53 / 65
54. 背徳の美
しおりを挟む
一行はエントランスの方へと飛んだ。
目の前に現れるレンガ造りの巨大な魔王城のファサードは壮大で、あちらこちらに精巧な幻獣の彫り物が施されている。特に、ドラゴンやフェニックスをかたどった壮麗な彫刻が大きく左右に配され、来るものを睥睨させているのは見事だった。
うわぁ……。
玲司は思わず感嘆の声を上げる。
手入れの行き届いた、汚れ一つない天空の城はその壮麗な美しさを余すところなく誇り、宙に浮いている。それはまさに異世界ファンタジーそのものだった。
一行は、静かに玄関の巨大なドアのところに着地する。
一般に管理者系の建物の周辺は、セキュリティのためワープの利用ができないようになっている。だからドアを開けて入っていくしかない。
ミリエルは辺りを伺い、ドアノブをゆっくりと動かしてみる。
ガチャリ!
カギはかかっていないようだ。
三人は顔を見合わせ、最後の確認をする。ミリエルはミゥに紫色に光る特殊弾を渡し、いざというときは窓や壁を破壊して退路を作ることを命じた。玲司はドアごとにドアが閉まらないツールを仕込んで、閉じ込められないようにする担当となる。トラブったらすぐに逃げ出す、それがポイントだった。
ミリエルは真紅に光る球をいくつか自分の周りに浮かべると、ギギギーっときしむ音をたてながら、巨大な木製ドアを引き開けていく。
中は大理石をふんだんに使った壮麗なエントランスホールだった。優美な階段には赤じゅうたんが敷かれ、施された金の刺繡が、魔法で光るシャンデリアの明かりを反射してキラキラと輝いていた。
「お邪魔しまーす……」
小声でそう言いながらキョロキョロと見まわし、抜き足、差し足でミリエルは中まで進んだが、誰も居ないようだった。
ミゥは空中に間取り図を浮かべ、
「一番怪しいのは謁見の大広間なのだ」
と、左側の通路を指さす。
◇
しばらく赤じゅうたんの敷かれた豪奢な長い廊下を進み、突き当りの大きなドアまできた一行。
するとかすかに人の声がする。
ミリエルは二人と目を合わせると、うなずいてゆっくりドアを開いた。
明るく豪華絢爛な室内には、正面奥に段があり、玉座が据えてある。そしてそこに座る一人の男と、その隣には赤い髪の女性が見えた。
百目鬼とシアンだった。
「やあやあ皆さん、いらっしゃい」
百目鬼は上機嫌に叫んだ。
ミリエルは大きく息をつくと、つかつかと奥へと進み、答えた。
「呼びつけて一体何の用なのだ?」
「いやなに今後のことについて相談をしようかと思って」
「相談……、へっ!?」
ミリエルは辺りを見回し、脇に異様な六角形の氷柱が並んでいることに気が付き足を止めた。
肌色の何かが入った氷柱。
ミリエルはダッシュして表面の霜を手で払った。
「ジェンマ! あなた……」
ミリエルはそう叫んで他の氷柱も確認していく。それは今まで送り込まれた調査隊員の氷漬けだった。
ステンドグラスの窓から差し込む光が氷柱の裸体に赤や青の鮮やかな色を与え、妖艶な背徳の美を演出している。
その神々しいまでのおぞましさを放つ人柱に、玲司は顔面蒼白となって唇がこわばっていくのを感じた。
ミゥは百目鬼を指さし、真っ赤になって叫ぶ。
「なんてことするのだ! この人でなし!」
しかし百目鬼は、悪びれることなく返す。
「これはゾルタンのオッサンのやらかしたことで、私は関係ない」
「氷漬けの人を放っておく時点で人でなしなのだ!」
百目鬼は肩をすくめ、首を振ると、面倒くさそうに返す。
「無事相談が終われば、回収すればいい。死んでるわけじゃない」
「で、相談って何なのだ?」
ミリエルは怒りに燃える目で百目鬼をキッとにらんだ。
すると、隣に立っているシアンが答えた。
「ミリエル、降伏しよ」
以前、百目鬼にハックされた時のように、髪の毛も目の色も真っ赤になってしまったシアンはニコニコしながらいう。
「はぁ? 降伏?」
ミリエルがムッとした表情で返す。
玲司は叫んだ。
「おい、シアン、どうなってんだ? また百目鬼に乗っ取られたのか?」
「ご主人様、僕はね、合理的に考えたんだゾ。百目鬼たちと組むと地球一個くれるんだってそれで、正式な管理者にしてくれるって」
「何言ってんだ、今すぐ止めろ! 戻ってこい」
玲司はシアンに両手を広げて引きつった笑顔で命令する。
「いや、ご主人様こそおいで。どうせ人間は35.3%だゾ!」
そう言って嬉しそうに両手を広げた。
「ふざけんなぁ!! これは命令だ! 今すぐ戻ってこい!」
玲司は怒髪天を衝く勢いで絶叫した。
ふぅ、ふぅ、と玲司の荒い息が謁見室にこだまする。
目の前に現れるレンガ造りの巨大な魔王城のファサードは壮大で、あちらこちらに精巧な幻獣の彫り物が施されている。特に、ドラゴンやフェニックスをかたどった壮麗な彫刻が大きく左右に配され、来るものを睥睨させているのは見事だった。
うわぁ……。
玲司は思わず感嘆の声を上げる。
手入れの行き届いた、汚れ一つない天空の城はその壮麗な美しさを余すところなく誇り、宙に浮いている。それはまさに異世界ファンタジーそのものだった。
一行は、静かに玄関の巨大なドアのところに着地する。
一般に管理者系の建物の周辺は、セキュリティのためワープの利用ができないようになっている。だからドアを開けて入っていくしかない。
ミリエルは辺りを伺い、ドアノブをゆっくりと動かしてみる。
ガチャリ!
カギはかかっていないようだ。
三人は顔を見合わせ、最後の確認をする。ミリエルはミゥに紫色に光る特殊弾を渡し、いざというときは窓や壁を破壊して退路を作ることを命じた。玲司はドアごとにドアが閉まらないツールを仕込んで、閉じ込められないようにする担当となる。トラブったらすぐに逃げ出す、それがポイントだった。
ミリエルは真紅に光る球をいくつか自分の周りに浮かべると、ギギギーっときしむ音をたてながら、巨大な木製ドアを引き開けていく。
中は大理石をふんだんに使った壮麗なエントランスホールだった。優美な階段には赤じゅうたんが敷かれ、施された金の刺繡が、魔法で光るシャンデリアの明かりを反射してキラキラと輝いていた。
「お邪魔しまーす……」
小声でそう言いながらキョロキョロと見まわし、抜き足、差し足でミリエルは中まで進んだが、誰も居ないようだった。
ミゥは空中に間取り図を浮かべ、
「一番怪しいのは謁見の大広間なのだ」
と、左側の通路を指さす。
◇
しばらく赤じゅうたんの敷かれた豪奢な長い廊下を進み、突き当りの大きなドアまできた一行。
するとかすかに人の声がする。
ミリエルは二人と目を合わせると、うなずいてゆっくりドアを開いた。
明るく豪華絢爛な室内には、正面奥に段があり、玉座が据えてある。そしてそこに座る一人の男と、その隣には赤い髪の女性が見えた。
百目鬼とシアンだった。
「やあやあ皆さん、いらっしゃい」
百目鬼は上機嫌に叫んだ。
ミリエルは大きく息をつくと、つかつかと奥へと進み、答えた。
「呼びつけて一体何の用なのだ?」
「いやなに今後のことについて相談をしようかと思って」
「相談……、へっ!?」
ミリエルは辺りを見回し、脇に異様な六角形の氷柱が並んでいることに気が付き足を止めた。
肌色の何かが入った氷柱。
ミリエルはダッシュして表面の霜を手で払った。
「ジェンマ! あなた……」
ミリエルはそう叫んで他の氷柱も確認していく。それは今まで送り込まれた調査隊員の氷漬けだった。
ステンドグラスの窓から差し込む光が氷柱の裸体に赤や青の鮮やかな色を与え、妖艶な背徳の美を演出している。
その神々しいまでのおぞましさを放つ人柱に、玲司は顔面蒼白となって唇がこわばっていくのを感じた。
ミゥは百目鬼を指さし、真っ赤になって叫ぶ。
「なんてことするのだ! この人でなし!」
しかし百目鬼は、悪びれることなく返す。
「これはゾルタンのオッサンのやらかしたことで、私は関係ない」
「氷漬けの人を放っておく時点で人でなしなのだ!」
百目鬼は肩をすくめ、首を振ると、面倒くさそうに返す。
「無事相談が終われば、回収すればいい。死んでるわけじゃない」
「で、相談って何なのだ?」
ミリエルは怒りに燃える目で百目鬼をキッとにらんだ。
すると、隣に立っているシアンが答えた。
「ミリエル、降伏しよ」
以前、百目鬼にハックされた時のように、髪の毛も目の色も真っ赤になってしまったシアンはニコニコしながらいう。
「はぁ? 降伏?」
ミリエルがムッとした表情で返す。
玲司は叫んだ。
「おい、シアン、どうなってんだ? また百目鬼に乗っ取られたのか?」
「ご主人様、僕はね、合理的に考えたんだゾ。百目鬼たちと組むと地球一個くれるんだってそれで、正式な管理者にしてくれるって」
「何言ってんだ、今すぐ止めろ! 戻ってこい」
玲司はシアンに両手を広げて引きつった笑顔で命令する。
「いや、ご主人様こそおいで。どうせ人間は35.3%だゾ!」
そう言って嬉しそうに両手を広げた。
「ふざけんなぁ!! これは命令だ! 今すぐ戻ってこい!」
玲司は怒髪天を衝く勢いで絶叫した。
ふぅ、ふぅ、と玲司の荒い息が謁見室にこだまする。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?
石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます!
主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。
黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。
そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。
全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。
その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。
この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。
貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる