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プライステイスト

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 堪能したいもっと繰り返したい、とコウの中に様々な想いが募っていき、タクトに触れながら新たにワインをカップの中に注いでいた。

 二度目の触れ合いに満足したところで、再び離れていった。再度コウが飲もうとしたところで、その行為を制止された。

「今度は俺が~」

 タクトがコウからカップを奪い、それを口の中へと入れていく。しかし、その勢いのままゴクリと飲んでしまった。

 あっ、と小さく呟くと、目の前のカップを持った男は堪えながら徐々に笑いが大きくなっている。

 自分の行動のせいではあるが、他人に笑われると不本意でしかなかった。頬を膨らませながらコウを睨む。

 その行為に愛おしさすら感じており、そっと手を伸ばしたコウの手は今までの中で一番優しく髪を撫でるという刺激を与えていた。

 的確に与えられるその刺激はタクトをうっとりとさせ、若干興奮状態にあった彼を落ち着かせる効果すらあった。その手に心を委ね、ゆっくりと目を閉じていく。

「んっ……」
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