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episode2
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それは一瞬だった。僕が右手を押し当てた瞬間周りが白い光に包まれた。直ぐに光は消え。その代わりに僕は感じた事のない疲労感に襲われていた。
「ゔぅ .. 」
暫くして蠢く様な青年の声に意識をそちらに戻すと目を薄ら開けた。本調子ではない様だがどうやら成功したらしい。少年は泣いて喜び青年もといリリムにしがみ付いて居る。
( 良かった .. )
僕はほっと胸を撫で下ろした。疲労感も段々薄れてきて居る様だ。まさか自分も魔法を使えるなんて思ってもみなかった。回復魔法 ? と言うのだろうか。よくゲームの中では聞いた事ある言葉だが現実に自分が使えるとなるとなんとも不思議だった。
リリムも起き上がれる迄に回復すると僕を視界に捉えまじまじと見つめてきた。そんなに見つめられると照れるのだけれど。少年もそうだったがリリムもどことなく僕に似ていた。どちらも美形である。リリムは肩まで伸びた赤髪に少年と同じ深紫の目をしていた。大人びて見えるから18~20歳だろうか。少年は僕と同じか下に見える。
「.. お前、まさか星の巫女か ?」
リリムの少し低く落ち着いた声がそう言葉を紡ぐ。聞いた事のない単語に頭にはてなマークが浮かぶ。
「ほしのみこ .. ?」
僕が首を傾げ問えばリリムは静かに頷いた。どうやら星の巫女とは天からの授かりもので通常の人とは違う身なりをして回復魔法が使えるらしい。1000年に1人産まれるか産まれないかという確率らしくとても珍しいようだ。そして何より僕の右手に埋め込まれた石が星のかけらを身につけていると言う星の巫女に瓜二つなようだった。
「もしもそうなら十数年前に行方不明になった俺の従兄弟 .. と同じと言うことになる。.. 星の巫女は王族に稀に産まれる。それ以外は例がない。.. 何よりその顔が俺たちに似ているだろ ?」
僕の腕を掴み口早に言ったリリムは確かめる様に更に距離を詰めた。いきなりの事に僕は事態が把握出来ず混乱した。
「まってまって、僕はここに住んでる一般人だよ」
相手の何もかも飲み込む様な深紫の瞳に怖くなり手を振り解くと目線を逸らし距離を取る。相手もまさか失踪した従兄弟が現れるとは思ってなかった様で複雑な表情をしている。
「死んだと聞かされたが、まさかこんな所に匿われていたなんて」
青年はぶつぶつと独り言を呟いている。少年はリリムの服の袖を掴み不安そうだ。
「.. もしもそうであるのなら保護して連れ帰る必要がある」
.. 本気な目に僕は怖くなって走り出した。悪い人には見えないけれどなぜかその場から逃げ出していた。リリムも走って追いかける体力は回復していないのだろう呆気に取られた様子でただ見送っている。僕は走りながら言われたことを頭で巡らせた。もしも僕が失踪した従兄弟だったとしたら祖母は ? 一体誰なんだ。
考えれば考えるほど悪い方に思考がいって自然と涙が溢れた。まさかあの優しい祖母が悪者のはずがない。何かの間違いだ。と何度も自分に言い聞かせ自分の家へと急いでいた。知るのは怖かったが何も知らないまま彼らと共に行く方が怖かった。
「ゔぅ .. 」
暫くして蠢く様な青年の声に意識をそちらに戻すと目を薄ら開けた。本調子ではない様だがどうやら成功したらしい。少年は泣いて喜び青年もといリリムにしがみ付いて居る。
( 良かった .. )
僕はほっと胸を撫で下ろした。疲労感も段々薄れてきて居る様だ。まさか自分も魔法を使えるなんて思ってもみなかった。回復魔法 ? と言うのだろうか。よくゲームの中では聞いた事ある言葉だが現実に自分が使えるとなるとなんとも不思議だった。
リリムも起き上がれる迄に回復すると僕を視界に捉えまじまじと見つめてきた。そんなに見つめられると照れるのだけれど。少年もそうだったがリリムもどことなく僕に似ていた。どちらも美形である。リリムは肩まで伸びた赤髪に少年と同じ深紫の目をしていた。大人びて見えるから18~20歳だろうか。少年は僕と同じか下に見える。
「.. お前、まさか星の巫女か ?」
リリムの少し低く落ち着いた声がそう言葉を紡ぐ。聞いた事のない単語に頭にはてなマークが浮かぶ。
「ほしのみこ .. ?」
僕が首を傾げ問えばリリムは静かに頷いた。どうやら星の巫女とは天からの授かりもので通常の人とは違う身なりをして回復魔法が使えるらしい。1000年に1人産まれるか産まれないかという確率らしくとても珍しいようだ。そして何より僕の右手に埋め込まれた石が星のかけらを身につけていると言う星の巫女に瓜二つなようだった。
「もしもそうなら十数年前に行方不明になった俺の従兄弟 .. と同じと言うことになる。.. 星の巫女は王族に稀に産まれる。それ以外は例がない。.. 何よりその顔が俺たちに似ているだろ ?」
僕の腕を掴み口早に言ったリリムは確かめる様に更に距離を詰めた。いきなりの事に僕は事態が把握出来ず混乱した。
「まってまって、僕はここに住んでる一般人だよ」
相手の何もかも飲み込む様な深紫の瞳に怖くなり手を振り解くと目線を逸らし距離を取る。相手もまさか失踪した従兄弟が現れるとは思ってなかった様で複雑な表情をしている。
「死んだと聞かされたが、まさかこんな所に匿われていたなんて」
青年はぶつぶつと独り言を呟いている。少年はリリムの服の袖を掴み不安そうだ。
「.. もしもそうであるのなら保護して連れ帰る必要がある」
.. 本気な目に僕は怖くなって走り出した。悪い人には見えないけれどなぜかその場から逃げ出していた。リリムも走って追いかける体力は回復していないのだろう呆気に取られた様子でただ見送っている。僕は走りながら言われたことを頭で巡らせた。もしも僕が失踪した従兄弟だったとしたら祖母は ? 一体誰なんだ。
考えれば考えるほど悪い方に思考がいって自然と涙が溢れた。まさかあの優しい祖母が悪者のはずがない。何かの間違いだ。と何度も自分に言い聞かせ自分の家へと急いでいた。知るのは怖かったが何も知らないまま彼らと共に行く方が怖かった。
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