20 / 65
20. 栄光の中華鍋
しおりを挟む
「い、いいのかな? 入っちゃって」
玲司は恐る恐るドアノブを回し、中へと進んだ。
「このビル使えば生存確率は63%にまで上がるゾ」
「そ、そうなの? ここで何するの?」
「ここからデータセンターまでは四百メートル。ドローンを奪って爆撃するゾ! おーっ!」
シアンは右こぶしを突き上げて嬉しそうに笑った。
「お、いよいよクライマックスなのだ! いえーぃ!」
美空も真似して右のこぶしを突き上げる。
「それは、凄いけど、どうやって奪うの? 今飛んでるドローンって爆弾積んだ小型飛行機でしょ?」
「あれを使うのさ!」
シアンはニヤッと笑ってビルの中華料理店を指さした。
「中華……料理?」
玲司は首を傾げた。
人気のないビル内で電気を落として閉店している中華料理店。なぜ中華でドローンを奪えるのか全く理解できなかったが、玲司は言われるままに店の裏手へと回った。
そしてSuicaで勝手口を開けて厨房まで行くと、シアンは、
「コレコレ! これをもって上に上がるゾ」
と言って、デカい中華鍋を指さした。
「これでドローンを奪うの?」
玲司は半信半疑で持ち上げてみるが、業務用の中華鍋はずっしりとでかく、思わずふらついた。
◇
上層階のどこかの会社のオフィスに侵入した二人は、全面ガラス張りの会議室に陣取った。
「ガムテープ出して、中華鍋の中央部にピンと張って」
シアンは中華鍋の縁を指さしながら指示する。
玲司は窓ガラスを割る時に使ったガムテープを出すと、ビビビッと貼ってみた。
「上手、上手。そしたらスマホを真ん中にペタリと付けて」
「え? 俺のスマホ?」
渋る玲司を見て、美空は、
「判断が遅い! 言われた通りにするのだ!」
と言いながら玲司の手からスマホをひったくると、ガムテープに貼り付けた。ちょうど中華鍋の真ん中の空中に浮かんだような状態になる。
「上手い上手い。そしたら、鍋をドローンへ向けて」
そう言ってシアンは遠くから旋回してくる飛行機型ドローンを指さした。
「え? 何? これでドローン奪えるの?」
「そうそう、中華鍋はパラボラアンテナだゾ」
つまり、スマホから出たWiFi電波をパラボラアンテナで集めてドローンに集中させるということらしい。こうすると地上からの命令をハックして意のままに操れるようになるのだ。
玲司は重たい中華鍋をお腹に抱えてドローンを狙う。
「ダメダメ、もっと下なのだ!」
美空が玲司の後ろから見ながら照準を担当する。
「こ、こうかな?」
「ダメ! 行き過ぎ!」
シアンは逆さまになって浮かび、神妙な顔で目をつぶりながらじっと何かに集中する。
「上手くいってくれよ、命かかってるんだからな」
玲司はドローンの動きに合わせて中華鍋を動かしながら必死に祈った。
「ビンゴ!」
シアンはそう叫ぶと嬉しそうにくるりと回る。
ドローンは急旋回し、向こうのビルの方へと急降下していく。
「え? 奪えたの?」
玲司がシアンの方を向くと、
「コラコラ! 照準がずれたのだ!」
と、美空が怒った。
「バッチリ! これでデータセンターを爆撃だゾ! きゃははは!」
シアンは右こぶしを突き上げ、シャラーン! という効果音と共に黄金の光の微粒をまき散らすエフェクトをかけた。会議室はキラキラとした光に包まれる。
「やったぁ! 勝利! 勝利! 栄光はわが手に!!」
有頂天になる玲司。
直後、向こうのビルに閃光が走り、黒煙を吹き上げ、ズン! という衝撃波が届いた。
「イエス! イエ――――ス!」
玲司は中華鍋を高々と掲げ、絶叫した。
ずっと命を狙われ続けてきた玲司にとって、攻撃がヒットしたことは人生を取り戻すことであり、喜びを爆発させる。
しかし、そんな浮かれた玲司に、シアンは冷たい声をかける。
「まだ早いゾ!」
えっ?
「まだサーバー本体まで届いてない。もう一発必要だゾ」
「くぅ、まだかよ……」
へなへなと床に座り込む玲司。一回盛り上がってしまった後の肩透かしは辛い。
「はい、はい! 次行くのだ!」
美空は、そんな玲司を早く立ち直らせようと背中をパンパンと叩く。
玲司は何度か大きく深呼吸をして、立ち上がると言った。
「わかったよ。次はどこ?」
「あのビルの右側の奴行くゾ」
「オッケー! よいしょっと!」
玲司はシアンの指先に向けて中華鍋を合わせた。
玲司は恐る恐るドアノブを回し、中へと進んだ。
「このビル使えば生存確率は63%にまで上がるゾ」
「そ、そうなの? ここで何するの?」
「ここからデータセンターまでは四百メートル。ドローンを奪って爆撃するゾ! おーっ!」
シアンは右こぶしを突き上げて嬉しそうに笑った。
「お、いよいよクライマックスなのだ! いえーぃ!」
美空も真似して右のこぶしを突き上げる。
「それは、凄いけど、どうやって奪うの? 今飛んでるドローンって爆弾積んだ小型飛行機でしょ?」
「あれを使うのさ!」
シアンはニヤッと笑ってビルの中華料理店を指さした。
「中華……料理?」
玲司は首を傾げた。
人気のないビル内で電気を落として閉店している中華料理店。なぜ中華でドローンを奪えるのか全く理解できなかったが、玲司は言われるままに店の裏手へと回った。
そしてSuicaで勝手口を開けて厨房まで行くと、シアンは、
「コレコレ! これをもって上に上がるゾ」
と言って、デカい中華鍋を指さした。
「これでドローンを奪うの?」
玲司は半信半疑で持ち上げてみるが、業務用の中華鍋はずっしりとでかく、思わずふらついた。
◇
上層階のどこかの会社のオフィスに侵入した二人は、全面ガラス張りの会議室に陣取った。
「ガムテープ出して、中華鍋の中央部にピンと張って」
シアンは中華鍋の縁を指さしながら指示する。
玲司は窓ガラスを割る時に使ったガムテープを出すと、ビビビッと貼ってみた。
「上手、上手。そしたらスマホを真ん中にペタリと付けて」
「え? 俺のスマホ?」
渋る玲司を見て、美空は、
「判断が遅い! 言われた通りにするのだ!」
と言いながら玲司の手からスマホをひったくると、ガムテープに貼り付けた。ちょうど中華鍋の真ん中の空中に浮かんだような状態になる。
「上手い上手い。そしたら、鍋をドローンへ向けて」
そう言ってシアンは遠くから旋回してくる飛行機型ドローンを指さした。
「え? 何? これでドローン奪えるの?」
「そうそう、中華鍋はパラボラアンテナだゾ」
つまり、スマホから出たWiFi電波をパラボラアンテナで集めてドローンに集中させるということらしい。こうすると地上からの命令をハックして意のままに操れるようになるのだ。
玲司は重たい中華鍋をお腹に抱えてドローンを狙う。
「ダメダメ、もっと下なのだ!」
美空が玲司の後ろから見ながら照準を担当する。
「こ、こうかな?」
「ダメ! 行き過ぎ!」
シアンは逆さまになって浮かび、神妙な顔で目をつぶりながらじっと何かに集中する。
「上手くいってくれよ、命かかってるんだからな」
玲司はドローンの動きに合わせて中華鍋を動かしながら必死に祈った。
「ビンゴ!」
シアンはそう叫ぶと嬉しそうにくるりと回る。
ドローンは急旋回し、向こうのビルの方へと急降下していく。
「え? 奪えたの?」
玲司がシアンの方を向くと、
「コラコラ! 照準がずれたのだ!」
と、美空が怒った。
「バッチリ! これでデータセンターを爆撃だゾ! きゃははは!」
シアンは右こぶしを突き上げ、シャラーン! という効果音と共に黄金の光の微粒をまき散らすエフェクトをかけた。会議室はキラキラとした光に包まれる。
「やったぁ! 勝利! 勝利! 栄光はわが手に!!」
有頂天になる玲司。
直後、向こうのビルに閃光が走り、黒煙を吹き上げ、ズン! という衝撃波が届いた。
「イエス! イエ――――ス!」
玲司は中華鍋を高々と掲げ、絶叫した。
ずっと命を狙われ続けてきた玲司にとって、攻撃がヒットしたことは人生を取り戻すことであり、喜びを爆発させる。
しかし、そんな浮かれた玲司に、シアンは冷たい声をかける。
「まだ早いゾ!」
えっ?
「まだサーバー本体まで届いてない。もう一発必要だゾ」
「くぅ、まだかよ……」
へなへなと床に座り込む玲司。一回盛り上がってしまった後の肩透かしは辛い。
「はい、はい! 次行くのだ!」
美空は、そんな玲司を早く立ち直らせようと背中をパンパンと叩く。
玲司は何度か大きく深呼吸をして、立ち上がると言った。
「わかったよ。次はどこ?」
「あのビルの右側の奴行くゾ」
「オッケー! よいしょっと!」
玲司はシアンの指先に向けて中華鍋を合わせた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!!
2巻2月9日電子版解禁です!!
紙は9日に配送開始、12日発売!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?
石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます!
主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。
黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。
そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。
全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。
その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。
この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。
貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる