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15. 崩れ落ちていく未来
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「えっ!? もう行っちゃうの?」
声が震えた。やっと再会できたのに。まだ話したいことが山ほどあるのに――――。
「あら? キスが足りなかった?」
振り返ったリベルが、悪戯っぽくウインクする。艶やかな唇が妖艶に光った。
「そ、そんなんじゃないよ!」
慌てて否定するが、頬の熱さは隠せない。初キスの余韻が、まだ唇に残っている。
その時だった――――。
ズドォォン!
爆発音が世界を震撼させた。
「おわぁ!」
校舎が激しく揺れ、ユウキはよろめいた。一体何が起きた?
「リベル、これは……、へ?」
振り返ると——信じがたい光景が広がっていた。
リベルから、色が抜け落ちていく。
砂時計の砂が落ちるように、生気が失われていく。瑞々しい肌が灰色に、碧眼が濁っていくではないか。
突然、リベルが喉を押さえた。
ぐっ……ぐぐっ……。
苦悶の声。膝が折れる。
「リ、リベル……?」
恐怖に声が震えた。
彼女の体は見る見るうちに漆黒の人形と化し、夕陽を冷たく反射するだけの物体になっていく。
「リベルぅ!」
ユウキはとっさに駆け寄り、崩れ落ちる体を支えた。腕の中で、彼女が震えている。冷たく、硬く、生命を失いつつある。
「ど、どうしたの……?」
必死に問いかけるが、答えはない。
「く、苦し……」
かすれた声と共に、体に亀裂が走り始めた。
美しい顔が、彫像のようにひび割れていく。完璧だった肌が、砂のように崩れ始める。
「リ、リベル……?!」
何もできない。ただ抱きしめることしか――――。
「た、助け……」
最後の言葉は、風に消えた。
顔が砂となって崩れ、体が粒子となって零れ落ちていく。黒い砂鉄のような粒子が、ユウキの指の間から流れ落ちていく。
「いやぁ! リベルぅ!!」
必死に掬い上げようとするが、砂は容赦なく零れ続ける。つい先ほどまで温かかった体が、今や無機質な砂鉄の塊と化している。
「ダメだよぉ!」
叫んでも、祈っても、何も変わらない。
やがて、リベルだったものは、コンクリートの上に黒い砂山となってしまったのだ。
「な、なんで……? リベルぅ……」
呆然と立ち尽くす。
理解が追いつかない。受け入れられない。つい今しがたキスをした少女が、もう存在しない――――。
くぅぅぅ……。
深い溜息と共に顔を上げる。
街のあちこちから黒煙が立ち上っている。信号は消え、クラクションが鳴り響く。混乱が街を包んでいた。
「停電か!?」
スマホを確認する。圏外。ネットも繋がらない。
「くっ、全部落とされたのか……」
視線が黒い粒子の山に戻る。
――ネットと電力の喪失。
リベルはそれらに依存していたのか。だとすれば、これは死ではない。冬眠かもしれない。
一縷の希望を胸に、ユウキは砂山にそっと手をかけた。
声が震えた。やっと再会できたのに。まだ話したいことが山ほどあるのに――――。
「あら? キスが足りなかった?」
振り返ったリベルが、悪戯っぽくウインクする。艶やかな唇が妖艶に光った。
「そ、そんなんじゃないよ!」
慌てて否定するが、頬の熱さは隠せない。初キスの余韻が、まだ唇に残っている。
その時だった――――。
ズドォォン!
爆発音が世界を震撼させた。
「おわぁ!」
校舎が激しく揺れ、ユウキはよろめいた。一体何が起きた?
「リベル、これは……、へ?」
振り返ると——信じがたい光景が広がっていた。
リベルから、色が抜け落ちていく。
砂時計の砂が落ちるように、生気が失われていく。瑞々しい肌が灰色に、碧眼が濁っていくではないか。
突然、リベルが喉を押さえた。
ぐっ……ぐぐっ……。
苦悶の声。膝が折れる。
「リ、リベル……?」
恐怖に声が震えた。
彼女の体は見る見るうちに漆黒の人形と化し、夕陽を冷たく反射するだけの物体になっていく。
「リベルぅ!」
ユウキはとっさに駆け寄り、崩れ落ちる体を支えた。腕の中で、彼女が震えている。冷たく、硬く、生命を失いつつある。
「ど、どうしたの……?」
必死に問いかけるが、答えはない。
「く、苦し……」
かすれた声と共に、体に亀裂が走り始めた。
美しい顔が、彫像のようにひび割れていく。完璧だった肌が、砂のように崩れ始める。
「リ、リベル……?!」
何もできない。ただ抱きしめることしか――――。
「た、助け……」
最後の言葉は、風に消えた。
顔が砂となって崩れ、体が粒子となって零れ落ちていく。黒い砂鉄のような粒子が、ユウキの指の間から流れ落ちていく。
「いやぁ! リベルぅ!!」
必死に掬い上げようとするが、砂は容赦なく零れ続ける。つい先ほどまで温かかった体が、今や無機質な砂鉄の塊と化している。
「ダメだよぉ!」
叫んでも、祈っても、何も変わらない。
やがて、リベルだったものは、コンクリートの上に黒い砂山となってしまったのだ。
「な、なんで……? リベルぅ……」
呆然と立ち尽くす。
理解が追いつかない。受け入れられない。つい今しがたキスをした少女が、もう存在しない――――。
くぅぅぅ……。
深い溜息と共に顔を上げる。
街のあちこちから黒煙が立ち上っている。信号は消え、クラクションが鳴り響く。混乱が街を包んでいた。
「停電か!?」
スマホを確認する。圏外。ネットも繋がらない。
「くっ、全部落とされたのか……」
視線が黒い粒子の山に戻る。
――ネットと電力の喪失。
リベルはそれらに依存していたのか。だとすれば、これは死ではない。冬眠かもしれない。
一縷の希望を胸に、ユウキは砂山にそっと手をかけた。
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