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40 贋作師との対峙
場所は、王都の外れにひっそりと建つ古びた工房。
すすけた窓と重たい木の扉。
中からは薬品と金属の匂いが漂う。
黒衣の外套をまとい、足を踏み入れた。
「失礼します」
中に入ると年のころ50前後の男性がいた。
白髪混じりの髪を後ろで束ね、眼鏡をかけて、宝石の研磨をしていた。
「……なんだい。今日はもう注文は受けていないよ。お嬢様」
「ええ。注文ではありませんが、お聞きしたいことがあって」
「なんだい。邪魔しにきたってわけじゃなさそうだな」
「少し、昔のあなたのお仕事について伺いたく存じます」
「……昔の?」
静かに歩を進め、カウンター越しに声を落とす。
「黎明の瞳をご存知ですか?」
「そりゃ。この国で宝石に関わる仕事をしていて知らない職人はいない」
「そうですわね。とても有名な宝石です」
「ああ。知らない奴はモグリだな」
「話を戻します。黎明の瞳にそっくりな石を作ったことは?」
その瞬間、贋作師の手がぴたりと止まった。
「さあ。なんのことだか。私は宝石の研磨師。王家の宝なんぞに縁のない話で」
「そうでしょうか?」
カバンの中に入れてあった巾着から小さな箱を取り出す。そっと開け、中の石を机に置く。
「王家の秘宝である黎明の瞳の贋作が見つかりました。贋作に使われていた鉱石、原産は南端の鉱山。細工を施せるのは現在あなたしかいないと聞きました」
贋作氏の瞳が細められる。
「なるほど。調べはつけてきたのか。お嬢様にしては随分と熱心だ」
「個人的に調べたわけではありません。これは王命のもとに行っている調査です」
「……マルグリート嬢ちゃんが自分から話すわけではないだろうし、あんたの調査能力が上だったってことか」
「あなたが作った贋作で、王家が恥をかいたのです。知らなかったでは済まされません」
「知らなかった? ふん。こう言われたんだ。展示するだけだと。どこで展示するかは聞いていないし、中身なんて誰も見ない。私はただ頼まれた通りの細工をした。それだけだ」
「あなたは王家の威信を削ぐ片棒を担いだ。それで満足ですか?」
一瞬だけ揺らぎが走るのが見えた。
「あのプライドの高い女があんたみたいな小娘に負けたのか。昔から気位だけは高かった。だがなお嬢さん」
「はい。なんでしょう?」
「あんたが見抜いたと聞いたとき、私はゾッとした。あれは私の最高傑作だったからな」
すすけた窓と重たい木の扉。
中からは薬品と金属の匂いが漂う。
黒衣の外套をまとい、足を踏み入れた。
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「……なんだい。今日はもう注文は受けていないよ。お嬢様」
「ええ。注文ではありませんが、お聞きしたいことがあって」
「なんだい。邪魔しにきたってわけじゃなさそうだな」
「少し、昔のあなたのお仕事について伺いたく存じます」
「……昔の?」
静かに歩を進め、カウンター越しに声を落とす。
「黎明の瞳をご存知ですか?」
「そりゃ。この国で宝石に関わる仕事をしていて知らない職人はいない」
「そうですわね。とても有名な宝石です」
「ああ。知らない奴はモグリだな」
「話を戻します。黎明の瞳にそっくりな石を作ったことは?」
その瞬間、贋作師の手がぴたりと止まった。
「さあ。なんのことだか。私は宝石の研磨師。王家の宝なんぞに縁のない話で」
「そうでしょうか?」
カバンの中に入れてあった巾着から小さな箱を取り出す。そっと開け、中の石を机に置く。
「王家の秘宝である黎明の瞳の贋作が見つかりました。贋作に使われていた鉱石、原産は南端の鉱山。細工を施せるのは現在あなたしかいないと聞きました」
贋作氏の瞳が細められる。
「なるほど。調べはつけてきたのか。お嬢様にしては随分と熱心だ」
「個人的に調べたわけではありません。これは王命のもとに行っている調査です」
「……マルグリート嬢ちゃんが自分から話すわけではないだろうし、あんたの調査能力が上だったってことか」
「あなたが作った贋作で、王家が恥をかいたのです。知らなかったでは済まされません」
「知らなかった? ふん。こう言われたんだ。展示するだけだと。どこで展示するかは聞いていないし、中身なんて誰も見ない。私はただ頼まれた通りの細工をした。それだけだ」
「あなたは王家の威信を削ぐ片棒を担いだ。それで満足ですか?」
一瞬だけ揺らぎが走るのが見えた。
「あのプライドの高い女があんたみたいな小娘に負けたのか。昔から気位だけは高かった。だがなお嬢さん」
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