うちの美少女AIが世界征服するんだって、誰か止めてくれぇ

月城 友麻

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37. 絶品のモモ

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「なーんだ、事故なのね。そう言ってくれればよかったのだ」

 そう言いながらミリエルは、テーブルのBLTサンドをつまみ、パクっとかぶりついた。そして、

「んー、美味いのだ! シアンちゃん料理上手!」

 と、にこやかにシアンにサムアップする。

「きゃははは!」

 嬉しそうなシアン。

 しかし、玲司はほほに赤い跡を残したままブスッとしていた。

「ゴメンてば! ここに座るのだ」

 ミリエルはそう言ってコーヒーを入れ、玲司の椅子を引いた。

「叩く前に確認しようよ」

 仏頂面で玲司は席に着く。

「分かったのだ。はいこれ君の!」

 ミリエルは玲司の皿にBLTサンドを載せた。

 玲司はコーヒーをすすり、BLTサンドにかぶりつく。

 カリカリのベーコンが生み出す芳醇なうまみが口いっぱいに広がり、玲司は驚いた。こんなおいしいベーコンは食べたことがない。

 さらに、シャキシャキとしたレタスのさわやかな苦みが、フワフワのパンの甘味と相まって素敵なハーモニーを奏でている。

「おぉ、ホントだ! 美味いよ! このベーコンがまたいいね」

 玲司はすっかり上機嫌になってほめた。

「このベーコンはどこのベーコンなのだ?」

 ミリエルがかぶりつきながら聞くと、シアンは嬉しそうに、

「僕のモモだよ!」

 と、言って自分の太ももを指さした。

 ブフ――――! ゴホッ!

 二人は一斉に吐き出す。

「ちょっと! 何食わせるんだよ!」「そうなのだ! 人肉食は禁忌なのだ!」

 二人は怒ったが、シアンは、

「でも、僕の脚、美味しかったでしょ? きゃははは!」

 と、屈託のない笑顔で笑った。

 この世界はデータでできた世界なので、自分の脚はいくらでも複製できる。しかし、だからといって人間の肉は食べたくないものなのだ。

 二人は顔を見合わせ、首を振ると、渋い顔でBLTサンドを皿に戻した。


         ◇


 口直しにミリエルの出してくれたパンケーキを食べ、コーヒーをすすりながら玲司は窓の外を眺めた。

 そこには変わらず天の川が流れ、海王星が青く広がっている。

「太陽が出ないと朝って感じがしないよね」

 そう言うとミリエルは、

「何言ってるのだ。あれが太陽なのだ」

 そう言ってひときわ明るく輝く星を指さした。

 は?

 玲司は何を言われたのか分からず、窓の近くまで行って上を見上げる。

 確かにそこには地球上では見たことがないようなひときわ明るい星がある。

「えっ!? あれが太陽?」

 玲司は驚きを隠せなかった。

「太陽まで光の速度で四時間、太陽系最果ての星へようこそなのだ」

 ミリエルはニヤッと笑った。

「はぁぁぁ……」

 言われてみたらそうだった。海王星が青色で輝いているのは太陽が照らしているからなのだ。つまりずっと昼間だったらしい。

 玲司は夜空にまばゆく輝く星を見つめ、とんでもない所へ来てしまったと改めて感慨深く思った。

 灰色に薄汚れてしまった僕たちの地球は今、あの海王星の中で稼働を停止させられている。そして、八十億人の命運は自分の手に託すとミリエルは言っていた。ただの高校生が地球の未来をかけて異世界で悪い奴と戦う、そんな荒唐無稽こうとうむけいなストーリー、誰がどう考えても上手く行きそうにない。一体、運命の女神は自分に何を期待しているのだろうか?

 玲司はコーヒーをすすり、どう考えても無理ゲーな現実に首を振りながら、大きくため息をついた。


「それで君たちの出撃だけど……、どうする?」

 ミリエルはコーヒーをすすりながら言う。

 玲司は逃れられぬ運命にくちびるをキュッとみ、

「まず、計画から教えて」

 と言って、ミリエルを見た。

「あー、#3275、Everzaエベルツァって地球があるのだ。そこに送るから、元副管理人のゾルタンを捕まえてきて」

 ミリエルはそう言うと、小皿に積まれたチョコを一つ口に放り込んだ。そして、美味しそうに甘味を楽しむ。

「ゾルタン、ね。その人の情報とかは?」

「そういうのは全部現地のあたし、【ミゥ】から聞いて。……。おっといけないもうこんな時間なのだ。じゃあ、行ってらっしゃーい!」

 ミリエルはそういうと、満面に笑みを浮かべ、玲司とシアンを青白い光で包んでいった。

「えっ? もう? ちょっと! えっ!?」

 玲司はコーヒーカップを持ったままEverzaエベルツァへと飛ばされていった。
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