上 下
75 / 124
5

5-21

しおりを挟む
 憂いを帯びたその顔には、何かを精一杯訴えかけたい様子であった。

「そんなことはないわ。けれども、私の国の儀式は破れない……。だから約束するわ。二人の代わりに、私が全力で阻止するわ」

「……それなら、俺はひ……陛下に任せます」

「もぉ、いい加減名前で呼んでくれたっていいのに、ルージュったら」

「それで、俺たちはどこへ向かえばいいんだ?」

「それは心配しなくていいわよ。私が今から送るわ」

 どこかへと案内するのかと思っていたら、シムカは右足のヒールを思い切り鳴らす。

 それを合図にしたかのように、ルージュとリージュを中心とした模様のようなものが床から浮かび上がる。二人だけを囲むそれは、シムカの手を合図とするように徐々に光を放っていく。
しおりを挟む

処理中です...