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「お父様は、嘆いていても戻ってこないわ。だけど、私はあなたたちが、あなたたち以外にも誰かが傷付く姿をこれ以上見たくないわ……」

「シムカ様、私たちにも成すべきことがあります。それをお分かりいただけますか?」

「えぇ。だからこそ、私はこうして立ち上がったのよ」

 そう言ったシムカの両手は、淡い光に包み込まれている。

 突然の変化にそこにいた誰もが驚き、動けずにいた。

 シムカの手はゆっくりとリージュの肩へと近付いていく。

 不思議とリージュは彼女の方を見たまま動けずにいたが、その光から感じられるものはとても柔らかいものである。身を任せるように触れられるのをじっと待っている。

 トンッ、と優しく乗せたその瞬間、スッっと吸い込まれるようにリージュの中へと吸収されていき、光は消えてしまった。

 それと同時に、リージュの身体から力が漲っていく。自身の変化に驚きながらも、剣をぎゅっと握りしめ、フィンに向き合う。

 リージュに一瞬怯みながらも、向かってこようとする相手に備える。

 だが、気付いたらときにはリージュが目の前に迫っており、その攻撃に倒れ込んでしまった。
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