【金こそパワー】ITスキルで異世界にベンチャー起業して、金貨の力で魔王を撃破!

月城 友麻

文字の大きさ
45 / 73

45. 人類の逆襲

しおりを挟む
「本当に……ダスクブリンクで良かったの?」

 引っ越しの準備を手伝いながら、クレアは眉をひそめ、心配そうにタケルに聞く。

「ははは、クレアまでそんなこと聞くのか。あそこはいろいろ都合がいいんだよ」

「いや、でも、領土の多くがすでに魔物の侵攻で廃村になってしまってるのよ?」

「失われたものは取り返せばいい。僕らにはそのための金も力もある。それにダスクブリンクなら諸外国とも近いから世界の貿易を考えるなら好適なんだよ」

 タケルは自信たっぷりに言うが、ワイバーンとの一戦で魔物の恐ろしさを肌身に感じていたクレアは口をとがらせ、うつむく。

「タケルさんは本気で魔王軍と戦うつもりなのね……」

「今、世界で一番強いのはわが社だからね。四千人の元王国兵、最新魔導兵器、膨大な量の魔石にお金。うちがやらなきゃいけない仕事なんだよ。この大陸から魔物の脅威を取り除かないと」

「でも……、魔人たちの標的にされるわ」

 アントニオがやられたように、魔人は神出鬼没でいやらしい手を使ってくる。タケルも同じようにやられてしまったらと思うと、クレアには恐ろしくてたまらなかったのだ。

「いや、もう標的になってるって。これはもう避けられない戦いなんだ。クレアも手伝ってくれないか?」

 タケルはニコッとクレアに笑いかけた。

「も、もちろん手伝うわよ! でも……、安全第一でお願いね」

「もちろんだよ! 一人も死者を出すことなく完勝する。お金とITのパワーでね!」

 タケルはニッコリと笑ったが、クレアは胸騒ぎが止まらず、胸を手で押さえると不安そうにため息をこぼした。


       ◇


 ダスクブリンクまでネヴィアに空間を繋げてもらったタケルは、ベキベキっと両手で空間を裂いて首を出す。

 そこには、さんさんと降り注ぐ陽の光に庭木が輝き、古びた洋館がそびえていた。

「おぉ、ここが……。ヨイショっと」

 タケルは地面に降り立ち、洋館を見上げる。石造り三階建てのしっかりとした建物は随所に彫刻が施され、豪奢なつくりではあったが、あちこち欠けたままで、白かったであろう柱も薄汚れ、往年の輝きは失われていた。

「手入れすれば見栄えはするかも……?」

「昔は栄えとった街の領館じゃからな。我もよく遊びに来とったが……、今じゃ見る影もない」

 ネヴィアは少し寂しそうに肩をすくめる。

 魔物たちの侵攻を受け、この街より暗黒の森側の領土は全て打ち捨てられ、この街が最終防衛ラインとなってしまっていたのだ。当然市民たちはどんどん逃げ出し、人口も激減して繁華街もシャッター通りと化してしまっている。

 白髪の男性がタケルを見つけ飛び出してきた。

「おぉ、これは、グレイピース伯爵! お待ちしておりました」

 それは事務方のトップの長官だった。長官はうやうやしく胸に手を当て頭を下げる。事務方たち五、六人も後に続いて頭を下げる。

 タケルは長官の手を取り、握手をしながらニッコリとほほ笑んだ。

「わざわざ出迎えご苦労。早速だが状況を説明してくれ」

「は、はい……。お聞きおよびのことかと思いますが、当地は現在魔王軍側の攻勢を受けておりまして……。どうやって防衛を実現していくかが……」

「防衛なんてしないよ」

 タケルはニヤッと笑った。

「ぼ、防衛しないって、そ、それは……?」

 長官は真っ青になってうろたえた。

「攻撃は最大の防御。奴らを打ち滅ぼすんだ」

「は……?」

 長官は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして固まった。強大な魔王軍を押し返せるような経済力などこの街にはもう残っていないのだ。

「心配しなくていい。我が社の軍事力は世界一。魔物など全て焼き払ってやる!」

 タケルはニコニコしながら不安げな長官の肩をパンパンと叩く。

「は、はぁ……」

 タケルのITビジネスのことは聞いていたが、軍事など無関係だと思っていた長官は、釈然としない様子で小首を傾げた。


        ◇


「ヨシ! ここにしよう!」

 打ち捨てられた元麦畑の小高い丘陵へ登ったタケルは、雑草の茂る草原を見渡し、大きく手を広げた。

「こんな所に何を作るんじゃ?」

 ネヴィアは不思議そうに辺りを見回したが、雑草が広がるばかりで首をひねる。

「基地を作るんだよ。ついでにOrangeの本社もね」

「こんな所にか?」

「そう。ここには本社ビル、あそこには兵舎。あっちには倉庫。そして、道をこうググッと引いて、このまま真っ直ぐ王都まで。それでここから南の国々や東の国々への道も引く。ここは貿易の要衝となるのさ!」

 タケルの瞳には、揺るぎない意志と未来への渇望が輝いていた。魔王軍が目前のこの土地こそが、まさに人類の逆襲が始まる希望の地になるのだ。

 吹き抜ける風が美しいウェーブを作り出すのを眺めながら、タケルは決意を込めて拳を握った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...