戦つづきの第一次ポエニ戦争において、特に海戦が芳しくないことに目をつけて、逆にそれを得意とする人材を探していた。プルケルといい、プッルスといい、ローマ海軍にはこれまで将帥に恵まれないまま、今に至っているからだ。
「そこでだ。カトゥルス君はなかなかの船乗りだ。あの負けっぱなしのローマ海軍の残存部隊を率いて、吾輩がパノルマスにて戦うのを支えてくれた」
ほんのわずか残された艦艇と、民間の漁船を糾合し、カトゥルスはカルタゴ艦隊の目を盗んでは、当時執政官だったメテッルスの軍団への補給に務めていた。
「あの支えがあったればこそ、吾輩はハスドルバルを打ち破ることができた」
「いえいえ、ひとえに最高神祇官の作戦の賜物でしょう」
カトゥルスは謙遜しているように聞こえるが、アルビヌスもファルトも、メテッルスの作戦こそがあのパノルマスの勝利を導いたことを知っている。
戦象軍団という脅威を擁するカルタゴ軍に、その戦象を塹壕にて足止めし、さらにその塹壕に潜んでいたローマ軽装歩兵が戦象に斬りつける、そういう作戦を。
そしてそれにより、カルタゴ軍はパニックに陥った象たちに襲われた。
そこへローマ軍団の本隊を叩きつけ、メテッルスはカルタゴの向こう脛に蹴りを入れた。
「……ま、昔のことはもういい。問題は、今と、これからのことじゃ」
咳払いをしてから、メテッルスはカトゥルスに「早く話を」と言って誤魔化した。
それはメテッルスの照れ隠しでもあるが、実際、今、カルタゴの良将ハミルカル・バルカがシチリアを席巻し、それはカルタゴ本国からの海運によって支えられ、このままではローマは駆逐されてしまう状況にあることは、確かだった。
話を振られたカトゥルスは「では」と、本題に入った。
「まず、敢えて三頭体制にしたのは、ローマ本国における内政と、シチリアにおける戦争を手分けしたいからだ」
「そのために、敢えて私がマルス神殿最高神官であることを持ち出したのか」
「そうだ」
だが、とカトゥルスはアルビヌスの肩を掴んだ。
「アルビヌス、内政と言ったが、それは単なる内政ではない。いわば、より過酷な戦いを、君に任せたい、否、君にしかできないと思ったからだ」
「過酷」
アルビヌスが反芻するように呟く。
ファルトは、一体なんのことやらと目をぱちくりとさせた。
「……結局のところ、カルタゴに勝つには、その生命線である船を叩かないと駄目だ。そのためには」
「そのためには」
いつの間にかメテッルスまで身を乗り出している。
今度はカトゥルスが咳払いをした。
「……そのためには、ローマ市民に、犠牲になってもらいたいと思います」
*
浴場を後にした面々は、特にアルビヌスとメテッルスは元老院へとすぐに向かった。
そして彼らは演説する。
「ローマの元老院と市民諸君、今こそ皆の力が必要である!」
力とは、金銭である。
艦船を作るための、金銭である。
二人は、富裕層であるローマ市民に、金銭の供出を求めたのである。
アルビヌスは戦場に赴けない自分の戦いがこれだと唱えた。
メテッルスはその戦場にいた思い出を語り、船こそがこの戦いの肝だと訴える。
結果。
ローマ市民からの資金提供により、約二百隻の五段櫂船が用意された。
「出帆!」
カトゥルスとファルトは、まずはローマの勢力圏内の海域に向かった。
新生ローマ艦隊は、乗組員もまた新たに募集したばかり。
「諸君、これより訓練を始める!」
二人は万全を期した。
一方で。
カルタゴにおいては、ハミルカル・バルカがシチリアで無敗を誇ることにより、逆にある動きを生じていた。
「バルカは無敵だ。もう海軍は必要なかろう」
カルタゴ国内の鳩派ともいうべき党派が、長引く戦争に愛想を尽かし、シチリアに進駐している陸軍は仕方ないとして、海軍は解散すべきと訴えた。
国力が疲弊していることは事実なので、それが通ってしまった。
海軍に向けていた人材と資金を国内に向け、カルタゴとしては戦後を見据えて動き出したと言ってもいいが、ハミルカルとしてはたまったものではなかった。
「少なくとも、本国からシチリアへの輸送は継続しろ」
矢のような催促をカルタゴ本国へと送るが、それは無視される。
とうとう痺れを切らしたハミルカルが「帰る」とまで言い切ったため、いざというときは、鳩派の領袖たるハンノが艦隊を率いてシチリアに向かうと約束し、ハミルカルを宥めすかした。
こうしたカルタゴ側の事情により、ローマは貴重な時を稼ぎ、艦隊新設と調練に充てることができたのである。
こうして一年近くが過ぎ、カトゥルスとファルトの、執政官と法務官の任期が迫ってきた。
「もうよかろう」
「はい」
ついにカトゥルスとファルトは艦隊の練達に満足し、シチリアへと舳先を向けた。
ところで、当時の共和政ローマには、執政官と法務官は、前執政官と前法務官として、権限をもう一年保持する制度があった。つまり、事実上任期を一年延長していた。
さらに。
「今期の執政官を、ケルコが?」
カトゥルスの弟、ケルコが現任の執政官となり、ローマは「カトゥルス体制」を続行する意思を示した。
むろん、裏にメテッルスとアルビヌスの思惑が働いていたのは、言うまでもない。
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