【悲報】魔王♂だが、財政破綻で美少女Vtuberになりました

月城 友麻

文字の大きさ
34 / 69

34. 賞金百万ゴールド

しおりを挟む
「あんたを倒したら賞金百万ゴールド!」

 聖女が爆弾発言を投下した。

「ひゃ、百万!?」

 マオの声が裏返る。

「そ、そんな金はどこから……?」

「そんなの負けなきゃいいのよ。だって、あなた負けないんでしょ? まぁ、負けたら契約金から棒引きだけどね。くっくっく」

 聖女は挑発的な笑みを浮かべる。その視線は、まるで獲物を値踏みする商人のようだった。

「負けはしないが……」

 マオは言葉を濁した。

「みんな押し寄せるわよぉ……。大陸中から腕自慢が集まって、歴史的な配信になるわ。ふふっ」

(は? 何百人もの冒険者を相手にするなど、面倒極まりない!)

 マオは必死に断る理由を探す。

「でも、魔王が……何というかな?」

 聖女の次の言葉が、マオの心臓を直撃した。

「利用料払うって言えば、二つ返事でうなずくでしょ。あいつ、金欠だから。ふふふっ」

「き、金欠……」

 マオの拳が、ぎゅっと握り締められた。爪が掌に食い込む。

 金欠。確かにその通りだ。だが、それを敵国の聖女に嘲笑われるとは――――。

(このクソ女……!)

 怒りで顔が熱くなる。だが、それを表に出すわけにはいかない。必死に平静を装うが、震える拳は隠しきれなかった。

「実際、魔王軍なんて今や張子はりこの虎よ」

 聖女は容赦なく追い打ちをかける。

「兵士への給料も払えない、城は崩れかけ、食事は出涸でがらしスープ。あんな情けない状態で、よく魔王なんて名乗ってられるわよね」

 グサッ、グサッ、グサッと言葉の刃が、マオに突き刺さる。全て事実だけに、反論のしようがない。

「まぁ、だからこそ利用料を払えば飛びつくでしょうけど」

 聖女の唇が、蛇のような笑みを描く。

「『偉大なる魔王様、お金に困ってるんですってね?』って言えば……ふふふっ、きっと涙目になって縋ってくるわよ」

(くっ……。言わせておけば……)

 マオはわなわなと震える。

 しかし、聖女はとどめの一撃を放った――――。

「一万ゴールドも払えば……あの貧乏魔王、土下座して靴でも舐めるんじゃない? おほほほほ!」

 高慢な笑い声が、部屋中に響き渡る。

「ど、土下座して……靴を……」

 プツン。

 マオの中で、何かが音を立てて切れた。

 ヴゥゥゥン――!

 円卓の下で、マオの右拳に青い稲妻が走る。天穿アジュールストライク――魔王の必殺技の一つ。全てを貫く、絶対破壊の拳。その光が、殺意と共に膨れ上がっていく。

(陛下! 何やってるんですか!?)

 リリィが真っ青になって念話を飛ばす。

(止めるなリリス!)

 マオの念話は、もはや咆哮だった。

(このクソ女、一秒で血霧にしてくれるわ!!)

(ストップ! ストーーップ!)

 リリィが必死にマオの銀髪を引っ張る。

(聖女を倒しても、金は入ってこないんですよ!?)

(金の問題ではない!!)

 青い光が、さらに激しく脈動する。

(この五百年間、余を侮辱した者は全員血祭りに上げてきた! 例外など一度もない! 土下座だと!? 靴を舐めるだと!? 殺す! 今すぐ殺す!)

(分かります! お気持ちは痛いほど分かります!)

 リリィが必死に説得を続ける。

(でも陛下、血祭りの上げ方を変えましょう!)

(む?)

 マオの殺気が、わずかに和らぐ。

(どういう……ことだ?)

(ここは一旦、金を受け取りましょう。そして魔王軍を完全復活させた後に……)

 リリィの瞳に、悪魔的な光が宿る。

(この街ごと、教国ごと、聖女の大切なもの全てを奪い尽くして、最後に土下座させてから滅ぼしましょう!)

(んむむ……)

 マオの拳から、少しずつ光が薄れていく。

(今、聖女を倒したら即戦争です。飢えた魔王軍では勝てません。陛下が土下座することになりますよ?)

(くぅぅぅ……!)

 歯ぎしりの音が、ギリギリと響く。

(分かった……分かったぞリリス……。ここはお前に免じて耐えてやろう! くぅぅぅ……この、クソ聖女め……)

 マオは震える拳を、ゆっくりと開いた。青い光が、名残惜しそうに消えていく。

(さすが陛下♡)

 リリィは引っ張っていた銀髪を元に戻し、優しくなでてなじませる。

「……あなたたち、何やってるの?」

 不審に思った聖女が、突然円卓の下を覗き込んできた。金色の髪が、テーブルの端から垂れ下がる。

「い、いや! 何でもない! ぬははは」

 マオは何食わぬ顔で聖女を見上げた。

「……?」

 聖女が怪訝そうに小首を傾げる。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...