夏色フォトグラフィ【一部公開】

まつのこ

文字の大きさ
2 / 5
1

1-2

しおりを挟む
 伝統のあるこの大学は、人口の多い都市に建っている割には広い敷地面積を誇っている。建物はいくつかあり、場所によって役割が異なっている。研究室の集まっている建物、教室の集まっている建物。

 奏たち含め、部活やサークルの活動場所として部室棟がある。しかし、団体によっては人数が多すぎて入り切らない。そのため、空き教室を活動場所として貸し出して使うことも可能である。写真部はかなり人数が多いため、その対象になっている。

 慣れた足取りで奏は『4』と書かれた建物へ入っていった。目の前にある階段を上り、二階に着くとすぐにトイレへ入る。空調もないこの空間は熱の籠もった場所であまり長居したくない。それでも、直射日光が当たらないだけ多少は涼しかった。

 そそくさと水道の前に立つと、蛇口を捻り勢いよく水を出す。かばんとカメラを後ろに回し、冷たい水が出始めた頃合いになると、そこへ奏が頭を入れる。水は汗と混じり、髪の毛を濡らして顔まで垂れていく。顔を左右に傾けて全体を濡らしていく頃には、シャワーを浴びたようにずぶ濡れになっていた。

 シャツまで水滴が飛んで濡れた頃になってようやく満足したのか、水を止めた。ポタポタと水滴の垂れる頭をその場で止め、かばんの中へ右手を入れて何かを探している。

 そこから取り出したのは、フェイスタオルだった。頭からすっぽりと被ると、ガシガシと手を動かして水気を拭き取る。水分は髪からタオルへと移動していき、今度はタオルが湿っぽくなるが、元が冷たい水だっただけあって少しひんやりとしている。

「ふぅ……」

 あらかた拭き取ると、タオルを首に掛けてトイレを後にした。

 廊下に戻り、活動場所の教室を目指して歩き出す。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。

丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。 イケメン青年×オッサン。 リクエストをくださった棗様に捧げます! 【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。 楽しいリクエストをありがとうございました! ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

神父様に捧げるセレナーデ

石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」 「足を開くのですか?」 「股開かないと始められないだろうが」 「そ、そうですね、その通りです」 「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」 「…………」 ■俺様最強旅人×健気美人♂神父■

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

宵にまぎれて兎は回る

宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…

ふたなり治験棟

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

処理中です...