【金こそパワー】ITスキルで異世界にベンチャー起業して、金貨の力で魔王を撃破!

月城 友麻

文字の大きさ
18 / 73

18. 獲物を見定める視線

しおりを挟む
 煌びやかな謁見室で無事爵位を下賜されたタケルはその晩、記念パーティの席上に居た――――。

 ジェラルドのはからいで高級レストランを貸し切って、ジェラルド陣営の貴族たちも続々とやってくる。

「やぁ、グレイピース男爵。お話はかねがね。私は子爵のヴァルデマー。これからよろしく頼むよ!」

 グレーの帽子をかぶったパリッとした紳士が握手を求めに来た。隣にはピンクのドレスを着た可憐な少女も並んでいる。

「何もわからない新参者です。どうぞご指導のほどよろしくお願いします」

 サラリーマン時代に鍛えた営業スマイルで胸に手を当て、握手に応えるタケル。

「うん、うん、何でも聞いてくれたまえ。……、で、これがうちの娘……。ほら、挨拶しないか、マデリーン」

「は、はい……。あのぉ……」

 マデリーンは十三歳くらいだろうか? 端正な顔に上品な雰囲気、さすが貴族令嬢である。ただ、ひどく緊張していて言葉が出てこない。男と話しなれていないのかもしれない。

「そんな緊張されなくて結構ですよ。今日は特別に美味しい食事も用意していますからゆっくり楽しんでいってください」

 タケルはニッコリとほほ笑んだ。タケルはこの世界ではまだ十八歳だが、精神年齢はアラフォーである。基本的な社交の会話は無事にこなせていた。

 マデリーンは恥ずかしそうにこくんとうなずくと、子爵の腕にギュッと抱き着く。

「おいおい……。箱入り娘なもので、申し訳ない」

「いえいえ、素敵なお嬢様ではないですか。将来が楽しみですね」

「おぉ、そうかね? それじゃ、今度改めて食事でも……どうかな?」

「はい! 喜んで!」

 タケルは満面の笑みを浮かべ、ノータイムで答える。『こういう時は何でもこう言っておけ』とマーカスに言われているのだ。

 子爵は嬉しそうに笑い、ボソッとマデリーンに何かをささやいた。

 マデリーンは顔をボッと赤くさせうつむく。

「失礼、子爵のベックフォードです。ヴァルデマー殿、私も挨拶させてもらっていいかな?」

 横からグレーのハンチング帽をかぶった紳士が声をかけてきた。

「おぉ、これは失礼。ではグレイピース男爵殿、娘ともどもよろしく頼むよ!」

 タケルはヴァルデマーと再度握手をし、次にベックフォード子爵と挨拶をする。隣にはまたも可憐な少女が水色のドレスに身を包んで立っている。

 見回すと周りには父親に連れられた少女たちがたくさん待ち構えており、じっと自分の方を見つめていた。その瞳たちにはまるで野生動物が獲物を見定めるかのような鋭さが光っている。

 え……?

 タケルはその異様な熱気に気おされた。

 第二王子に気に入られた新進気鋭のITベンチャー創業者の男爵。それは娘を嫁がせる先としては実に好物件なのだろう。何しろ第二王子が王位についたらそのお気に入り実業家の権勢は計り知れない。陣営の関係者で娘を持つ者はみんな連れてきているのではないか、というくらい会場には着飾った少女が目立っていた。

 その時だった、執事の声が室内に響く――――。

「ジェラルド殿下のおなーりー!」

 タケルたちは慌てて居住まいを正し、胸に手を当てて入口の方を向いた。

 金髪をファサッと揺らしながら、颯爽とジェラルドが入場してくる。

 パチパチと拍手が上がり、ジェラルドは手を挙げて応えた。

「えーと、グレイピース男爵はいるか? あ、いたいた」

 タケルは慌ててジェラルドの元へと走る。

「殿下、お越しいただきありがとうございます」

「貴族社会へようこそ! 式典ではなかなかどうして堂々たる立ち居振る舞い、さすが僕の見込んだ男だ」

 ジェラルドはニコニコしながらタケルの肩をポンポンと叩き、執事に差し出されるシャンパンのグラスを持った。

「えー、お集まりの諸君! 今日、正式に我が陣営に頼もしい仲間がジョインした。この男は若いのになかなかやり手でな、『金貨三千万枚稼ぐから仲間にしてください!』って土下座してきやがったんだ」

 へっ!?

 タケルは驚き、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてジェラルドを見た。

 ワハハハ!

 笑いに包まれる会場。

「でもまぁ、彼の技術力と我々のネットワークがあれば三千万枚など十分に射程距離だろう。ぜひ、彼を盛り立ててやってくれ! それでは乾杯!」

 ジェラルドはタケルの背中をパンパンと叩き、グラスを高々と掲げた。

「カンパーイ!」「カンパーイ!」「カンパーイ!」

 楽団が奏でるクラシックなメロディが室内に響き、それに大勢の拍手が続いた。

 転生した孤児が冒険者パーティすら追放され、食べるものにすら困っていたのはついこの間のこと。それが今や貴族たちに囲まれて祝福されている。どうしてこうなった? と、思わないではないが、勢いはあるうちに乗るしかない。金貨三千万枚、国家予算をはるかに超える大金で、この世界を大きく変えてやるのだとタケルはグッとこぶしを握った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...