【金こそパワー】ITスキルで異世界にベンチャー起業して、金貨の力で魔王を撃破!

月城 友麻

文字の大きさ
47 / 73

47. 夢の最前線

しおりを挟む
 はぁっ!?

 翌朝、画面を埋め尽くしていたゴーレムからのワーニングメッセージに、タケルはつい大声を出してしまった。なんとゴーレムが半数に減っていたのだ。

 慌てて壊れたゴーレムのカメラの録画映像をチェックすると、そこにはたくさんの魔物との死闘が映っていた。剣を持った小鬼ゴブリンに槍を振り回すリザードマン、そして巨大な赤鬼が丸太のような棍棒をゴーレムに振り下ろしている。

 ゴーレムは火炎放射器で対抗し、次々と魔物を焼き殺していたが、数で押され、半数を失う結果となった。

 ゴーレムは魔石を使うだけでいつでも呼び出せる召喚獣だ。魔石鉱山を持つタケルからしたら損失と言えるほどのものではない。しかし、自らの生命さえも顧みない魔物たちの猛攻は、まさに理性を失った暴動。それはタケルに肌を這うような恐怖を引き起こし、心の奥に深い震えを与えた。

 タケルは熱々のコーヒーを口に運び、その苦味で不安を払おうとする。しかし、心の奥底に潜む、理屈ではない恐れ――これからの対魔王戦に潜む予測不能なリスクは、彼の脳裏からいつまでも離れなかった。


         ◇


 タケルは基地の周りに城壁を築くことを優先しようと決め、近くに魔物がいないことを確認した上で大量の石のプレートを現地に持ち込んだ。

「タケルさん、こんな石の板でどうするんですか?」

 クレアが不思議そうに尋ねる。

「ふふっ、見ててごらん」

 タケルは小川の流れなどを考慮し、なるべく稜線を通るように城壁建設位置を決め、石のプレートを並べていった。穏やかな起伏の続く焼け野原に白い石のラインが描かれていく。

「なんだか綺麗ですね……」

 甲斐甲斐しくタケルを手伝っていたクレアは顔を上げ、額の汗を拭きながら言った。

「とりあえずこの辺りで一度テストしよう」

 タケルは青いウィンドウを開くと石のプレートに一気にコードを書き込んでいった。

 ヴゥンという音が響き、プレートに次々と黄色い魔法陣が浮かび上がっていく。タケルは全てのプレートに魔法陣が起動しているのを確認すると一斉にコードを走らせた。

 ゴゴゴゴゴ……。

 地響きを放ちながらプレートから白い岩がモリモリと育ち始める。それはまるで地面から隠れていた壁がせり上がってくるように、あっという間に立派な城壁が出来上がっていく。

「うわぁ! すごーーい!」

 その土魔法を使った鮮やかな建設方法にクレアは感激し、碧い眼をキラキラと輝かせた。

「割と上手くいったな」

 タケルは高さ十五メートルはあろうかという純白の城壁をペシペシと叩くと、その重厚な質感に満足し、嬉しそうに笑った。

「こんなに簡単に出来るんですねっ!」

「簡単だけど、このプレートには魔石が練り込んであるから、普通はこんな贅沢なこと出来ないんだよ」

「えっ!? 魔石入りなんですか!?」

 クレアは碧眼をキラキラと煌めかせながらタケルを見上げる。

「そうなんだよ。鉱山持ってるうちでしかできないぞ」

「ふふっ、鉱山見つけられて良かったですね」

 まぶしい笑顔を見せるクレア。

「これもクレアのおかげだよ」

「そろそろご褒美くれても良いんですよ?」

 クレアはいたずらっ子の笑みを浮かべた。

「あ、ご、ごめん。落ち着いたらゆっくり考えるよ」

「いいですよ? 急いでないから」

 クレアはちょっとつまらなそうに口をとがらせ、プイっと向こうを向いた。

 この後はゴーレムにプレートの並べ方を教えこみ、彼らに一枚ずつ並べていってもらうようにした。

 こうして全長五キロに及ぶ壮大な城壁が、かつてない速さで地平線にその輪郭を描き出す。

 やがて、焼けるような夕焼けが大地を赤く照らし出す中、二人は遥か彼方にぼんやりと見える城壁を眺めていた。

 クレアはそっとタケルの手を取る。

「いよいよ始まるのね……」

「そうだね、ここが僕らの、人類の夢の最前線だよ」

「うまく……、行くかしら?」

 クレアは不安そうな顔でタケルを見上げながら、キュッとタケルの手を握った。

「上手くいくに決まってるさ!」

 赤く輝く城壁を眺めながらタケルはグッとこぶしを握る。アントニオを倒した以上、魔王軍のターゲットはもう自分なのだ。やらなければやられる。もはやさいは振られたのだ。

 二人は徐々に色合いを群青色へと移りゆく景色を眺めながら、決意を新たにしていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...