いつの日か、きみとサンタクロースと

名木雪乃

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クリスマス編

94 運命の人

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 リジーはジョンに抱きしめられた状態でしばらく大人しくしていたが、あまりに心地よく、立ったままだったが眠くなってきた。

(ジョンの腕の中は幸せがいっぱい。私をいつでも想ってくれているってわかるから。私も同じ気持ちだってジョンに届いてるよね)

「これから、ベイサイドエリアに行こうか。イルミネーションが綺麗らしいし花火もあがるそうだ。それから混んでるかもしれないけど、あの桟橋も歩こう!」
「わあ、嬉しい! 桟橋行きたい! 花火も見たい!」

 ジョンの言葉に、リジーはすぐに目が冴えた。

「でも、その前に……窓を閉めよう」

 ジョンがせくように開け放たれていた店の窓を次々閉め始め、壁のヒーターのスイッチを入れるのが見えた。

(あれ? 今からベイサイドへ行くのに、なんでヒーターをつけたの?)


 リジーも手伝って、窓を閉めてゆく。

 最後の窓を閉めて、振り向こうとすると、急に体が浮いた。

「きゃ……!?」

 ジョンに抱き上げられている。
 慌てふためくリジーにジョンが顔を寄せて囁く。

「油断した? 会えなかった分のきみを補充したい……」
「え? 補充?」

 リジーは意味がわからず首をかしげたが、ソファに優しく降ろされた途端に思い当る。

 着ていたコートは自然に脱がされ、もうジョンの腕の中に埋まっている。

(なんだかジョンの眼差しが甘すぎて恥ずかしい。私、もう、どうにかなりそう……)

 リジーは、近づいてくるジョンの濃い茶色の瞳に見入られ、身体中急激に火照り、固まって、そして唇から蕩けて行った。


 リジーは、朦朧とする意識の中で、思い出していた。

 突然抱き上げられた感覚。前にも……。

 なぜかとても懐かしい。

 前にジョンに抱き上げられたときも同じ感覚を持ったが、その時は最後まで思い出せなかった。
 でも、今日はすべてがはっきりわかった。

「ジョン、私たち、ずっと前にも会ったことある?」

 ソファでリジーを腕の中に囲いながら、その額や頬にせわしげにキスを落としていたジョンの唇が止まった。

「私が小学生の頃、外でローラースケートで転んでしまった時、偶然その場にいて助けてくれた優しいお兄さんがいたの。そのお兄さんは擦り傷を作った私を軽々と抱えて、ものすごいスピードでうちまで走って連れて行ってくれた。そして、私のお父さんはサンタクロースだって言っても変な顔しないで、うちにも来てくれたって……。そのお兄さんは髪は茶色だったけど、ジョンみたいに濃い茶色の瞳で……」


『お母さん……。このお兄さんに、捕まった』


「あの時、きみに捕まったのは僕の方だよ」
「髪の色が違ってた……し、今まではっきり思い出せなくて、気がつかなかったけど、本当に?」
「あの時は、髪を染めていたんだ」

 ジョンが苦笑いをしている。

「……うそ……」

 リジーはジョンの首に、子どもの頃から比べると多少長くなった腕を回してしがみつく。

「ジョンだったんだ……」

(だからお母さんは、会ってからのお楽しみって言ったの? 私が気付けなかっただけだった)

「ジョン、私に捕まったからには覚悟してね」
「それは僕の台詞だよ。……もうきみを逃すつもりはないから。これから先もずっと放さない」
「うん」

 リジーは回した腕に力を込めた。

(あの時、私の怪我が酷いと思って、心配して慌てて抱き上げて、家まで懸命に走ってくれた。身体を預けた時の、この安心感は紛れもなくジョンだったのに、何度も抱き上げてもらったのに、どうして今まで気が付かなかったんだろう。あの瞬間に、ジョンに捕まった。ううん、私が捕まえていたんだ)


 運命の人を。

 濃い茶色の瞳が、今は私だけを映す。


「リジー……、エリーゼ」



 私の名前を呼ぶ、穏やかで優しい声。



 これからもずっと一緒。

 いつの日も……。


――――――――――――――――――――――

 本編は完結です。
 長い作品にラストまでお付き合いくださった皆様に、心から感謝いたします。
 
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